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THE補助金マニュアル 第6章 ~補助金申請の成功事例と失敗事例~

 私はこれまで、中小企業診断士として、多くの企業の補助金申請をサポートしてきました。その経験から、補助金に関する正しい知識を持つことが、企業の成長にとってどれほど重要かを実感しています。

 しかし、補助金の仕組みや申請方法は複雑で、悪質なコンサルタントに高額な費用を請求されたり、不適切な助言を受けるリスクもあります。そこで、こうしたトラブルを避け、適切な補助金活用を自分の力で行えるように、このマニュアルを作成しました。

 全8章にわたる本マニュアルでは、補助金の基本から応用までを網羅し、正しい知識と実践的なノウハウを提供します。第6章では、「補助金申請の成功事例と失敗事例」というリアルな体験談を解説しますので、ぜひご覧ください。

全8章文の目次です。
*好きな章のリンクを踏めばその章に飛びます
1. 補助金とは?
- 1.1 補助金と助成金の違い
- 1.2 補助金のメリットとデメリット
- 1.3 主な補助金の種類(事業再構築補助金、ものづくり補助金など)
- 1.4 誰が補助金を利用できるのか?
2. 補助金申請前の準備
- 2.1 自社の課題・ニーズを明確にする
- 2.2 補助金に必要な条件を確認
- 2.3 事業計画書作成の準備
- 2.4 申請スケジュールの確認
3. 補助金申請に必要な書類
- 3.1 事業計画書の書き方
- 3.2 予算計画書・資金繰り表の作成
- 3.3 各種証明書・添付書類
- 3.4 よくある不備や注意点
4. 補助金申請のプロセス
- 4.1 補助金公募情報の収集
- 4.2 申請書の提出方法(電子申請の方法、郵送手続きなど)
- 4.3 審査の流れと評価基準
- 4.4 結果通知後の対応
5. 採択後のフォローアップ
- 5.1 補助金の実行・実績報告
- 5.2 補助金の支払いスケジュール
- 5.3 中間報告・最終報告書の作成
- 5.4 監査・事後チェックに備える
6. 補助金申請の成功事例と失敗事例
- 6.1 成功事例の紹介
- 6.2 失敗事例から学ぶべきこと
- 6.3 よくある質問(FAQ)
7. 補助金申請のプロに依頼する場合のポイント
- 7.1 補助金コンサルタントの選び方
- 7.2 依頼費用の相場とメリット
- 7.3 自社で申請する場合との比較
8. 今後の補助金申請に備えるために
- 8.1 定期的な情報収集と公募情報の把握
- 8.2 自社の経営課題に合わせた補助金活用
- 8.3 チーム体制の整備


6. 補助金申請の成功事例と失敗事例


6.1 成功事例の紹介


 補助金申請の成功事例を学ぶことで、どのような点が重要で、どのように準備すれば採択されやすいかが理解できます。成功した事業者は、事前の準備や計画がしっかりとしており、補助金の目的に沿った効果的な事業計画を立てています。
 ここでは、具体的な成功事例を紹介し、成功に至ったポイントについて解説します。

 成功事例1: 事業再構築補助金を活用した新規事業開拓
【事業概要】  
 中小製造業のA社は、主力製品である従来型の機械部品の需要が減少していることに課題を感じていました。市場環境の変化に対応するため、A社は新たな技術を活用した高付加価値の製品を開発し、新規市場へ進出することを決意。しかし、設備投資に多額の資金が必要であったため、事業再構築補助金に応募しました。

【成功のポイント】  
1. 具体的で実現可能な事業計画
 A社は、単なる新製品開発に留まらず、具体的なターゲット市場の調査と分析を行い、どのように新規市場に進出するかを詳細に計画しました。さらに、どのような機械や技術が必要で、その設備投資が将来の売上や利益にどのように結びつくかを数字で明示しました。これにより、補助金の審査員に対して、事業の実現可能性を高く評価されました。

2. 補助金の趣旨に沿った取り組み
 事業再構築補助金は、新規事業への挑戦や業態転換を支援することが目的です。A社はこの趣旨に完全に合致する形で、既存事業からの脱却を目指し、新規事業にフォーカスした事業計画を提出しました。特に、今後の成長戦略において新事業が企業にとってどれほど重要かを明確にし、補助金がその成長のために不可欠であることを強調しました。

3. 適切な資金計画とリスク対策
 A社は、補助金を含めた資金調達計画をしっかりと立て、自己資金や融資を組み合わせて事業を進めることができる体制を整えていました。また、リスクマネジメントの観点から、万が一売上が計画通りにいかなかった場合の対応策や、予想される課題に対する対策も事前に準備していました。これにより、事業の安定性と信頼性が審査で評価されました。

【結果】
A社は事業再構築補助金を受けて、必要な設備を導入し、計画通り新製品の開発を開始しました。これにより、新規市場への進出が成功し、売上も大幅に増加しました。補助金の活用により、新規事業のリスクを軽減し、企業の成長戦略を実現することができました。

成功事例2: 小規模事業者持続化補助金を活用した店舗のデジタル化
【事業概要】 
 小規模な飲食店を経営するB社は、コロナ禍により売上が大幅に減少していました。特に、店内飲食が難しくなったことで売上減少が顕著でしたが、オンライン注文やテイクアウトに対応するシステムを導入することで、売上回復を目指しました。このために、小規模事業者持続化補助金を活用し、デジタル化への投資を行うことを決定しました。

【成功のポイント】  
1. 事業の課題と解決策の明確化
 B社は、まずコロナ禍による売上減少という課題を明確にし、それに対する具体的な解決策としてオンライン注文システムの導入とテイクアウト強化を計画しました。事業の課題とその解決策をしっかりと整理し、それがどのように売上回復に貢献するかを具体的に示しました。
 これにより、審査員に対して事業の必要性と効果を強くアピールすることができました。

2. デジタル化の具体的なプランと成果の見込み
 B社は、単にオンラインシステムを導入するだけではなく、システムを活用して新たな顧客層を獲得し、売上を増やすための具体的なプランを提示しました。例えば、SNSマーケティングと連携したプロモーション活動や、リピーターを増やすための顧客管理システムも併せて導入することで、デジタル化による効果を最大限に引き出すことができました。

3. 地域貢献と社会的意義の強調  
 B社は、地域密着型の店舗として地域住民に愛されてきた背景があり、その継続的な運営が地域経済にも貢献することを強調しました。
 補助金の趣旨である地域経済の活性化にも合致しており、社会的意義がある取り組みとして評価されました。

【結果】
補助金を活用してシステムを導入したB社は、オンライン注文の増加とテイクアウト需要の拡大により、売上を回復させることができました。デジタル化の取り組みが成功し、今後の事業拡大に向けた基盤も整備できたことにより、事業の持続可能性が大きく向上しました。


 成功事例に共通する要素は、**具体的で実現可能な事業計画の策定**、**補助金の目的に合致した取り組み**、そして**明確な成果と社会的意義の提示**です。これらのポイントをしっかりと押さえた上で、事業を効果的に進めるための資金計画とリスク管理を整えることが、補助金申請の成功に繋がる鍵となります。


6.2 失敗事例から学ぶべきこと
 補助金申請には成功と失敗がありますが、失敗事例を学ぶことで、どのような点に注意し、改善すればよいかが明確になります。補助金申請での失敗は、計画の不備や書類作成のミス、準備不足など、さまざまな要因が影響します。ここでは、失敗事例を紹介し、その原因や改善すべきポイントについて解説します。


失敗事例1: 事業計画の曖昧さによる不採択
【事業概要】 
 中小企業C社は、従来の事業を拡大するための設備投資を行う計画を立て、ものづくり補助金に応募しました。しかし、結果は不採択。C社は、補助金の活用によって売上増加を見込んでいましたが、申請は成功しませんでした。


【失敗の原因】 
1. 事業計画が具体性に欠けていた
 C社の事業計画書は、設備投資に関する内容が漠然としており、どのように新しい設備が企業の成長に貢献するのかが具体的に示されていませんでした。新設備による具体的な成果や、導入後にどのような新しい製品やサービスを提供できるのか、競合との差別化が不明確だったことが、審査において大きなマイナス要素となりました。

2. 補助金の目的に沿わない計画
 ものづくり補助金の目的は、革新的な技術開発や製品の改良を支援することですが、C社の計画は既存の設備の単なる拡大に留まっていました。補助金の趣旨に合った「新規性」や「革新性」が感じられなかったため、審査員に強くアピールできませんでした。

【学ぶべきポイント】
- 具体的な計画の重要性: 事業計画は、具体的でかつ実現可能な内容でなければなりません。新たな設備導入や投資がどのように企業の成長や競争力向上に結びつくのか、定量的な成果や数値目標を明確に示すことが大切です。
- 補助金の目的に合致する提案: 申請する補助金の趣旨や目的を十分に理解し、それに合った事業計画を立てる必要があります。単なる事業拡大ではなく、補助金の目的に沿った新規性や革新性を強調することが重要です。

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