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THE補助金マニュアル 第5章 ~採択後のフォローアップ~

私はこれまで、中小企業診断士として、多くの企業の補助金申請をサポートしてきました。その経験から、補助金に関する正しい知識を持つことが、企業の成長にとってどれほど重要かを実感しています。

 しかし、補助金の仕組みや申請方法は複雑で、悪質なコンサルタントに高額な費用を請求されたり、不適切な助言を受けるリスクもあります。そこで、こうしたトラブルを避け、適切な補助金活用を自分の力で行えるように、このマニュアルを作成しました。

 全8章にわたる本マニュアルでは、補助金の基本から応用までを網羅し、正しい知識と実践的なノウハウを提供します。第5章では、まず「採択後のフォローアップ」という補助金をもらった後の普段出回らない話を解説しますので、ぜひご覧ください。

全8章文の目次です。
*好きな章のリンクを踏めばその章に飛びます
1. 補助金とは?
- 1.1 補助金と助成金の違い
- 1.2 補助金のメリットとデメリット
- 1.3 主な補助金の種類(事業再構築補助金、ものづくり補助金など)
- 1.4 誰が補助金を利用できるのか?
2. 補助金申請前の準備
- 2.1 自社の課題・ニーズを明確にする
- 2.2 補助金に必要な条件を確認
- 2.3 事業計画書作成の準備
- 2.4 申請スケジュールの確認
3. 補助金申請に必要な書類
- 3.1 事業計画書の書き方
- 3.2 予算計画書・資金繰り表の作成
- 3.3 各種証明書・添付書類
- 3.4 よくある不備や注意点
4. 補助金申請のプロセス
- 4.1 補助金公募情報の収集
- 4.2 申請書の提出方法(電子申請の方法、郵送手続きなど)
- 4.3 審査の流れと評価基準
- 4.4 結果通知後の対応
5. 採択後のフォローアップ
- 5.1 補助金の実行・実績報告
- 5.2 補助金の支払いスケジュール
- 5.3 中間報告・最終報告書の作成
- 5.4 監査・事後チェックに備える
6. 補助金申請の成功事例と失敗事例
- 6.1 成功事例の紹介
- 6.2 失敗事例から学ぶべきこと
- 6.3 よくある質問(FAQ)
7. 補助金申請のプロに依頼する場合のポイント
- 7.1 補助金コンサルタントの選び方
- 7.2 依頼費用の相場とメリット
- 7.3 自社で申請する場合との比較
8. 今後の補助金申請に備えるために
- 8.1 定期的な情報収集と公募情報の把握
- 8.2 自社の経営課題に合わせた補助金活用
- 8.3 チーム体制の整備


5. 採択後のフォローアップ


5.1 補助金の実行・実績報告


 補助金が採択された後、次の重要なステップは、補助金を使って事業を実行し、その結果を実績報告することです。補助金の実行は、申請時に提出した事業計画に沿って進める必要があり、適切な進捗管理や経費の記録が求められます。
 また、事業が完了した後には、補助金が適正に使われたことを示すための実績報告を行う必要があります。この段階を正確かつスムーズに進めることで、補助金の最終的な受領が確実なものになります。
 ここでは、補助金実行時の注意点と実績報告のポイントについて解説します。


1. 補助金実行時の注意点

  • 事業計画に基づいた実施
     補助金を受けた事業は、申請時に提出した事業計画に基づいて実施することが基本です。計画と異なる内容で事業を進めた場合、補助金の支給が減額されたり、最悪の場合返還を求められることがあります。
     したがって、事業開始前に再度計画を確認し、事業の目的、スケジュール、予算に沿って進行するよう管理体制を整えることが大切です。また、万が一計画変更が必要になった場合は、事前に補助金の交付機関に相談し、変更手続きを適切に行いましょう。

  • 経費の適正な管理
     補助金は、決められた用途にのみ使用することが義務付けられています。そのため、事業の進行に伴う経費を適正に管理し、すべての支出を明確に記録することが求められます。
     具体的には、経費の支出に関する領収書や請求書をすべて保管し、どの項目に補助金を使ったかを正確に記録することが重要です。また、補助金の対象外経費(例えば、運転資金や一部の人件費)に補助金を使用しないよう、予め注意しておくことが必要です。
     経費が計画通りに使われているかを常に確認し、適正な支出を行うことが、後の実績報告においても重要なポイントとなります。

  • 定期的な進捗確認
     事業が進行するにつれて、定期的に進捗を確認し、計画通りに進んでいるかをチェックすることが必要です。事業の進捗が遅れる場合や、予期しない問題が発生した場合は、早期に対応策を講じるとともに、必要に応じて補助金の交付機関に報告することが求められます。
     定期的な進捗確認を行うことで、事業の管理がしやすくなり、補助金の実行状況を正確に把握することができます。


2. 実績報告の準備と提出

  • 実績報告書の作成 
     事業が完了した後、補助金がどのように使われたかを報告する「実績報告書」を作成・提出する必要があります。実績報告書には、事業の進捗状況や成果、補助金の使用内容について詳細に記載します。
     具体的には事業が申請時の計画通りに実施されたか、どのような成果が得られたか、経費がどのように使われたかなどが報告の対象となります。
     実績報告書を正確に作成するためには、事業実施中に記録していた経費の明細や進捗データを整理し、すべての情報をまとめておくことが大切です。

  • 経費の明細と証拠書類の提出 
     実績報告書には、経費の詳細とその証拠書類を添付することが求められます。証拠書類としては、支出に関する領収書や請求書、取引先との契約書などが必要です。
     また、事業の成果を示す書類や写真、データなども報告書に含めることがあります。これらの書類は、補助金が適正に使われたことを証明するために不可欠ですので、事業が完了した段階で整理しておくことが重要です。書類が不備なく整っていることを確認した上で、実績報告書とともに提出します。

  • 報告期限の遵守
     実績報告書には提出期限が設けられており、この期限を守ることが非常に重要です。期限内に報告書を提出しない場合、補助金の支給が遅れる、または減額される可能性があります。
     報告書の作成には時間がかかることが多いため、事業完了後すぐに報告書の準備を始め、余裕を持って提出するようスケジュールを立てましょう。報告期限が迫っている場合でも、焦らずに正確な情報をまとめることが大切です。



3. 監査や調査への対応

  • 監査への準備
     補助金を受けた事業に対しては、事後的に監査が行われることがあります。監査では、実績報告書の内容が適正か、補助金が計画通りに使用されたかを確認されます。
     このため、補助金に関連するすべての書類や証拠を適切に保管しておくことが必要です。
     監査が行われた場合に備え、事業の進捗や経費の記録がわかりやすく整理されているか、事業に関連するすべての証拠が揃っているかを事前に確認しておきましょう。

  • 経費精算の確認  
     補助金は、事業が完了した後に支給されることが多いため、精算手続きが発生します。精算手続きでは、実際に支出された経費が補助金の対象となるかが確認され、認められた範囲内で補助金が支給されます。
     実際の支出と補助金の対象経費にズレが生じないように、経費管理を徹底し、報告書を作成する際に再度確認しておくことが必要です。



 補助金を受けた後の実行段階と実績報告は、補助金事業の成功を決定づける重要なステップです。事業計画に基づいて適切に事業を実施し、経費の記録や進捗管理を徹底することで、実績報告書をスムーズに作成することができます。また、報告書の内容が正確であり、必要な証拠書類が整っていれば、補助金の最終支給も問題なく行われます。
 報告と監査の対応をしっかりと行い、補助金を有効活用するために、計画的な管理を心がけましょう。

5.2 補助金の支払いスケジュール


 補助金が採択された後、実際に補助金が支払われるまでにはいくつかのステップを経る必要があります。補助金は通常、事業の進捗や完了に応じて段階的に支払われるため、事前に支払いスケジュールを把握し、資金計画を立てることが重要です。
 補助金は支給までに時間がかかることも多いため、自社で必要な資金を準備し、事業がスムーズに進行できるように対応する必要があります。
 ここでは、補助金の支払いスケジュールの一般的な流れと、注意すべき点について説明します。

1. 補助金の支払いの一般的な流れ

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