芸大生没落日記(3)
2023年5月。私は立派にフリーターとなってバイトと練習室を行き来する日々を送っていた。
大学院に進学する以外に選択肢はなかったので、とりあえず院試で使えそうな曲を探しつつ、好きでもない宗教曲や歌曲を適当に練習した。
この頃の私には歌うということに何の情熱もなく、好きな曲もなく、歌いたい歌もなく、ただ音楽は辞められないという我執だけで日課をこなしていた。親友はもうすぐドイツに行ってしまうし、仲が良かった先輩はオーディションで急にすごい舞台の主役を取ってしまった。
惨めで情けな