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はじめに
「あいだ」という言葉を聞いてどんなイメージが浮かぶだろうか。
この本はこどもとおとなの「あいだ」がテーマだ。
その場合、幼児期を過ぎ、成人に至る手前の年代を想像する人が多いだろう。
そこでいう「あいだ」とは、おそらく下の図のように、こどもとおとなを両端にした時間軸の「真ん中」に存在しているイメージとなるだろう。この★あたりに位置しているのがティーンエイジ・思春期となる。
「あいだ」という言葉はもうひとつの意味合いを持つ。漢字の「間」はもとは「閒」と書き、「門」と「月」からできた文字で、月が門の隙間から見えることを表していると言われるが、「あいだ」という言葉はこの文字のように物事の分かれ目に生じる「穴」のごとき存在を意味する場合がある。たとえばハンモックで言えば下の図の「ココ」の部分も「あいだ」と言えるだろう。
ハンモックの場合この網にスポっとハマって寝そべるものだが、載せるものが小さければ、ハンモックの網目からこぼれてしまう。この本ではこどもとおとなの真ん中にいるみなさんに向けて、「こども」と「おとな」のイメージや期待されるありようからこぼれたはざまのような存在——主に私自身とその経験になるのだが——について書いていきたい。
10代のみなさんが多く出会うおとな——たとえば親や先生など——は、いわばみなさんを指導すべき立場としてみなさんの前ではふるまう(あるいはふるまわざるを得ない)人が多いかもしれない。私のように一見おとなではあるものの、結婚もしておらず、子どももおらず、仕事をバリバリしているわけでもなく、常に謎のイキモノのような気持ちでいることを表明するおとな(?)にはあまり出会わないだろう。
こどもとおとなのあいだにいるみなさん、あるいはすでにおとなという自覚を持つみなさんに、こどもとおとなのはざまに潜むおとな、もといイキモノが出会って何が起こるのか、あるいは何が起こらないのか―。足元にお気をつけて、ゆっくりとこの「あいだ」の世界にお越しください。
(画面表示の体裁に合わせ、本文の一部を修正しました)
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