山本粧子の Hola! ジャガイモ人間~ペルーからコンニチワ~┃ 第24回
ブエノスディアス! 山本粧子です。
今日は、パラカスミュージアムに3歳から5歳の子供たちが約500人も遠足で訪れたので、お祭り騒ぎ! 私はてんてこ舞いでした。
ほとんどの生徒が親同伴でミュージアムを訪れました。日本でいう「親子遠足」みたいな感じでしょうか。
兄弟姉妹を一緒に連れてきている親御さんもいました。なかには、展示室で哺乳瓶でミルクを飲んでいる子、離乳食を与えられている子、泣き叫んでいる子もいて、もうカオス状態でした。
正直、このタイミングでパラカスミュージアムを訪れた一般のお客さんは、落ち着いて見学できなかっただろうと思います。
ゆったりしたかった人には本当にアンラッキーですが、私が謝るのもおかしいので、心の中で「ごめんなさーい!」とだけ思っていました。
小さい頃にミュージアムを訪れるのは、最高に素晴らしい経験になると思いますが、彼らにとってはパラカスミュージアムの展示物よりも、屋外に装飾として大量に敷き詰められている石ころの方が興味を引いたようです(笑)。
引率の先生たちがオリジナルのお揃いジャージを着用し、その上からカラフルなエプロンをかけているのを見て、思わず「あ! ペルーでも、幼稚園の先生ってエプロン着けるんだ!」と一人で呟いてしまいました。
先生たちのエプロンのポケットからは、鼻水を垂らした子どもがいたらティッシュが出てきたり、水やらハサミやら、チョコレートやらが出てきたりして、ドラえもんのポケットみたいに、なんでも出てきそう。
やっぱり幼稚園児とそのきょうだいとなると、好き勝手に動き回ったりガラスに触ったり、途中で食事を取ったり、小学生以上の子どもたちが来た後よりもゴミや謎の汚れが多く残っていました。
たった2時間の見学でこの状態ですから、毎日彼らと触れ合っている先生方にとってエプロンは必須アイテムなのでしょう。
もう一つ印象的だったのは、親御さんが子ども達の手をぎゅっと握っていたことです。特に、親子で何か話しているわけでもないのですが、その手が最高のコミュニケーションになっているんだなと感じました。
小学生になると、私が外国人であることが妙に気になり、ひたすら思いつく単語を「これ日本語で何ていうの?」と片っ端から聞いてきて(私は“¿Cómo se dice?(コモセディセ)攻撃”と命名しています)収拾がつかなくなることもあるのですが、さすがに5歳までの子どもたちはそういったことはなく、国籍とかいう概念を超えた交流ができたように思います。
このように、パラカスミュージアムには様々な年代の子どもたちがやってきます。そこで今回は、私が見たペルーの学校にまつわるお話をいくつか紹介してみようと思います。
長めの義務教育
ペルーの義務教育期間は、
①Educación inicial(就学前教育)5歳から6歳の1年間
②Educación primaria(初等教育)6歳から12歳の間の6年間
③Educación secundaria(中等教育)12歳から17歳の5年間
の12年間だと言われています。
中等教育では後期から普通教育課程と職業教育課程に分かれるそうです。
私は義務教育は9年、6~15歳までの日本で育ったので、「5~17歳まで義務教育なのか!?」と少し驚きました。
公立学校の授業料は無料である一方、首都リマには月額十万円以上もする超高級インターナショナルスクールもあります。
公立小学校は、住んでいる地域によっていける学校が決まる学校区指定制度はないものの、空き状況によって入れるかどうかが決まるという話も聞くので、親の情報収拾力と段取りの手腕が問われるのかもしれません。
うらやましいほど長~いお休み
次に、学期についてです。ペルーの学校は3月が新年度の始まりで、そこから7月中旬までが冬学期、8月中旬から12月中旬までが夏学期になっています。
つまり、12月のクリスマス頃から2月末までのおおよそ70日間がいわゆる夏休み、7月中旬から8月中旬までの1ヶ月間がいわゆる冬休みとなります。
長期休暇だけで年間100日くらいありますから、日本の3倍近く。
しかも長期休みには宿題もないそうです!!
ペルーでは夏休みの最後の日に必死になって宿題をやり終えるというあの苦行が存在しないのです。
子どもの学校がお休みの時期に合わせて、親御さんも仕事の長期休暇を取得する場合が多いです。
ペルー各地からパラカスへ大勢の観光客が来て賑わうのもやはり夏休み。海が目玉のリゾート地であるパラカスは、夏本番である12月〜2月は超繁忙期なのです。
とはいえ、冬がヒマかと言われるとそうでもありません。欧州が夏季休暇を取得する6月〜8月は海外からの来館者が多くなります。また、ペルー国内の学校から遠足で来る来館者は9月が最も多かったです。
教員のワークライフバランス
小学校での出前授業を通して感じたことですが、放課後の先生たちの動きも日本とはちょっと違う気がします。
私が出前授業に訪れた4校の小学校では、最後の授業の終わりを告げるチャイムが鳴ると同時に、先生たちも子どもたちと一緒に校門を出て、颯爽と帰っていくのです。
生徒と一緒のタイミングで先生たちが帰っていく景色を日本で見たことありますか?
私の記憶を遡っても、一度もありませんでしたし、いま教員をしている友人からも、子どもたちが帰った後も遅くまで残業しているという話を聞いていました。
ですのでこの光景には大きな衝撃を受けるとともに、すごくハッピーな気分にもなりました。ペルーでは小学校の先生も仕事と私生活のバランスがしっかり取れていて、健康的だし、健全だ! と感じたからです。
(もしかすると、私が知らないだけで、ペルーにも夜遅くまで残業していたり、家に仕事を持ち帰っている先生もいるのかもしれませんが)
また、教員のスタンスも日本とは少し違う気がします。
たとえば遠足でパラカスミュージアムを訪れ、私たちが行う教育プログラムを受ける際も、先生方は子どもたちと一緒に席に座り、ミュージアムスタッフの話に耳を傾け、課題に取り組みます。
先生たちも参加者・当事者であって、単なる引率者として部屋の角っこに立って子どもたちを見ているなんてことはしないのです。
たまに、先生が一番質問してくることなんかもあります。子どもたちと一緒に学び、楽しんでくれるペルーの先生たちの姿勢が私は好きです。
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9月27日「世界観光の日」には1000人を越える学生が遠足で訪れるらしく、まだまだ学校対応に追われる日々がつづきますが、気合いを入れて仕事したいと思います。
それでは今回はこの辺りでアディオース!!