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山本粧子の Hola! ジャガイモ人間~ペルーからコンニチワ~┃ 第21回

ブエノスディアス!山本粧子です。

 日本の8月は暑すぎますが、8月のパラカスは本当に寒いです。
朝晩は特に冷えます。外出時は、コートがあったほうが安心です。
やっぱり、「8月は暑いのだ!」という概念に縛られた人生を今まで送ってきたせいか、こうも寒いとなんだか8月だと認識するのが少し難しいほどです。「いま何月だったっけな?」と何度もカレンダーを見てしまう今日この頃です。

ペルーでは冬だからと言って、こたつに入ってみかんをみんなで食べるなんてことはありませんが、今日はみんなで机を囲んでピーカンナッツをひたすら無言で剥きながら食べ続けました。

黙々とピーカンナッツの殻を剥くわれわれ

イカ州名物・ピーカンナッツ

第9回のクリスマスの記事でも少し紹介しましたが、私が住むペルー・イカ州はピーカンナッツの産地として有名です。市場やバスターミナル周辺の露店などで簡単に買うことができます。

私は、毎週土曜日の朝に、ミュージアムの館長のお母さんが市場へ買い出しにいくのについていくのですが、その際に、ピーカンナッツを1キロあたり50ソル(約2000円)で購入しました。それを館長のお母さんに報告したら、「粧子、それは完全にぼられているわ! 今度からは、私が一緒にいる時に必ず買いましょう!」
と言っていました。
館長のお母さんが果物屋さんでフルーツを大量に購入しているのを待っている間に、すぐ横のナッツ屋さんのピーカンナッツが目に入り、相場を知らずに買ってしまったわけです。

最近はちゃんと学習しまして、1キロあたり20ソル(800円)で購入しています。イカはピーカンナッツの産地ということで、特に安いそうです。他の場所へ行くと1キロあたり30ソル(1200円)から35ソル(1800円)くらいはします。

ピーカンナッツ売り場。透明なビニールのものはすでに殻が剥かれた状態。
ピーカンナッツの専門店もあります。

日本では、もうすでに殻を剥かれたピーカンナッツがジッパー袋に入ってピスタチオやピーナッツと並んでスーパーで売られているものしか見たことがありません。
殻ごと購入するなんてことはまあなかったので、まず剥き方すらわからなかったのですが、ピーカンナッツは楕円形で落ち葉色の殻に包まれた2つの種子をあわせ、強く握り、殻を割っていくと教えてもらいました。
ピーカンナッツ専用のハンマーもあり、それがあればよりスムーズに殻を剥くことができます。
私たちが食べる部分はピーカンナッツの胚乳にあたります。

殻つき状態のピーカンナッツ。
ピーカンナッツを2粒並べて、ギュッと握ると……、
 パキッと割れます。この割れ目に爪をひっかけて割っていきます。
ピーカンナッツ殻割り用のハンマー

ピーカンナッツは、亜鉛やマンガンなどのミネラルがたっぷりで、ビタミンB1、B2も含まれている上に、食物繊維も豊富! 素晴らしい健康サポート食品です。
脂質が70%以上とかなり多いので、食べ過ぎには注意しなきゃなと思いつつも、フレッシュで奥深い甘みのあるこのナッツはとても美味しく、食べ始めると止まらないのです。
みかんはたくさん食べた後、爪がオレンジ色に染まりますが、ピーカンナッツをたくさん食べた後は爪が茶色になってしまいます。

ちなみに、ペルーではピーカンナッツのことを「ペッカーナ(pecanas)」と呼んでいます。ペルー・イカ州を訪れた際には、ぜひペッカーナを試してみてください。


マニマニ・ピーナッツ

ペルーは日本よりも身近にナッツ類がたくさんある気がしています。

市場ではナッツがお菓子扱いで売られていることも。

例えば、ピーナッツもかなりポピュラーです。そこらじゅうで売っているので簡単に手に入れることができますし、小腹が減った時に小袋に入ったピーナッツをむしゃむしゃ食べている人をよく見かけます。
スペイン語でピーナッツは「マニ(mani)」というのですが、バスの中などでも売り子さんが「マニ!マニ!マニー!」と言いながら販売しています。
(ABBA の Money, Money, Money や BTS の Blood Sweat & Tears の「マニマニマニー!」のリズムとはちょっと違うんですけどね)

バス内で売られているピーナッツ(中央上部の、黄色っぽいのと赤っぽいの)。
ジャイアントコーンや、鮮やかなピンクに色づけされたポン菓子なども売られています。
こんなくす玉状態で、網棚から豪快に吊るされて販売されています。

ピーナッツは、塩系と甘い系の2種類が常に用意されています。塩系はただ塩がふってあるだけのものなのですが、甘い系はちょっと手が込んでいます。
「マニコンフィタード(Mani Confitado)」、直訳すると「ピーナッツの砂糖漬け」なんですが、ピーナッツのまわりに赤い砂糖と胡麻がまぶしてあって、カリカリッとしてとても美味しいんです。

ミュージアムのカフェで売っているピーナッツ。
やはりどこでも必ず2種セット、そして長細い袋に入れるのがお決まりのようです。

私としては、どうしてこのシンプルな塩系と少し手の込んだ甘い系が同じ価格の1ソル(約40円)で販売しているのが謎なのですが、いずれにしてもお手軽価格のおやつです。食いしん坊な人は、この2種類を両方握りしめて、交互に食べています。永遠に食べてしまう、ワガママボディまっしぐらのあの無限ループです。私にとってもかなり魅力的なコンビネーションなので、気をつけねばなりません。

このように、おやつとしても存在感の強いピーナッツなのですが、第16回で紹介しましたイカの伝統的な煮込み料理「カラプルクラ」で隠し味に使われるように、ペルー料理の中で重要な食材の一つでもあり、ピーナッツの原産地もペルー・ボリビアあたりと言われています。

ジャガイモはもちろん、トウガラシ、トマト、カボチャ、トウモロコシ、サツマイモなど、私たちの食生活になくてはならない、当たり前すぎる存在たちが、実はペルー原産なんですからすごい国ですよね。

これからもペルーの「食」について紹介し続けたいと思います。
それではこの辺りでアディオース!


~編集Oが選ぶ今週の一枚~

〈プロフィール〉
山本粧子(やまもと・しょうこ)
神戸市生まれ。大阪教育大学教育学部教養学科芸術専攻芸術学コース卒業。卒業後、国境の街に興味があったことと、中学生の頃から目指していた宝塚歌劇団の演出家になる夢を叶える修行のため、フランスのストラスブールに2年ほど滞在しながら、ヨーロッパの美術館や劇場を巡る。残念ながら宝塚歌劇団の演出家試験には落ち、イベントデザイン会社で7年半、ディレクターとして国内外のイベントに携わる。また、大学時代より人の顔をモチーフに油絵を描いており「人間とはなんだ」というタイトルで兵庫県立美術館原田の森ギャラリーや神戸アートビレッジセンターにて個展を開催。趣味は、旅行の計画を立てること。2016年からは韓国ドラマも欠かさず見ている。2023年秋より南米ペルーのイカ州パラカスに海外協力隊として滞在し、ペルーとジャガイモと人間について発信していく予定。