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【科学者#048】落語好きで酒豪なコペンハーゲン精神を日本で発展させたノーベル物理学賞受賞者【朝永振一郎】

第27回目で紹介したニールス・ボーアが広めたコペンハーゲン精神は、世界中の科学者に大きな影響を与えました。

そんなボーアに影響を受けた日本人が、第34回目で紹介した仁科芳雄さんで、仁科さんはボーアの研究所で学んだことを日本に広め日本の科学界に多大な影響を与えました。

そんな仁科さんのもとで学び、戦後の科学の発展に貢献し、さらにノーベル物理学賞を受賞した科学者がいます。

今回は、落語好きで酒豪なコペンハーゲン精神を日本で発展させたノーベル物理学賞受賞者である朝永振一郎さんを紹介します。


朝永振一郎

朝永振一郎

名前:朝永振一郎
出身:日本
職業:物理学者
生誕:1906年3月31日
没年:1979年7月8日(73歳)


業績について

1930年代に量子電磁力学が発展していったのですが、その中で摂動計算において積分が発散することを発見します。

この問題に多くの科学者が取り組んだのですが、1943年に朝永さんが解決します。

その方法が繰り込み理論の基礎の考え方になる超多時間理論と呼ばれるものになります。

そして、1947年に繰り込み理論を発表し、これにより量子電磁力学は一応の完成をみせることになります。

そしてこの数年後には、ジュリアン・シュウィンガーが朝永さんと似たような形式のものを、リチャード・P・ファインマンがまた違った形式を発表し、1965年にノーベル物理学賞を受賞します。



生涯について

朝永さんの父親は哲学者の朝永三十郎で、京都学派を代表する人物のひとりになります。

朝永さんは2男2女の第2子として誕生して、兄は工学者で京都帝国大学工科大学教授になります。

幼少期は病弱で、自然に対して興味を持つようになり、虫眼鏡で実験を行っていたりしました。

さらに、電信機や顕微鏡のレンズなどを自分で作っていました。

京都一中、第三高等学校、そして京都帝國大学理学部物理学科に進み、卒業します。

第47回目で紹介した湯川秀樹さんとは、中学校から京都帝國大学まで同期で入学し、同期で卒業しています。

ちなみに、中学までは朝永さんの方が1学年上だったのですが、のちに湯川さんが飛び級してきます。

学生時代は女浄瑠璃や寄席に入り浸って、かなりの趣味人だったと言われています。

大学卒業後は大学に残り、湯川さんと同じように無給の副手として着任します。

1932年には、仁科芳雄さんに見いだされ、東京の理化学研究所に移ることになります。

仁科芳雄

そして、仁科さんのもとコペンハーゲン精神や、ボーア研究所のような自由な研究所を実現していきます。

ちなみに1930年代には、朝永さんと仁科さんは共同で量子電磁力学の研究を進めています。

1937年からは、ドイツのライプツィヒに留学しています。

そこでは、第32回で紹介したヴェルナー・ハイゼンベルクの研究グループで原子核物理学の場の理論を学びます。

しかし、1939年から第二次世界大戦が始まってしまったため、帰国しなければいけなくなりました。

1940年には結婚し、1943年には繰り込み理論の基礎の考えである超多時間理論を発表し、1947年には繰り込み理論を発表します。

1941年からは、東京文理科大学の教授になります。

朝永さんは教授になってからも大学の大学祭で、特技のドイツ語による落語を演じるなどしてしゃれっ気が多かったと言われています。

1949年8月からは、第38回目で紹介したロバート・オッペンハイマーに招かれて、1年間プリンストン高等研究所に滞在します。

1951年に仁科さんが亡くなり、朝永さんは日本学術会議原子核研究連絡委員会の委員長に就任します。

1956年からは東京教育大学の学長になり、1963年には日本学術会議の会長に就任します。

そして、教育と科学行政に対して献身的に働き、その後の発展に貢献します。

1965年には、ジュリアン・シュウィンガー、リチャード・P・ファインマンと共にノーベル物理学賞を受賞し、東京大学原子核研究所設立に多大な貢献しました。

1978年に喉頭がんの手術を行ったため声を失い、そして1979年に再発し悪化したために亡くなってしまいます。


朝永振一郎という科学者

朝永さんの晩年は、学校などでも講演を行い自然科学の啓蒙にも積極的に取り組みました。

湯川さんと同じ時代を生き、ライバル関係と書かれることもある2人ですが、この2人が日本の物理学を発展させたと言っても過言ではないと思います。

朝永さんは落語が好きで、さらにお酒が好きで酒豪だったと言われていて、そんなしゃれっ気たっぷりの人柄に魅かれた人も多かったのではないでしょうか。

そして、後進のために教育についてや、自然科学の啓蒙のために活動をし、研究以外にも日本に多大な影響を与えました。

今回は、落語好きで酒豪なコペンハーゲン精神を日本で発展させたノーベル物理学賞受賞者である朝永振一郎を紹介しました。

この記事で少しでも朝永振一郎さんについて興味を持っていただけたのなら嬉しく思います。

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