ヨォーヨのモチーフ考察[原神]
今回はヨォーヨのモチーフ考察をしました。
ヨォーヨは中国の月の伝説や仙人が住まう場所をモチーフとしたキャラで、道教の影響が強いです。
命の星座はおそらく諸子百家の中の儒家や古い漢詩を意識したような文になっています。
名前
ヨォーヨ(瑶瑶)の瑶という字は、美しい玉を表します。中国では名前の一字を2回繰り返して呼ぶ愛称が多いので、ヨォーヨもその類(たぐい)かもしれません。
命の星座の説明でもお話しますが、
瑶館という道教の神々が住まう場所をさす言葉があり、瑶(=玉)は月も連想させます。
瑶瑶は道教の神(や仙人)と月の両方を連想させる言葉なので、この名前が選ばれたのかもしれません。
月の女神と月の兎
嫦娥(じょうが)は中国の民間の伝承によく出てくる有名な女神、もしくは仙女です。
彼女は月関係の伝説が多いです。
嫦娥(月の女神)が仲良くしているお供が、月で不老不死の薬を作っているといわれている「月兎」です。
月に兎がいると言う伝説は仏教由来です。
中国の月の兎は不老不死の薬を作っているそうです。
日本では、月の兎が餅つきしてるという例えが有名ですね。
白玉大根(中国語・白玉萝卜)
白玉大根をなぜ投げつけてくるのか。
白玉は玉...つまり月を連想させる言葉です。
また、おそらく仙人の住まいの「白玉京」から連想できる食べ物として白玉萝卜が選ばれたのではないかと思います。
白玉京は天まで通じる場所で、そこで修練を重ねた人は仙人(不死の存在)となると言われています。
そうした仙人の力が込められた食べ物を投げつけることで、邪を払っているのかもしれませんね。
命の星座
ヨォーヨーの命の星座は「木犀(モクセイ)座」です。
中国の伝説によれば、月には1本の木犀の樹が生えていて、それはとてつもない大木だそうです。
その樹の根元には呉剛という男がいて、樹を切り倒そうとしていますが、木犀の樹は傷つけられた途端に復活してしまうそうです。
よくみると木犀の木の他に、月の女神・嫦娥と、
不老不死の薬を作る月兎もいます。
うさぎのぬいぐるみの名前である「月桂」は、月にあるという不死の樹「月桂」のことですね。
璃月キャラの命の星座は元の中国語で考えた方が、モチーフ元がわかりやすいので、今から中国語の名前を記載します。
第1重 妙受琼阁
妙受琼阁の琼阁とは、道教の神々が住む高い場所のことです。
南朝の梁の人であった陶弘景(道教の茅山派の開祖)は次のように書き残しています。
“層城瑶館,縉雲瓊(琼)閣, 黄帝 所以觴百神也。”
瑶館は玉のような美しい館、
瓊(琼)閣も玉のように美しい閣(高い位置の建物を閣と呼ぶ)。
この2つに神々が住んでいた...とされています。
ヨォーヨの月桂は留雲が贈ったものなので、妙受琼阁は、「仙人(留雲)から贈られたもの=月桂」を意味するのだと思います。
第2重 正思无邪
邪念のない正しい心のことを「思無邪」と言います。『論語』の中で儒家の孔子が『詩経』の詩を評した際の言葉です。
ヨォーヨには邪念が無いという意味でしょうか。
第3重 墩墩善道
少し自信が無いのですが、調べた限りでは墩墩は正直とか誠実という意味らしい。
(ずんぐりむっくりという意味もあるとか)
善道は正しい道を行くという意味なので、正直者で、しっかりと正しい道を歩む人がヨォーヨなのだということだと思います。
「道」について論ずるということは道家や儒家の思想が入っているような気がします。
第4重 爰爰可亲
(第3重)墩墩善道 Dūn dūn shàndào
(第4重)爰爰可亲 Yuán yuán kě qīn
第3重と合わせて、語尾ではありませんが少しだけ韻を踏んだような星座名になっています。特に唐代以前の古い詩を思わせる書き方でもあると思います。
例えば古体詩として『詩経』には「風雨淒淒 鶏鳴嘴嘴」とか「青青子衿 悠悠我心」みたいな2つ続けて音を繰り返す形のものがありました。
爰爰は落ち着いていて癒される可愛い佇まいのこと。
『詩経』の中に王風の「兔爰」というウサギの詩があり、おそらくそこから連れてきた言葉です。
「有兔爰爰 雉離于羅」
(うさぎが落ち着いて飛び跳ねる中、キジは網にかかっている)
可亲は可愛いという言葉。
合わせると爰爰可亲は(ウサギのような)佇まいで可愛いという意味になります。
第5重 恻隐本义
恻隐は思いやりという意味で、儒家の孟子の『告子章句 上』の有名な言葉「恻隐之心,人皆有之。」(人はみな思いやりの心を持っている)という部分から連れてきた言葉だと思います。
本义は本来という意味なので、合わせると恻隐本义は本来の思いやりの心という意味になります。
おそらくヨォーヨの思いやりの心を表しています。
第6重 慈惠仁心
慈惠は、慈(いつく)しむ心、慈悲の心を意味します。仁心は他人を愛し慈しむという意味。
仁心と中国語で調べると医学的な話ばかりで出てきますが、今までの流れから考えると、「仁心」という形でどこかからモチーフとして連れてきたのではないと思います。
おそらく儒家の孟子の有名な言葉「仁人心也(仁は人の心なり)」の略です。
儒家の教えに「仁」(いつくしみの心)というものがあり、孟子はそれこそ人が本来持っている心なのだといっています。
命の星座 まとめ
おそらく全体的に2つのことを意識して命の星座名がつけられています。
①唐代以前の詩経や詩句から連れてきていること(主に古体詩)
②儒家の思想の中でも人の性善について論じる言葉が多いこと
このことからおそらくヨォーヨの善性について、1つの詩に似せて表現したのがヨォーヨの命の星座です。
(詩の中でも唐代までによくあった厳密なルールが定まっていなかった古体詩のような形となっていますが、完全なものではありません。)
妙受琼阁 正思无邪
墩墩善道 爰爰可亲
恻隐本义 慈惠仁心
※文の意味・解釈↓
仙人が住まう場所にて 力(月桂)を授かり、
邪念のない心で正しくある。
墩墩(正直者)で善き道を行き、
爰爰(ウサギのような佇まい)で可愛らしい。
本来、人はみな思いやりの心を持っているのだ。
(ヨォーヨにはその心がある)
本来、人はみな慈しむ心を持っているのだ。
(ヨォーヨにはその心がある)
デザイン
ヨォーヨは木犀の黄色くて小さい花びらを取り入れたデザインとなっています。
ヨォーヨは白い長袖の上に、
袖なしで前で二つに分かれた服を被っているのですが、これは恐らく明代の比甲と呼ばれる服がモチーフだと思います。
腰元には中国ドラマで時々見かける香り袋がついていますね。
髪型は仙女の髪としてよく絵に描かれているものをモチーフとしています。(ヨォーヨの髪自体は原神内のとある仙人から引き継がれたもののようですが...)
ヨォーヨが手に持つ月桂は、身を守る道具の代わりに留雲が送りました。
中国にて子供が生まれた時に、魔除けとして贈る布老虎という虎のぬいぐるみの有名な形に似ているため、虎を兎に変えて取り入れたのかもしれません。実際にヨォーヨを守ってくれています。
ヨォーヨが頭に着けている鈴も、虎頭鈴という虎を模した魔除けの鈴だと思います。
天賦
祥雲団々落清白
祥雲...めでたい雲
団々...(月などの)まるまるしたもの
清白...大根
めでたい大根を月桂が落としている姿を現しているようです。
玉顆珊々月中落
玉顆...丸い玉のもの
珊々...身につけた玉から音が鳴る
月中落...月(の中)から落ちる
この天賦名は大根を降らせる月桂のことであると思われます。
この七言の天賦名は2種類の漢詩を組み合わせたものです。
①中国唐代の詩人・駱賓王(らくひんのう)の詩の一節「桂子 月中より落ち 天香 雲外に飄る」
桂子は金木犀のことで、先述した通り、月には金木犀の木が生えていると考えられていました。
つまり、「金木犀が月から落ちて 金木犀の香りが雲の先まで漂っている」という意味の詩からインスピレーションを得たようです。
霊隠寺の金木犀を幻想的に表した詩です。
さらに、チュートリアル動画のタイトル「樨馨雲外飄(雲にまで漂い昇る木犀の香り)」もこの詩を意識したものでした。
②同じく中国唐代の皮日休の詩『天竺寺八月十五日夜桂子』の「玉顆珊珊として月輪より下(お)つ」も混ぜ合わせています。
霊隠寺とセットで並べて言及されることも多い、木犀で有名な天竺寺の様子を詠んだ詩でもありました。
白居易がこの2つの寺院を木犀繋がりで訪れた話は有名ですね。
天賦も命の星座と同じく、少し漢詩のような響きになっています。
ヨォーヨの元素爆発のエフェクトは、小さな金木犀の花が確認できますね。
固有天賦
①躡景足跡...日影の足跡
②天星零落...星が落ちる
零落(れいらく)は落ちぶれるという意味ではなく、おそらく普通に零れ(こぼれ)落ちるという意味で名付けられている...?
白玉=月(天星)に見立てているようなので、白玉大根を落とすという意味だと思われます。
③先意承問
仏教用語です。「意を先にして承問す」相手の思いを先にして対応するという意味。
璃月キャラのモチーフ考察は今までにもしてきましたが、仏教と道教を混ぜたモチーフを持つキャラが非常に多い印象です。
まとめ
当初はそんなに触れることなさそうだと思っていました。
しかし、命の星座について考えている時に、漢詩になっていることや儒家を意識していることに気がつき、とても面白く感じて夢中で考察しました。
ヨォーヨがこれからも沢山の方に愛され、そしてヨォーヨをもっと好きになってもらう手助けになったら幸いです。