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楓原万葉のモチーフ考察[原神]

今回は楓原万葉のモチーフ考察を行いました。
万葉集の歌がたくさん出てくるだけではなく、それが余すことなく設定にも活かされているキャラです。

名前について

万葉は日本最古の歌集である「万葉集」からとられています。その影響か、万葉はよく万葉集の歌を詠んでいます。

では、楓原とはなんでしょうか。

万葉のデザインに紅葉が入っていることから、広く平らな土地(=原)に紅葉(楓)が落ちている様子を表しているのではないでしょうか。

万葉集には紅葉の歌がよく出てきます。紅葉は昔は黄葉(もみち)と記載していました。万葉集の歌の中にこんな歌があります。

『雲隠り 雁鳴く時は 秋山の 黄葉(もみち)片待つ 時は過ぐれど』

(雲に隠れて雁が鳴く時は、秋山の黄葉があってほしい。すでに黄葉の時は過ぎてしまったが。)

この万葉集の歌から元素爆発の言葉「雲隠れ雁鳴く時」という言葉が来ています。

黄葉(もみち)は元々「もみづ(もみず)」という、葉が赤色や黄色に変わることを意味する言葉でした。なので紅葉=楓とは限りません。他の葉も紅葉に入るそうです。

とはいえ、もみづ(赤くなる)葉の中で最も有名なものとして楓が挙げられます。日本人の秋の歌といえばもみづ楓(赤くなる楓)…そういった経緯もあって楓原という名前にしたのかもしれません。

後述しますが、実際に万葉は和歌の「紅葉」を楓だと捉えているような描写があります。(天賦のところで説明します)

『奥山に 紅葉踏み分け 鳴く鹿の 声聞く時ぞ 秋は悲しき』
(人里離れた奥山で散り積もる紅葉を踏み分けながら、相手を求めて鳴く雄鹿の声を聞く時こそ、秋の悲しさが身に染みて感じられる)

古今集の猿丸大夫の歌です。

天賦について

千早振る(スキル)

古今集の『千早振る神代もきかず竜田川から紅に水くくるとは』という歌から来ている天賦名です。

大辞泉によれば、「千早振る」は神という言葉に繋がるお決まりの言葉(枕詞)です。

(神の代にもこんな美しい様は聞かない。竜田川が鮮やかな紅(紅葉)で水を絞り染めしている)

という歌だと思います。

簡単に言うと、紅葉で川が一面素晴らしい紅に染まっているということです。この紅葉の名所竜田川は万葉の衣装にも描かれています(後でまた説明します)。

そしてスキルの天賦の説明欄には「楓揺れ、神代の如く、散る紅葉」と記されています。

これ自体は歌ではなく、「千早振る~」の歌の補足になっています。

楓が(風で)揺れて神の代のように散るという意味だと思います。(紅葉=楓)

つまり万葉は千早振る~の歌で散った紅(紅葉=黄葉)が、色々な葉がある中でも楓だと言いたいのだと思います。

秋をテーマとしたキャラで、秋と言えば紅葉、紅葉を散らすのは風…と言うようにキャラクターの元素が決められたのかもしれません。

万葉の一刀(元素爆発)

一刀は特に深い意味はなく、刀を一振りすること。

万葉の元素爆発の説明にこんな記載があります。
「刹那の光は世を照らし、一葉にて秋を知る。拙者がこの根の葉で壁を切り拓き、時代を問う者となるでござる。」

これは中国の「淮南子 説山訓」の一節から転じた『一葉落ちて天下の秋を知る』という言葉を、更に万葉なりに変えたものだと思います。

落葉一枚で秋の来たのを知るという意味で、
刹那の光や落ち葉1枚という何気ないものが変化のきっかけとなることを意味したいのかもしれません。

拙者(万葉)こそが時代を問うもの、時代を変える「一葉」となるという意気込みが込められているようです。

また、元素爆発のセリフ「風の共、雲の行くごと。」は、万葉集の『国遠み、思ひなわびそ、風の共、雲の行くごと、言は通はむ』から来ています。

(国が遠いからと心配しないで、風に乗り雲が流れるように便りを交わすだろうから)

もう1つの元素爆発のセリフ、「黄葉を、散らまく惜しみ。」は同じく万葉集の『黄葉(もみちば)を、散らまく惜しみ、手折り来て、今夜かざしつ、何か思はむ』から。

(黄葉が散ることが惜しいので、手折って今夜髪飾りにした。何も心配はいらない。)

固有天賦

○相聞剣法
相聞は、万葉集の歌の分類の1つで、親しい人同士で様子を尋ねる歌を贈りあったもの。後に転じて恋愛関係の男女が感情を伝え合う歌となりました。

〇風物の詩吟
風物は季節のながめ、詩吟は独特の言い回しで歌を詠むこと。

〇霞立つ松風
長いので1部抜粋となりますが、
万葉集の「天降りつく 天の香具山霞立つ 春に至れば 松風に 池波立ちて…」の歌から取ったのではないかと思います。

霞がかかった松の間を吹き抜ける風、という意味。

命の星座について

〇第1重:千山紅葉
千山は千の山というより、その言葉自体でざっくり多くの山々を意味します。
多くの山々が紅葉になりはじめたという意味だと思います。


〇第2重:山嵐残心
山に吹く嵐(万葉の風のことだと思われます)。
残心は日本の(剣道を含む)武芸においての心構え。


〇第3重:楓袖奇譚
先に意味がわかりやすい奇譚から述べると、世にも不思議な物語という意味。

続いて楓袖。
なぜ「袖」なのかというと、恐らく昔から(特に万葉集の時代は)日本人が「袖」を霊的なものが宿るところとして重要視していたからではないかと思います。特に数ある歌集の中でも万葉集には数十ほど袖を振る歌が出てきます。

「袖」は縁を結ぶ…人も神も惹き付ける役割がありました。

万葉集は袖を振る(誰かを惹きつける)歌が本当に沢山ありますが、顕著なものを例として出します。

『娘子らが 袖布留山(ふるやま)の 瑞垣の 久しき時ゆ 思ひきあれは』
(※娘子は神を迎える巫女のことです。
巫女らが神を迎えて袖を振る布留山の杜の様子を表します。)

こうした「袖」の意味も含めて考えると、
楓袖(万葉)奇譚は人も神も引き寄せる不思議な物語
という意味でしょうか。

袖振り合うも多生の縁と言いますし。

〇第4重:大空幻法
大空はそのまま広い空。

精選版日本国語大辞典における「幻法」の意味を借りるとすれば、幻術のような人を惑わせるもの。

大空に惑わされる(大空幻法)とは、転じて旅で見た広い世界に惑わされるという意味かもしれないです。

これと似た話は衣装の名前の説明でも出てきます。


〇第5重:万世集
万葉集という言葉の意味をご存知でしょうか。「葉」は「世(時代)」という意味を含むとされています。

万葉集とは永き時代伝わり続ける(=万世)という祈りをこめてつけられているといわれています。

恐らく、万葉の紡ぐ物語が長く言い伝えられますようにという意味でしょうか。


〇第6重:血赤の紅葉
血のように赤い、立派な紅葉となったという意味だと思います。

命の星座(まとめ)

繋がりを持たせて意味を解釈するとこうなります。

①千山紅葉
多くの山々が紅葉となってきた。

②山嵐残心
山にいる嵐(万葉)は(剣道の)心構えをしておいた。

③楓袖奇譚
楓(万葉)の袖は様々なものを引き付け不思議な物語となった。

④大空幻法
大空(世界)に惑わされることもあった。

⑤万世集
この万葉の物語(集)が長く語り継がれますように。

⑥血赤の紅葉
最後は立派な赤い紅葉(楓)となった。

万葉の衣装の名前もそうですが、命の星座は恐らく万葉の旅の様子を表しているように思えます。

デザインについて

万葉の衣装の名前は「天涯に落ちゆく葉」です。

天涯は空のはて、故郷を遠く離れた地のこと
空のはてに落ちる(風で舞い上がる)、つまり万葉の旅を暗示した名前のようです。

旅と風に乗って舞い上がることが結びついています。
スキルもその設定が反映されています。

衣装の模様は全体的に「流水紅葉」となっています。
流水と紅葉(楓)の組み合わせは一般的に紅葉の名所である竜田川を意味するそう。
そのため、竜田川模様と呼ばれることもあります。
千早振る…の歌にも竜田川が出てきましたね。

元素爆発も流水紅葉のデザインになっていました。

万葉集は奈良時代のものですが、万葉自身の服装は稲妻の時代設定に合わせて江戸時代の下級武士っぽくなっています。(主君のいない武士である浪人モチーフなので納得ですが…)

腕のこの防御は恐らく甲冑の大袖かなぁと思います。

足はすね当てで防御されており、下駄(草履かもしれない)を履いています。

左は江戸時代末期の浮世絵師・歌川国芳の絵です。

万葉の着物の形はなかなか無い形をしていますが、着崩す感じは浪人っぽいです。

籠手(腕の防具)らしきものもつけています。

浪人だという記載は万葉の説明文に何度か出てきます。

まとめ

今回は楓原万葉についてモチーフをまとめました。万葉集を中心として、秋を連想させる風流なキャラです。これからも楓原万葉がみなさんの心に万世残るキャラでありますように。

参考文献

奈良県立万葉文化館 様
https://manyo-hyakka.pref.nara.jp/db/

森林・林業学習館 様
https://www.shinrin-ringyou.com/topics/kaede.php#google_vignette

たのしい万葉集 様
https://art-tags.net/manyo/terms/sodefuru.html

嵯峨嵐山文華館 様
https://www.samac.jp/search/poems_detail.php?id=5

伊藤博『万葉集 現代語訳付き』角川学芸出版〈角川ソフィア文庫〉(全4巻)2009。改訂版

『旺文社古語辞典 第10版 増補版』旺文社、2015年。

『日本・中国の文様事典』視覚デザイン研究所、2000年。

※今回の考察はXでも公開しているものです。(🔗HanaのXアカウント)

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