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アルハイゼンのモチーフ考察[原神]

今回はアルハイゼンのモチーフ考察をしました。

ヘレニズム(ギリシャ文化)をかなり意識しつつ、
アッバース朝(エジプト〜アラブ地域)の文化を取り入れたキャラクターになっています。

モチーフとなった人物・王朝

アルハイゼンのモチーフと思われる人物は、

イブン・アル=ハイサムIbn al-Haithamというイスラームの学者です。
彼の名前をラテン風に呼ぶとアルハイゼンAlhaithamとなります。

イブン・アル=ハイサムは、965年にアッバース朝支配下のバスラで生まれたと言われています。

スメールはアッバース朝の要素が強く、教令院はアッバース朝にあった知恵の館という学術の館がモチーフかもしれません。

スメールがモチーフにしている地域はアレクサンドロス大王が遠征したことによって、ヘレニズム(ギリシャ主義)文化が盛んになった地域です。

そしてそのヘレニズムから大分後にアッバース朝がその地域を支配しました。

知恵の館はギリシャの学術文献を学び、アラビア語へ翻訳する機関でした。

知恵の館はギリシャの学術をメインとしつつ、多様な言語を訳していたとされています。

アルハイゼンのモチーフとなった人物は光学の学者であるにも関わらず、

アルハイゼン自身は言語学(知論派)を専門としているのは、こうしたモチーフが背景にあるからかもしれません。

アリストテレスの『自然学』モチ

アルハイゼンに最初に出会うオルモス港も、ギリシャ語由来の場所です。
オルモスとはギリシャ語で、停泊(船が留まる)に適した海辺の場所を意味します。

アルハイゼンがよく読んでいる本は、ギリシャの哲学者アリストテレスの『自然学』です。

アリストテレスの『自然学』第2巻では、主に「四原因」が論じられます。

この自然学の四原因に関係するワードが、
アルハイゼンの待機モーションで出てきます。

「TELOS」「HULE」「DUNAMIS」

テイワットの文字で浮かんでいる

アリストテレスは世の中の物事の変化や運動の原因を、四つに分けていました。
質量因・形相因・作用因・目的因。

その内、質量因がヒュレーHULE。
目的因がテロスTELOS。

可能態デュナミスDUNAMISは、形相因と結びつく概念です。

この概念たちを説明していると本が出来あがる上に、専門家の間でも意見が分かれるので省略します。

アルハイゼンのモチーフと考えられる、イブン・アル=ハイサムは、アリストテレスの学術書から多大な影響を受けていました。

しかしハイサムはただアリストテレスに同意するだけではなく、アリストテレスの光の捉え方から自身の見解を更に発展させています。

アルハイゼンが琢光鏡を使うのは、ハイサムが鏡やレンズを用いて光に関する研究を進めていたという理由もあると思います。

アリストテレスの自然学(哲学)と、ハイサムの物理学(光)の両方の要素を受け継いだのがアルハイゼンだと思われます。

命の星座①

アルハイゼンの命の星座は隼座です。

これをエジプト神話の隼(はやぶさ)の天空神ホルスと結びつける方が多いようですが、
ギリシャ神話との結びつきも非常に強いです。

イブン・アル=ハイサムIbn al-Haithamのal-Haitham(アルハイサム)は、アラビア語で若い鷹(鷲)を意味します。

また、アルハイゼンの命の星座を英語版では、Vultur Volans(飛ぶ鷲)と表記しています。

これは現在 Aquila (わし座)として知られている星座の古代ローマでの呼び名です。ギリシャ神話が基となっています。

ギリシャ神話において、ゼウスは鷲(鷹)に変化するのですが、その鷲の姿がわし座(Vultur volans)になりました。

このわし座には、明るい一等星の『アルタイル』があります。

この星を昔のアラブ人はアル・ナスル・アル・タイルと呼びました。

これはアルハイゼンの命の星座と同じく、アラビア語で『飛ぶ鷲』を意味します。

つまり、ギリシャやローマの人々が考える飛ぶ鷲Vultur volansの星座の中に、

アラビア語由来の、アル・ナスル・アル・タイル(飛ぶ鷲)という星がある状態です。

なぜこんなことが起きているかと言うと、ギリシャ文化も元を辿ればバビロニア天文学の影響を受けているからです。

バビロニアってどこら辺?って思った方。
ちょうどヘレニズム文化の影響を受けている地域ら辺です。アッバース朝の支配地域もここら辺です。

つまり、バビロニアがギリシャに影響を与え、今度はギリシャがアラビア地域に影響を与えているわけです。

ややこしい…。

そういった経緯もあって、アルハイゼンの命の星座は『Vultur volans飛ぶ鷲(鷹)』になったのだと思います。

全体的に翼っぽいデザインが多いです。

命の星座②

アルハイゼンの命の星座は、
恐らくモチーフのハイサムが光学研究を突き詰めていった過程を表すのだと思います。

1凸のIntuition直感で研究が始まり、
2凸のDebate議論で研究者と追求し、
3凸のNegation否定で振り出しに戻り、
4凸のElucidation解明で真実に近づき、
5凸のSagacity判別で更に研究が最終段階に入り、
6凸のStructuration構造化で、ハイサムは『光学の書』を完成させた。

凸効果で、光と鏡を使った攻撃を強化していくのですが、それは光学の研究が進んでいることと同義なのだと思います。

天賦とアリストテレス


①通常攻撃名リトロダクション
Abductive Reasoning。

リトラダクションはアブダクションAbductionとも呼び、
アブダクション(逆行推論)はアリストテレスが用いた方法でした。

② 共相·イデア模写
Universality: An Elaboration on Form

日本語のイデアに引っ張られてプラトンを思い出す人が多そうですが、ほぼ誤訳だと思います。
英語版のFormはアリストテレスの形相のことだと思います。

先述した四原因でも出てきました。
質量ヒュレーと形相エイドスの内のエイドスを、英語でFormと書きます。

このアリストテレスの形相エイドスは、プラトンのイデアと厳密には異なるのですが、よく知らない方からすると、同じものとして扱われやすいです。
なので多分訳す段階で混同したのだと思います。

これもアリストテレス由来です。

③ 殊境·顕象結縛 Fetters of Phenomena
現象の足枷、つまり目の前のものに捉われず本質を見る部分は、この世界の捉え方自体を変えたアリストテレスっぽさがありますが、哲学ではよく使う言葉なので特定はできなさそう。

④ 四因是正 Four-Causal Correction
四因は先述したアリストテレスの四原因のことです。

以上の通り、天賦も全体的にアリストテレスを意識したものだと分かります。

武器と目

よくアルハイゼンはエジプトモチーフだと言われますが、
正確にはアッバース朝が支配した地域モチーフ(エジプトを含む北アフリカから中東あたり)になっていると思います。

アルハイゼンの性能に合わせた武器・萃光の裁葉は、他の国の武器よりほんの少しだけ湾曲しています。

恐らくこの剣のモチーフは、
アッバース朝の前にイランやメソポタミア地域を支配していた、サーサーン朝ペルシャの刀剣「シャムシール」だと思います。

(ここまで湾曲し出したのはもっと後の時代のようですが…)

アッバース朝支配地域でもこのシャムシールが使われていました。

この刀剣は少し湾曲した形が特徴的です。

シャムシールとは、ペルシャ語で「ライオンの爪のように曲がっている」という意味だそうです。

この萃光の裁葉のストーリーに登場する王子「ファラマーツ」も、ペルシャ神話の英雄です。

このペルシャ神話関係の伏線は、キングデシェレトの文明について調べているとよく出てきます。

キングデシェレトとアルハイゼンの関係については、いろいろな考察がありますね。

アルハイゼンには目のようなデザインが多く取り入れられています。

よく指摘されているのはエジプト神話のホルスの目ですが、
そこにキリスト教のプロビデンスの目も足してモチーフとしていると思います。

エジプト神話ホルスの目↓

キリスト教のプロビデンスの目(ピラミッドの上に神の全能の目が描かれる)↓


キングデシェレトの霊廟↓


先ほども言いましたがキングデシェレト自体の伏線としては、エジプトの他に、ペルシャ神話要素が結構強いです。

目のデザインが多いアルハイゼン

アルハイゼンの目のデザインはエジプトのみでなくキリスト教の要素もあると言いましたが、他にも分かりやすいものとしてイクトゥス(ギリシャ語で魚という意味)があります。

イクトゥス

初期キリスト教の隠れシンボルでした。

このイクトゥスと目を結びつけたものを、アルハイゼンは身につけています。

まとめ

アルハイゼンがなぜエジプトやアラビア要素だけではなく、ギリシャの要素を持つのか、少しでも理解していただく手助けとなれば幸いです。

アルハイゼン推しさんに限らず、色んな方に今回の考察を読んでいただけたら嬉しいです。

アルハイゼンがこれからも多くの方に愛されますように。

※今回の考察はXにて先行公開していたものです。普段モチーフ考察はXにて投稿していますが、これからnoteにもまとめていこうと思います。(HanaのXアカウント)

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