
500年前の悲劇の兄弟と狩人の少女[原神]
今回は考察要素よりもまとめ要素が強くなります。武器、聖遺物などのストーリーをまとめています。
モンドやスメールにいた2人の兄弟と、その兄弟の悲劇に巻き込まれたスメールの少女の物語です。
〈登場人物〉
愛される少女…純白の騎士に片思いする
血染めの騎士…元々は純白の騎士だった。ルースタンの弟子。
盲目の少年…血染めの騎士の弟?
狩人の少女…スメールの森林の狩人
カーンルイアで災厄が起き、汚染された禁忌の知識が世界樹まで流れ込んだ。
モンドにはドゥリンが襲来し、シニョーラ(ロザリン)の恋人ルースタン※1が戦いの末にドラゴンスパインで亡くなった。
恋人を亡くしたシニョーラが、世界の浄化を誓いファトゥスに入った頃、もう1人絶望の縁に立つ男がいた。
純白の騎士…ローランド※2である。
※1…ルースタンはペルシャの英雄叙事詩「王書」ロスタムがモチーフ
※2…ローランドはフランスの英雄叙事詩「ロランの歌」の英雄で、デュランダルを持っていた人物。もしかしたらローランドはフォンテーヌと縁がある人物かもしれない。
「西」をひたすら目指していて、おそらくフォンテーヌはモンドから見ても西にあると思われる。
ローランドは容姿端麗、名門出身の正義を愛する心優しき騎士だった。
ある時、魔物に襲われている少女を救ったことがある。その際に少女は騎士にお礼をしようとした。
するとローランドは言った。
「騎士の唯一の報酬は、騎士道を行くことだ」
「俺の褒章はこの花で。それでいい」
彼女はその瞬間恋に落ちた。
真っ白な花を持った、白銀の甲冑をつける「純白の騎士」はまだこの時、揺るぎない真っ白な高潔な精神を持っていた。
そんなローランドに転機が訪れる。
カーンルイアの災いの影響が地上にまでやってきて、魔物が地上に溢れ出したのだ。
沢山の人が亡くなり、師匠ルースタンも戦いの末に倒れた。
ローランドは心に誓った。この世界の全ての魔物を倒す。そうして、彼は西(正しくは南西)に進んだ。
ローランドの甲冑も、
少女から貰った花も、
真っ黒に染った。
持っていた長剣(黒剣)も、
侵食されていた。
旅の途中、ある人に言われた。
「騎士よ、正義と称しても、殺戮は所詮殺戮だ」
ローランドは答えた。
「いや、お前は間違っている。正義のための殺戮は即ち正義だ」
場所は変わって、草神が雨を降らせる装置を作ったところ、月は水面に森林の光模様を映し出し(月の光が世界樹を通して幻影を作り出した)、虎(森林の王)が生まれた。
森林王は草木の王(神)から、深林の花がついた月桂の冠を預かった。
森林の王は心に誓った。この森林を命に変えても守りきると。
ある時、太陽は一時遮られ(日食)、
流水は一時腐って(禁忌の知識による汚染)しまい、
世界は汚染された。
カーンルイアから禁忌の知識の汚れが流れ込んだのだ。
それを何とかするため、草神は死んでしまった(輪廻転生)。
森林の王(虎※3)が亡くなり、賢く強かった狩人の少女に冠は受け継がれた。
彼女は地上に溢れ出した魔物を必死に倒した。
※3…瞑彩鳥の鳴き声を解読すると、ヒンドゥー教の女神ドゥルガーDurgaが乗っているDawon(虎)がいたことが分かるので、おそらくこれがモチーフ。
ドゥルガーは悪魔退治の女神であり、草神ではなくおそらく狩人の少女のモチーフであると予測できる。ドゥルガーは凶暴化するとカーリー(黒)という殺戮の女神となる。
ある時、兄を追っていくつもの国を旅した盲目の少年※4が森に迷い込んだ。少年の兄は、純白で、正義を愛する、剣術が得意な、優しい人だった。(おそらく兄とはローランドのことである)
※4…盲目の少年のモチーフは、アル=アーシャーというジン(精霊)と親友だった盲目の詩人かもしれない。
彼の足跡を追って、森林の迷宮に入った盲目の少年は、魔物に襲われた。体は傷つけられ、命が消えかけていたその時、魔物を倒したのが狩人の少女だった。
狩人の少女は少年の血が溢れ出ているのを見て、少年が助からないことを悟った。
盲目の少年は、最後に自分の代わりに、世界を浄化して欲しいと少女に頼んだ。そして少年は事切れた。
狩人の少女は、少年の意志を継ぎ、森林の魔物たちを次々と倒していった。
倒して倒して倒して…
そうしている内に、自らも汚染されて行った。
いつしか人の言葉を話せなくなった。
寂しさをこらえて、1人で過ごすようになった。
それでも少年との約束を胸に、
倒して倒して倒して…
ある日、狩人は月明かりに照らされた清らかな水の中で、自らも知らず知らずのうちに魔獣の姿になっていたことに気づいた
そして森林にいた血染めの騎士ローランドに、魔物化した狩人の少女は切られた。
ローランドは言った。
「それにしても奇妙だ。一瞬、森の中で迷子になった少女だと思ったのだが…」
「水中の月に惑わされた、ただの駆除すべき魔獣だったか。」
「西に向かい続けよう。正義のために…そして、人を獣に歪めた罪を、清算するために。」
少女の頭には、緑から変色して黒くなった、金メッキの花がついた冠があった。
そして狩人の少女はこと切れた。
血染めの騎士ローランドは西に向かう途中で、危機から女性を助けようとした。
しかし女性は彼の助けを拒否した。その時、ローランドは気づいた。
戦いの中で、自分の血と敵の血に染められた自分の顔は、魔物より怖くなっていた。
「この鉄仮面が私の顔になる」
「私の騎士道で守られた人に」
「私の憎い顔を見せなくて済むから」
そしてある時、カーンルイア(深淵)に辿り着いた。血染めの騎士ローランドは魔物を殺しながら、ここで死ぬことを覚悟していた。
血染めの騎士の最後の物語(出来事)である。
しかし、ローランドは知ってしまった。
人間が魔物になる秘密を。
カーンルイアに眠る秘密を。
「偉大なる古国は不義の裁きを受けた」
「偉大なる古国の民は化け物だと歪曲された」
「我が騎士道、こんな不公平を断じて許さん」
「彼の名前は深淵ならば、我は深淵に忠誠を誓う」
そして騎士は深淵に忠誠を誓った。
……純白の騎士ローランドに花をあげた少女は、どれだけ求婚されても、求婚者がやがて減ってきても、生涯をかけて純白の騎士に恋をしていた。
時折彼を思い出しながら、
あの日、自分を助けてくれた、
正義の騎士を、
彼女は死ぬまで忘れなかった。