カーヴェのモチーフ考察[原神]
今回はカーヴェのモチーフ考察をしました。
カーヴェはアケメネス朝ペルシア~ササン朝ペルシアの文化が存分に詰め込まれたキャラです。
建築デザイナーとして、アケメネス朝の宮殿の庭「パイリダエーザ」を造り出すことを目指しているキャラだと思います。
ペルシアがモチーフ
カーヴェの名前は、ペルシャ神話「王書」に登場するカーヴェkavehが由来だと思います。
神話の方のカーヴェは鍛冶屋で、悪王ザッハークに対し反乱を起こしました。「正義と公平をください」とザッハークに懇願するシーンが印象的です。
愛用している工具箱メラックも「王書」に出てきます。
王書(シャー・ナーメ)はササン朝ペルシアの終わりの時期に編纂されました。
名前の通り、ペルシア要素が色濃いキャラクターとなります。
ペルシャのシンボル
アケメネス朝ペルシアはエラム王国を倒したペルシア人の王朝です。前550年~前330年頃に存在していました。
その後、アケメネス朝の文化を引き継いだササン朝ペルシアが開かれます。220年~650年頃に存在していました。
デラフシュ・カビアニ(カーヴェの旗)
デラフシュ・カビアニはアケメネス朝ペルシア~ササン朝ペルシアの時期に使われた旗のようなものです。ペルシャ神話において、暴政を繰り返す悪王ザッハークに対して、カーヴェが掲げた反乱の旗が蓮模様だったといわれていることから、蓮が中央に描かれています。
カーヴェのマントの内側と外側にはペルシア文化(絨毯とか)でよく見られる蓮の模様がちゃんとあります。
よくペルシア関係のもので見かける蓮模様のモチーフ元は、ペルシアの王たちがよく握っていた蓮の花だそう。
アケメネス朝は上から見た蓮などもよく描き、蓮を特に模様によくとり入れています。
ただ、この王たちが握っている花だけはザクロの花にも似ているので、ザクロではないかという意見も最近は出ているそう。しかし蓮の方が神話や歴史的重要性に合うということで、蓮という意見がまだまだ健在です。真実はタイムスリップしないとわかりません。
(例えば昔ミホミュージアムさんに行った時にもペルセポリスに近い特徴のアケメネス朝の🔗蓮紋様(ロータス)見ましたが、ほぼ同じ紋様でした。)
ペルセポリスとは?
エラム王国やギリシャの影響も受けているアケメネス朝ペルシアの首都でした。カーヴェはこのペルセポリスからモチーフを引っ張ってきているようです。
極楽鳥とカーヴェ
命の星座は極楽鳥(Paradisaea)座です。
ペルシアで極楽鳥と呼ばれる鳥として、ホマHumaが有名です。幸運をもたらす鳥です。
羽のようなものを頭につけています。
カーヴェの命の星座の鳥の頭にも、羽のようなものがついています。
カーヴェは赤や緑っぽい青、金色が多いですが、これらの色はホマを描く時によく使われるものです。
また、カーヴェはシャーバズShahbazというアケメネス朝ペルシアの旗に描かれた守護鳥に似た形の首飾りをしています。
命の星座
1 イーワーンにて謁見
ササン朝ペルシャの建築の中で、王に謁見するために待機するホール(門のようなもの)をイーワーンといいます。
▶︎天賦のムカルナスとの繋がり
イーワーンの天井にムカルナス muqarnasと呼ばれる建築上の装飾が取り入れられていることがあります。
2 キャラバンサライの轍
キャラバン(隊商)サライ(宮殿)です。
英語版だとGrace of Royal Roads(王の道の恵み)になっています。
「王の道」とは、アケメネス朝ペルシアのダレイオス一世がつくった道路(交易路)です。当然、人が多く集まる交易路の近くには、その道を使ってきたキャラバンを泊める、キャラバンサライが存在しました。
王の道は最終的にペルセポリスに繋がっていると信じられています。
3 ジッグラトへの供物
中国語では金塔的香献、英語ではProfferings of Dur Untash。
Dur Untashは、チョガ・ザンビルという、エラム人の遺跡の昔の呼び名でした。
この遺跡は神に供物を捧げるジッグラトが建築されています。
エラム人の国はアケメネス朝の支配下となり、終焉を迎えています。
ただ、エラム人の文化はその後のアケメネス朝ペルシアの文化に、大きな影響を与えています。
4 アパダーナの饗宴
英語ではFeast of Apadana。
アパダーナはペルセポリス遺跡の謁見の間の名前です。アケメネス朝ペルシアの建築物ですね。
1凸のイーワーンは4凸のアパダーナを、後のササン朝の時代風に変えたものだと言われています。
5 聖なるカーバ
英語版ではTreasures of Bonkhanak。
「ボン・カナクBonkhanak」は、
「ゾロアスター教のカーバ(Ka'ba-ye Zartosht)」という遺跡の、
ササン朝時代の呼び名です。カーバは神殿のことを意味します。
アケメネス朝の時期に建てられた建造物で、エラム人やアケメネス朝ペルシア、ササン朝ペルシャ関係の遺跡です。
ちなみにカーバだけで調べると、イスラム教の方が出てきますが、別の建物です。
ゾロアスター教はアケメネス朝ペルシアの時期に保護された宗教であり、後のササン朝ペルシアの国教となりました。
6 パイリダエーザの理想
英語版ではPairidaeza's Dreams。
命の星座の極楽鳥Paradisaeaは、楽園「パラダイス」のラテン語版でした。
(原神はどこの国のキャラの命の星座も、ラテン語となっていることが多いです)
6凸名の古代ペルシャ語のPairidaezaは、建築学の用語で「塀で囲まれた庭」(主に古代ペルシアの宮廷の庭園)を意味します。これがギリシャ語に転用され、今日の「パラダイス」という言葉になりました。
モナいわく、命の星座はその人の運命を表します。
恐らくカーヴェは、宮殿の庭(=地上の楽園のような空間)を建築(デザイン)で作り出そうとする運命だというニュアンスが込められているのかもしれません。
そしてこのPairidaezaという庭園は、デラフシュ・カビアニ(カーヴェの旗)と似た模様をしています。中央に池があり、十字に庭を区分けします。ゾロアスター教の影響でそうした形になっているそうです。
アケメネス朝ペルシアから十字で区切られた四分庭園(パイリダエーザ)が建設されるようになりました。
※ペルセポリスの庭園はその原型だと言われています。
命の星座の意味
一見、宗教における巡礼の旅のように見えますが、カーヴェの場合、少し違うと思います。
ササン朝の王と謁見するイーワーンから出発して、アケメネス朝期に成立した王の道を辿ってアケメネス朝の首都ペルセポリスに向かって遺跡探索をする道のりを表していると思います。
しかも道のりの途中に寄っている遺跡もアケメネス朝に関係します。
1凸 ササン朝の王とイーワーンにて謁見
(恐らくササン朝ペルシアの首都クテシフォンを出発)
2凸 アケメネス朝期に建造され、ペルセポリスに辿り着くと言われた「王の道」を辿る
3凸 アケメネス朝文化の下地となったエラム王国の遺跡「チョガ・ザンビル」を訪問
4凸 アケメネス朝の首都であったペルセポリスの「アパダーナ(謁見の間)」に到着
5凸 ササン朝の国教となったゾロアスター教の「ボン・カナク(カーバ神殿)」(※アケメネス朝期に建造)に来訪。
6凸 建築デザイナーとして、遺跡から多くのことを学び、アケメネス朝から続く「庭園パイリダエーザ(地上の楽園)」を実現しようとする。
神の目を手に入れると命の星座(運命)が決定するといわれているのですが、カーヴェの神の目のストーリーにも古代遺跡探索の話があります。
衣装
腰には古代ペルシアの男性がよくつけていたカマーベルト(Kamarband)らしきものをつけています。
少し裾が広がった後きゅっと締めていることから、恐らくペルシア由来のシャルワールshalwarパンツだと思います。
背の低い靴は、ペルシアの編み靴であるギーヴェgivehだと思います。🔗ギーヴェ
ほんの少し袖口が残った不思議な形のマントは、恐らく古代ペルシアのカンディスkandysという、袖口付きのマントのアレンジバージョンだと思います。
ペルセポリスのレリーフにもカンディスを羽織った男性が描かれています。
(ただこれをマントと呼んでいいものか)
英語圏の方の考察で、頭に羽をつけているのはザンド王朝の女性の衣装だという記載を見かけましたが、男性もつけています。これだけ単独でザンド王朝をモチーフにしたとは考えにくいかなぁ…と思っています。
世界的によくある装飾で、むしろインドで特に多い装飾でした。エジプトでも見かけますが…。ペルシアの男性も稀につけています。
正直、頭に羽をつけているだけならありふれているので、どこのモチーフか特定が難しいです。
もしくは、単純にホマ(極楽鳥)をイメージしたのかもしれません。
耳には建築家のシンボルである定規とコンパス。
フリーメイソンのシンボルマークをモチーフとしているイヤリングのようです。
カーヴェが作りたかったパイリダエーザ(庭園+宮殿)
カーヴェは自分の理想を詰め込んだ「アルカサルザライパレス」の建築デザインをして、実際に完成させました。(元はドリーが依頼主でしたが、計画が1度頓挫しかけた後、カーヴェがドリーに借金をして完成させます。)
アルカサルという言葉は基本的にアラビア語の要塞や宮殿を意味します。スペインに建てられたイスラム風の宮殿をアルカサルと呼ぶことが多いです。そしてそのイスラム自体がペルシアの文化の影響を受けています。
スペインのアルカサルの庭園は、ペルシャ・サラセン式庭園(6凸のパイリダエーザ)に影響を受けた庭園であり、四分庭園(中央に泉や池があり、十字の通路に分かれる)の要素が見られます。
原神のアルカサルザライパレスも、四分庭園となっています。
デラフシュ・カビアニ(カーヴェの旗)の要素をこの庭園に足しているようで、中央の泉には蓮が咲いています。
(カーヴェの旗は中央に蓮が描かれるため。)
まとめ
今回の考察はかなり難航しました。
特に、命の星座はパッと見だと宗教要素が強いように見えますが、その解釈だと5凸以外の意味が繋がらなくなります。
しかし、6凸が建築の用語としての「楽園(パイリダエーザ)」だと気がついた瞬間に、一気に建築を通して繋がり、考察していてとても楽しかったです。
カーヴェ推しさんに限らず、色んな方に今回の考察を読んでいただけたら嬉しいです。
カーヴェがこれからも多くの方に愛されますように。