見出し画像

映画の方の「リトルフォレスト」を観た

わざわざBlu-rayを買ってまでして、以前から気になっていた映画「リトル・フォレスト夏秋冬春」を観た。

もともと五十嵐大介作品が大好きで、この映画が出た当時は原作漫画作品への思い入れが強かったこともあり敬遠していたのだが、家にいる時間が非常に長いので観てみることにした。

岩手県の寒村出身の女性が都会の生活を経て帰省し、家族の問題などに悩みながらも農村の暮らしを通して自身への理解を深めるという内容。
映画の内容は原作に忠実で、主演の橋本愛の演技もものすごく良い。
映像もとても美しく、土の匂いや木の感触、青々とした野菜の照り、肉の味、芋の味、作りたてのお菓子の湯気などを画面に作り出すことに成功している。

いま調べて知ったのだが、橋本愛、当時18歳だったのか。凄いな。

実際の田舎の古民家暮らしは住居の密閉性やメンテナンス性の悪さ、労働環境の過酷さなどから決して楽なものではないと言える。
特に東北の山村の冬などはきっと屋内にいても震えが来るほど寒いはずだ。
これは私自身が林学科時代に経験したことや、実際に林業の現場に就職しようとして断念したことなどから感じたことなのだが、それを知っていても尚、この映画は「いなか暮らしは素敵なものなのかもしれない」と感じさせてくれる。

若い女の子がごはんを食べている姿を見るための映画というような側面が非常に大きい。
この映画全編を通して何度「美味そうなご飯だなー」と思ったことか。
余談ながら助演の松岡茉優(まつおかまゆ)の食事シーンも多く盛り込まれている。松岡茉優は食事シーンにとどまらず、主人公を励ますシーンや悪態をつくシーンなども演技が光っており、こちらも大変好感の持てる印象だった。

と同時に、この映画は野菜や穀物を栽培し、動物をシメて、食べるということの現実を改めて知らしめてくれる。

とにかく地面に向かう作業が多い田舎の農村の暮らしにおいて、腰が痛い、背中が痛い、足が痛い、寒い、暑い、虫が多い、娯楽がない、孤独、物品の入手に不自由など、その苦しさを(ふんわりと『美少女橋本愛』にくるんで)示している。

「夏秋」「春冬」の前後編に別れており、ソフトを2つ揃えるのは若干ハードルが高い感じがするが、贅沢な映像体験をしたい人にはこの作品はとても向いていると言える。
五十嵐大介作品ファンの人も安心して観てよい。

いい作品だった。

いいなと思ったら応援しよう!