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黒髪のミリの日記
私はミリ、15歳。
この春から一人で、ここ冬場腹に相談所を開いた。
冬場腹は、メイド喫茶発祥の地として半世紀も前に有名になってから、
可愛いという概念に特化した戦略のおかげで、熾烈な観光業界の中でも、
外国人観光客の集客率が国内3位という、大変素晴らしそうな実績の地、
となっているそうです。
可愛い機械の身体パーツ、そして、可愛い獣タトゥーという文化を
世界で初めて発明、導入、発祥させた地となったのも大きな要因らしいです。
でも、もう住んではや半年、だけど、私は、馴染めない。
多国籍でどこの国の人かもわからない人々の群れと、
機械やら動物やらに飾られた人々で溢れかえるこの場所は、中々馴染めなさそう。
それもそのはずなのか、ここ冬場腹では、私の様な相談員が沢山必要になって
いる。相談ていうのは、まあ、色々です。多分、皆色々と疲れちゃうんでしょう。
私は、この相談員という仕事に大した興味もなく、ただただ、
クリエイティブな事が苦手だったので、逃げる様にこの仕事についた訳ですが。
もう、辞めたいです。
だから、辞めても食べていける様に、と、
この日記を書く事で、私のクリエイティブスキルがどうか上達する様にと、
日々切実に願っては、枕を濡らしてます。本当に切実です。
いや、この日記は誰かに見せるわけではないから、
独り言の様に書こう、その方が楽。
この相談所を開いてから毎日、10人から20人程の
相談者さんが来てくれるんだけど、
やってみて思ったのは、めちゃくちゃ大変だって事。
お金の事、恋愛の事、見た目がどうとか、まあ
生きていく上で色々大変ですよね。
今日もある女の相談者さんが大変だったー、相手するのが。
「私の、この獣タトゥーが、気に食わないって、彼が、
う、う、うう、」その女の人はマチという名前で、
白銀の綺麗な、長い髪の毛をさらっと垂らして、
口元を手で押さえながら、泣いて、今日も、何日も、いや前から毎日の様に、、
もう辞めてって言っても、入ってきた。
「マチさん、またですかー。」
「うん、うう、う。、」
優しそうな眼差しが似合う、この人には勿体無い位に綺麗な、潤みきった眼で、
私に何かを求めている。
いえ、待っている。私が言うのを。
「はなし、聞きますよー。」
私は、いい加減マチさんにも分かって欲しかったので、視線をマチさんから
外しながら、そう言ったんだ。ええ、話を聞くのが嫌なんです。
どうせいつもと同じ話なんだし。
「良いんですか!ありがとう、ミリちゃん!」
咄嗟に私の手を取ろうと、マチさんが顔から手を離した時に、
今まで隠していたものが見えてしまった。
「今回は、キツネの口ですか。」
ああ、溜め息が止まらない止まらない。
この人は何回言っても、もうダメだ。
「この前の、彼がね、キツネみたいで可愛いって、言ってたから、、
つけたの。口に。でも、今の彼がね、、キツネは、嫌だってい、いう、う、うう、」
また口元隠してますけど、もう知ってますけど。
「恋愛って、難しいわね、ミリちゃん。」
こっち15や、SHIRANGANA!