小説 僕とあの人
ーーこれは、ある森に住む僕とあの人のとても短い物語。
兎の僕は狼のような鋭い牙、鳥のように飛び回る翼、
それを持たないことを、とても悲しんでいました。
「僕には何もない…」
僕が泣いていると、いつもあの人は側に来て微笑んでくれた。
「私は君が大好きだよ」
そう言うあの人の笑顔は、たまらなく優しかった。
ある日、あの人は森から突然いなくなった。
どうしていなくなってしまったのか。
あの日の僕には分からなかった。
どうして1人にするの?
なぜ何も言ってくれないの?
怒りにも似た悲しみを感じたんだ。
あの人に会いたい。
僕は、強さの象徴である仮面を着ける事にした。
こんな物で本当に強くなれるのかなんてどうでも良かった。
とにかく、あの人に会いに行く勇気が欲しかったんだ。
だから強くならなければいけなかった。
僕は森を出て世界中を探し回った。
今度は僕があの人に声をかけたくて、気づくと走り出していたんだ。
そして、その日がやってきた。
なのに、あの人は泣いていた。
僕は弱いから。
なんて声をかけて良いのか分からない。
あの人は周りに優しくすることで、みんなから求められていた。
そのことに傷ついていたらしい。
応えきれずに、泣いていたらしい。
全く気づいてあげられなかった。
僕は、いつも甘えてしまっていたのかもしれない。
僕は本当に弱い。
それでも、ずっとずっとあの人に会いたかった。
「僕はあなたが大好きだ」
そんな声をかけるのが正解かなんて分からなかった。
ただ伝えたかったんだ。
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