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窓の外 No.4

留置所 No.2

刑事「だからさ、何も覚えてないの?」

私「覚えていません、すみません。」

押し問答が続きます。

(何を聞いても変わらないよ。
覚えてないし…)

刑事「君、欲しくて盗みましたって言ってるよ?」

私「その調書、見せてもらってもいいですか?」

刑事「それは無理。」

(は??胡散臭い…)

私「逮捕の直後に何を供述していたのか覚えていません。その調書を見せてください。」

刑事「だから…」

私「黙秘します。」

(あ、やべ、言っちゃった…)

刑事「???」

(もう、戻れない。)

私「黙秘します。」

後日、
弁護士「どうですか?」

私「覚えていないので黙秘しています。」

弁護士「それで大丈夫。そのまま黙秘しておいてね。」

(これで合ってたのか。良かった…)

また数日後、
刑事「今日は窃盗じゃない件で取り調べだ。」

私「なんですか?」

刑事「お前の部屋を探したらこんなものが出てきたんだけど、どういうこと?」

証拠品として見せられた、
グラインダーやパイプ。
大麻に関わるものでした。

私「あの、大麻自体は出てきました?」

刑事「なんで?」

私「現行法は詳しくないですが、確か0.2g以下の所持は所持として認められませんよね?」

刑事「別にブツは出てきてないけど、
お前はどこから薬物を買っているんだ?」

私「本件と関わりがないので黙秘します。」

刑事「よくわかったよ。そういう感じなんだね。」

(こいつ、ちょっと頭悪い??)

完全に刑事を論破してしまいました。
ただ私も他人を売る気もないし、あくまで今回の事件は「窃盗」であり、「大麻所持」では無い。したがって供述する必要も無い。

刑事「じゃあ、今日はとりあえず終わりね。」

私「はい。」

その数時間後、当時住んでいたところの友人2人と養父が面会に来てくれました。

友人1「ねぇ、何したの?」

私「なんか、ドンキで万引きしてたみたいです…」

養父「お前がいきなり連絡取れなくなったから心配したんだよ。なんでそんなことした??」

(いや、お前…)

友人2「何した??」

私「自暴自棄になって薬を多めに飲みました。」

友人2「とりあえずOD(過剰摂取)辞めたら?」

私「…」

そう、私は薬の過剰摂取を繰り返し、今まで何度も救急搬送されていました。

警察官「面会終了です。」

私「ほんとにすみませんでした。今日はありがとうございました。」

友人が帰った後、私は徐々に自分がやってしまったことを理解し、覚えていないという事実を貫く事に決めました。

それから刑事との押し問答は4ヶ月に渡り続きました。

毎日のように養父が警察署に面会に来てくれて、とても嬉しい15分の面会時間で、彼とも距離が縮まった気がしていました。
今、思い返してみても、あの面会がなければ自分の芯は折れていたと思います。

「被疑者」の最大拘留期間の20日間(正確には約22日間)を超えていよいよ私は「被告人」になりました。

(もうどうにでもなれ。)

その時、私は1番の武器を手に入れてました。
現在のパートナーとの手紙です。

その人は、
「こんなことにしてしまったことが申し訳ない。」
と、こんな私に謝罪の手紙をくれました。

強いものに負けない。自分を貫く。

私は自分の為でなく、外で待ってくれている人の事をその時から考えるようになりました。

しばらく時が経ち、いよいよ拘置所への移送が決まりました。

警察官「君、明日移送だから。」

私「明日ですか?」

警察官「そう。皆より早く起こすから準備しててね。」

移送当日、私は少し浮かれていました。

(やっと1人か、ラジオも聴けるし、いいじゃん。)

その時、私の頭はニュースでしか見かけたことがない「精神鑑定」と言うことへの興味。
弁護士の言っていた「心神耗弱で無罪」という言葉に甘えていて、ただ時間が過ぎることを待っているだけでした。

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