社内勉強会を運営している方向け|形骸化させないコツ
制作会社のデザイン組織で、2年間ほど社内の勉強会の運営を担当しました。
今まさに勉強会を運営していて、
イマイチ参加者が増えないんだよなぁ
盛り上がらないんだよなぁ
タメになってるか分からないないんだよなぁ
と思ってる方に、僕が意識していた運営のコツを紹介します。
意識していたフレームワーク3選
結論から言うと、以下3つのフレームワークを意識することで、勉強会の質は格段に上がります。
組織の成功循環モデル
SECIモデル
知の階層構造
組織の成功循環モデル
これが1番重要です。
組織の成功循環モデルとは、簡単に言うと、
「信頼関係を築いてから、結果を求めようね」
というフレームワークです。
信頼関係が築けていない状態で結果を求めるとどうなるでしょうか?
今回は勉強会がテーマですので、勉強会に即した内容に置き換えると、
信頼関係 = 運営と登壇者の信頼関係
結果 = 登壇者の発表内容のクオリティ
となります。
信頼関係が築けていない状態で、
登壇者に「参加者全員のタメになる、誰も知らないであろう高尚な内容を発表してね!」というコトを求めると、登壇者は身構えます。
「来週僕の番か、嫌だなぁ」
「発表できる内容がないなぁ」
「誰かに変わってもらおうかなぁ」
とネガティブになり、勉強会に対する姿勢もどんどん受け身になっていき、
登壇者も参加者も減り、
勉強会のスキップが増え、開催数が減り、形骸化していきます。
これがいわゆる「バッドサイクル」です。
では「グッドサイクル」を回すためにはどうしたら良いでしょうか?
1. 関係の質の向上
とにもかくにも、まずは関係の質を向上させること「だけ」を目指しましょう。
発表テーマを指定しない
→実務に関係してなくてもなんでも良いよ、のスタンスで、発表のハードルを下げます。
デザイン、UI、UX、Web、マーケティング、リサーチ、気になるサービス、かっこいいサイト、などなど、発想のヒントになるように広くキーワードだけ提示しましょう。
発表テーマの相談に乗る
→テーマを指定しないことで「何を発表したら良いのか分からない」人が出てきますので「テーマに困ったら運営で相談に乗るよ!」のスタンスも必要です。
「あなたの今入っている案件は、こういう学びがあるから、それをテーマにしてみたら?」と実案件に絡めて助言してあげるとより良いです。
まずは運営が発表する
→勉強会がどういう流れで進んでいくのかをイメージしてもらうために、まずは運営が発表するのが良いです。
この時、参加者が「そんなカンタンな内容でいいんだ!」と思えるぐらいありふれた当たり前のテーマにすると、登壇者のハードルをさらに下げられます。
ファシリテーションは雑談ベース
→運営している方で「ファシリテーションが苦手」と思っている方も少なくないと思います。それは、いきなり結果の質を求めてしまっているからだと思います。
発表内容に上手に絡めた高尚なファシリテーションが出来なくても大丈夫です。
むしろ、雑談をベースにすることで、参加者に「勉強会って楽しいなぁ」と思ってもらえたり、登壇者に「こんなにイジってもらえるなら、また発表したいなぁ」を思ってもらえます。
運営者が積極的に質問する
→発表終わりに「何か質問ある人いますか?」と投げかけても、質問が出るコトはほぼありません。
ほとんどの人が「こんな初歩的なコト聞いて良いのかなぁ・・・」と思っているからです。
なので、運営者が積極的に質問しましょう。自分が理解していることでも分からないフリをして質問するのがコツです。運営はバカになりましょう。
「そんなコトも聞いていいんだ!」となり、次第に質疑応答が活発になっていきます。
結果の質を求めずに、ただただこれらを実践した結果、3ヶ月ほどで毎回30名を超える人たちに参加してもらえるようになりました。
別部署からの参加者もチラホラおり、
「勉強会って楽しいなぁ」
「毎回運営が盛り上げてくれるから発表しやすいなぁ」
と思ってもらえた結果です。
これで関係の質の向上は完了です。
2. 思考の質の向上
ここから徐々に、結果の質の向上に繋げていきます。
今回、勉強会開催の最終目的を、
社内からの評価アップ(給与アップ)
社外からの評価アップ(案件獲得率アップ)
と定義しました。
いわゆるこれがKGIで、
そこに至るまでのKPIに
デザイナーとしてのスキルアップ
があります。
勉強会で発表することで、勉強会に参加することでスキルを向上させるには、発表内容を実務に紐づけていくことが必要になります。
発表内容を聞いて、
「は〜、知らなかったな〜、なんかすごいな〜」
という抽象的な感想を、
「あ、これ今の案件のこの場面で使えるかも」
という具体的な気づきに変えていくのです。
これが「思考の質の向上」です。
思考の質を向上させるために、以下の取り組みを行いました。
感想シートを用意する
→関係の質の段階の勉強会の流れは、
登壇者の発表→運営からの質問→全体での質疑応答
という流れでやっていましたが、これだと質問する人が偏っていきます。
つまり、大半が「聞くだけの人」になります。
聞くだけだと、発表内容がなかなか頭に入ってきません。
なので、身につけるためには質問や感想など、何かしらアウトプットする必要があります。
なので、感想シートというものを用意し、発表後に参加者にそれを書いてもらうようにしました。
つまり
登壇者の発表→運営からの質問(この隙に、参加者に感想シートを書いてもらう)→感想シートを見ながら、登壇者に質問したり、参加者に質問したりする
という流れです。
強制的にアウトプットさせることで、参加者は発表内容を自分の身の回りの何かと結びつけようとします。ココで思考の質が上がっていきます。
感想シートを用いることでファシリテーションも楽になりますので、一石二鳥というわけです。
3. 行動の質の向上
勉強会の発表内容を実務に結びつける思考が自然と出来てきたら、次は勉強会で得た知見を実務で実践するステップに移ります。
ただ、ここまで来ると「勉強会の運営」としてナッジ出来ることはもうあまりありません。
逆に言うと、勉強会で得た知見は皆さん試したくなるものですから、自然発生的に行動に繋げる方が増えていきます。
それでも運営として出来ることがあるとすれば、
ファシリテーションを工夫する
ことでしょうか。
「2. 思考の質の向上」段階までのKPIは、言うなれば「参加者数」です。毎回の参加者数を30名以上に保つため、ココまでは雑談多めで「楽しい勉強会」を意図的に演出してきました。
「3. 行動の質の向上」段階から、KPIを「実務での実践数」に変更します。
数値向上のためには「勉強会の内容を実務に結びつける」必要が出てくるため、具体的なプロジェクト名を出しながら、抽象→具体の手順でファシリテーションを行うと良いです。勉強会の場以外での促進
→週1回1時間の場のみだと情報の伝達に限界があるので、チームMTGや1on1の場でも、勉強会で行われていた内容に言及し、実務での実践を促していきます。テーマと登壇者の指定
→これまでのようにテーマを登壇者に委ねるのでなく、運営がテーマと登壇者を指定するのも効果的です。
「来月始まるプロジェクトではペルソナ設計のスキルが必要になるから、この前のプロジェクトでペルソナを作ってた○○さん、ペルソナ設計についての勉強会をお願いします!」という風に指名してしまいます。
チームにとって課題に感じていることをテーマにし、そのテーマに知見のある人物を登壇者に指定します。
これを勉強会発足当初から行なってしまうとバッドサイクルが回ってしまいますが、ココまでで関係の質の向上によって信頼関係を構築できていますから、快く引き受けてもらえる場合が多いです。
4. 結果の質の向上
「3. 行動の質の向上」以上に、勉強会の運営としては関与が難しくなってきます。
ただ、あえて勉強会という場に閉じる必要もないので、1on1、チームmtgなど、いろいろな場面で発表内容を意識させる発信をしていくと良いと思います。
記事がけっこう長くなってしまったので、
📗 SECIモデル
📗 知の階層構造
については、別の機会で書こうと思います。
組織の成功循環モデルについて、
アカデミックに書かれている記事は💁コチラ