【人生の下り坂を楽しむ】
ユングの「人生の正午」
太陽の日の出から日没までを人生になぞらえて、ユングは40歳を人生の正午と例えました。今だと人生100年時代。40~50歳代が正午になるのでしょうか。少年期、成年前期を過ぎて、40~50代になると日が傾く感じに思えてきます。「中年の危機」とも言われていますが、さらに黄昏の時間帯に入ると何かと気持ちが落ち込みがちになります。
そんなときに出会った一冊の本。
吉沢久子さんの「ほんとうの贅沢」
吉沢さんは5年前に101歳で天寿を全うされましたが、
「100歳の100の知恵」などを出版され、働く女性の先駆け的な存在だったとか。江東区深川出身ということも身近に感じます。
この本の中で特に惹かれたのが、
「人生をどうしまうか」の章の「下り坂の風景も楽しい」という部分。
吉沢さんは人生を山登りに例え、
人生の山を登っている若いうちは、とにかく一所懸命で周りが見えていない。人生における下り坂とは、人生の折り返し地点を過ぎ、仕事もプライベートもある程度結果を出した後のこと。心に余裕も出てきて、周りにも目が向くようになり、いろいろなことが見えるようになる時期。
出来なくなったことや、失ったことばかりを惜しんでいたら、せっかくの美しい風景も色あせて見えてしまう。吉沢さんは、年寄りなりの楽しみ方を歳を取ることにより知ったそう。
もろもろのことを楽しみ、慈しむ気持ちにより深いものが生まれてくるのも、何かを失った代わりに何かを得たと思えるのが人生の智慧と吉沢さんは綴っています。
確かに子育て時代は家族や仕事という荷物を背負い、目標を目指して山を登っていた感があります。決して辛いだけではなく、家族という癒しや仕事というやりがいもありましたが、正直どこまでも続く山道に苦しくなっていたのも事実。時折、重い荷物を全部水たまりに投げ捨てたい気分になっていたのを覚えています。
いまは子どもたちも独立し、仕事の役割も変わり、記憶力や体力の衰えに意気消沈していたのですが、この本と出会い、もう重い荷物は背負ってない自分に気づき、晩年の下り坂をのんびり寄り道しながら、人生の麓まで下りていこうとポジティブに捉えられるようになった感じ。美しい夕日を眺めながら。
たまたま暑さを逃れるために寄り道した図書館での出会いが、私の人生を豊かにしてくれそうです。”viva 下り坂 time!”
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