市民開発者の心構え5か条 ~個人の力が組織を変える~
はじめに
あけましておめでとうございます。ソシオネットの髭晩酌です。
新しい年になりましたが、皆さまは年末年始いかがお過ごしでしたか?私は実家に帰省してお正月料理を頂き、その後東京に戻ってきてお取り寄せした冷凍おせちを食べてました。食事的には正月2回分いただいた気がします。。。
そんな話はさておき。
さて今回ですが、新たな一年の始まりにあたり、普段私たちが大切にしている考えを整理し、市民開発者が身につけるべき心構えをご紹介します。
私たちのブログをお読みの方はご存じと思いますが、企業におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進が急務となる中、市民開発の重要性もますます高まっています。
その中で、市民開発という取り組みを成功させるためには、ただノーコード・ローコード開発ツールを使いこなすだけでは不十分であり、適切な心構えを持ち、しっかりとした方向性を持って取り組むことが求められると考えます。
ということで、普段からお客様の市民開発をご支援している私たちが考えている「市民開発者やその周りの人が持つべき心構え」を5か条にまとめてみました。
1.仲間を作る ~一人でやらない・やらせない~
市民開発はチームでやる取り組みです。イメージとしては、チームスポーツのようなものだと考えてください。よって、最初は一人で始めたとしても、その後だんだんと仲間を巻き込み、協力し合うことでより良い成果を得られます。
仲間を増やす方法
市民開発者は、単に自分の業務を改善するだけでなく、他者と共に学び合うことで成長することが求められます。
社内外の勉強会やオンラインフォーラムに参加することで、知識を広げるだけでなく、新しいネットワークを構築できます。学習の機会を積極的に活用しましょう。
そもそも、今までITに触れてこなかった人が、最初から何でも市民開発で作れるわけがありません。普通は、最初はだれもが躓きます(我々のお客様も皆さん最初は苦労します)。そんな時に、気軽に何でも聞ける仲間やコミュニティを築いていくことが重要です。
また逆に、困っている人がいたら助けてあげましょう。市民開発はお互い様のマインドでやりましょう。
適切な評価と見守り
市民開発には、リーダーや上司からの適切な評価とサポートが必要です。具体的には「市民開発が正式な業務として認められていること」が重要です。
皆さんの職場には、誰もメンテナンスできない大昔からあるExcelマクロはないでしょうか?それは「スキルを持つ市民開発者がアングラで作ったマクロ」だからです。せっかくスキルを持っていて業務改善へのモチベーションも高いユーザーだったのに、その当時マクロ作成が業務として認められていなかったため、引継ぎやメンテナンスなど考えずにこっそり一人でマクロを作ってしまった結果、と言えるでしょう。
そのようなことにならないように、市民開発を正式な業務として認め、周囲からの適切な評価を与えることが重要です。それにより、市民開発者は自分の成果を実感でき、次のステップへの意欲を持ち続けやすくなります。また、仲間がいることで困難に立ち向かいやすくなり、孤立を防ぐことができます。アングラではなくオープンな場で市民開発を進めましょう。
2.まずやってみる ~手を動かし、経験を糧にする~
市民開発の魅力は、スモールスタートが可能な点です。最初から完璧を目指さず、小さく始め、試行錯誤を重ねることが重要です。
初めの一歩
無償のツールやテンプレートを使って、まずは手を動かす事が重要です。ネット上によくある「xxを作ってみたブログ」をマネするだけでも十分です。それが自分の業務に直接関係するアプリや自動化処理ではなくても、そこから気づきやアイデアが広がります。
皆さんは「守破離」という言葉を知っていますか?意味はネットで調べていただければと思いますが、「守」については、まずは有識者から教わった型を徹底的に「守る」ところから始めよう、という意味です。
市民開発も同じです。言い方はさておきですが、最初は何も考えずに型をマネしまくればいいんです。オリジナリティなんていりません。手を動かすことが大事です。逆に言えば、「やらない」ことこそが最大のリスクです。
失敗を恐れない
失敗は経験値です。一度作ったアプリが不要になったり、作成に失敗したアプリは、サクッと捨ててしまえばよいです。むしろ重要なのはそのプロセスで得られる学びや経験値で、それは決して無駄になりません。
最初から100点を狙わず、アジャイルに進めましょう。野球でいうならば、三振してもいいのでとにかく打席に立ちまくる意識の方が、市民開発の成功につながります。
3.作って終わりではない ~運用・保守まで考える~
市民開発者が作るアプリに限らず、システムやアプリは完成して使い始めた瞬間から価値を生みます。継続的にアプリを運用してアプリに価値を生み続けさせるためには、運用・保守まで見据えた設計を行い、進化させていくことが重要です。
自分で作ったもの(=市民開発)は、自分たちで保守(=市民保守)するのが大原則です。
引き継ぎやすい設計
アプリを引き継ぎやすくするために、アプリの仕組みをわかりやすくして簡潔な設計を心がけましょう。言い換えれば、市民開発者は究極的に凡庸であるべきです。誰でもわかる仕組みや設計(=凡庸な仕組みや設計)を意識しましょう。
また、簡単でもよいのでドキュメントを残しましょう。「アプリの目的・業務要件」「取り扱うデータの意味や構造」「変更管理」程度は最低限残しておくべきです。それにより、開発者に異動などが発生した場合でも、引継ぎがしやすくなり、他の人でも保守が可能になります。
逆に言えば、誰にも引き継げないアプリ(前述のExcelマクロのようなもの)が存在し、それに依存した業務になっているということは、それ自体が事業におけるリスクになる、とアプリ作成時点で考えながら市民開発を進めるべきです。
棚卸の実施
市民開発で作成した全てのアプリを長期間維持する必要はありません。定期的に棚卸を行い、必要なアプリと不要なアプリを区別することで、アプリの整理整頓を心がけましょう。
なお、管理そのものが目的ではないことを忘れないでください。アプリ管理の目的は、必要なツールやシステムを維持し効率よく運用することと、管理されていないアプリ(野良アプリ)を防止することです。そのために必要となる最低限の管理、つまりは、アプリの一覧化と定期的な棚卸程度で一般的には十分かと思います。
4.ガバナンスを守る ~自由の中に責任を~
市民開発は柔軟性がある反面、その自由度が過度に広がると、組織全体の整合性やセキュリティに問題を引き起こす可能性もあります。
よって、組織のセキュリティやデータ管理のポリシーを遵守することが、市民開発が長期的に支持されるために重要となります。
データ管理とセキュリティ
重要なデータ(個人情報や社外秘データなど)や重要な業務システムに連携・接続する場合、必ずIT部門や主幹の部門に相談し、必要に応じて適切な手続きを取るようにしましょう。
組織によっては、市民開発したアプリや自動化処理では接続が許されていないシステムがあったりします。また、「自動化処理の中でシステムにログインさせてはいけない」「適切な処理ログを残す」など、内部統制などの観点で対応が必要な要件があります。
このあたりはITやセキュリティ統括部門の判断が必要になると思われますので、うやむやにせずに専門家に能動的に相談する必要があります。アプリを作り始めてから「NG!」と言われるのはつらいので、計画段階で早めに相談するのががいいですね。
標準テンプレートの活用
市民開発の輪が組織内でだんだん広がってきた際には、組織で標準化されたテンプレートを活用することは、開発の効率化と品質の均一化を実現する上で非常に重要です。
テンプレートには「アプリテンプレート」「ドキュメントテンプレート」「共通処理テンプレート」などが考えられます。市民開発を進めていく中でボトムアップ的に整備されるケースもありますが、もし可能であればIT部門に協力してもらい、専門家のレビューを受けてテンプレートの品質を高めていくことが重要です。
また、テンプレートは常に最新の状態に保つことが必要です。現在の業務やルールとマッチしていないテンプレートは定期的に見直したり破棄したりしましょう。
5.ユーザー視点を忘れない ~自分だけでなく全員にとっての価値を考える~
そもそも市民開発者はユーザーでもあるため、「ユーザーが開発するのにユーザー視点?何を言ってんの?」とお思いの方もいるのではないでしょうか。
ここでお伝えしたいことは、市民開発者は基本的には自分の課題解決を目的に開発を進めるものの、最終的にはそのアプリがチームや組織全体の課題解決にどう貢献するかを考えることが重要である、ということです。
多様な視点を取り入れる
アプリを他の人がどう使うかを意識し、設計段階で関係者の意見を積極的に取り入れましょう。
自分の使いやすさだけを重視しすぎて他の人には直感的でない設計になってしまったり、「自分はこう操作するから他の人も同じだろう」と無意識に思い込んでしまったり、というように、自分の視点だけにとらわれないことが重要です。
直感的でわかりやすい設計
市民開発者は開発者の役割を担うことで、徐々に「作り手」の視点に偏りがちになります。このため、初心を忘れず、「使い手としての視点を持ち続けること」が重要です。
いろいろな機能がスムーズに開発できるようになると、複雑な機能を優先してユーザーの負担が大きい仕組みを作ってしまいがちです。「この操作は誰でも簡単にできるか?」「誰でも直感的に使いやすいアプリか?」と常に問い直す習慣を持ちましょう。これは前述した「引き継ぎやすい設計」にもつながる話です。
終わりに
本ブログでは、新年一発目ということで「市民開発者の心構え」について説明しました。
既に市民開発に取り組んでいるが「なんかしっくりこないな・・」「うまくいかないな・・」という思いをお持ちの方は、改めて本ブログの心構えを参考にして、新しい年から心機一転して市民開発に取り組んでみてはいかがでしょうか。
ということで、今回のブログは以上となります。ではまた次回ブログでお会いしましょう!ルネッサーンス!!
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