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『恋愛社会学』が気になるひとのためのnote:① 高橋幸×永田夏来──作り終わってホッとしている編者の雑談


この記事は、10月7日にナカニシヤ出版より発刊される『恋愛社会学: 多様化する親密な関係に接近する』の刊行にあたって、編者である高橋幸永田夏来がスペースにて行なった雑談を記事化したものです。元の音声はこちらから聴くこともできます。

文字起こし/編集:小阿瀬達基


これから、こんな感じの2名で喋ります。

永田:よろしくお願いしまーす。何やってたの?

高橋:え、ご飯食べてた。今日は市主催の性的マイノリティ講習会があって、帰って来て……ご飯食べました。

永田:ご飯食べましたか。いまどこにいるの?

高橋:え、家です。

永田:家とは……何県。

高橋:宮城県、石巻市……。

永田:宮城県なんだよね〜今いるのがね〜。信じられないよね。なんでお互い、比較的交通の便の悪いところにしちゃったんだろうね。
※永田さんは兵庫県在住。

高橋:私は地方、好きですよ。ゆったりと哲学書を読むには最適な……って、昔から私、永田さんに言ってたんですけど、覚えてます?

永田:全然覚えてない。

高橋:え、本当?サイゼリヤで言いましたよ。

永田:そうだっけ。

高橋:そうだよ!

永田:あぁ……だいぶ前だな!サイゼリヤでなんか語り合ったな!

高橋:そうそう、ドリンクバーで語ってたときにさ……「いやぁ、将来田舎で哲学書読んで生きたいんですよ〜」って。

永田:あぁ、なるほど。言ってたね〜。え、てことは夢叶えたの巻ってこと?

高橋:確かに(笑)。

永田:なんか、いきなりゴールに……ステップ飛ばした感じになっちゃったね(笑)。今の職場、すごく良いけど周りに田んぼしかないからさ。田んぼに囲まれてradicoでJ-WAVEとか聴いてると、ものすごい違和感に襲われるっていう(笑)。

高橋:でも、何か新しいことが開ける気がする(笑)。

永田:時空が歪みすぎて……(笑)。周りでカエルがゲロゲロ言ってるのに「それではここで首都圏の交通情報〜eighty one point three〜」とか……なんか色々おかしいなって(笑)。

高橋:(笑)

永田:それで今日は……ていうか、これから定期的に私と高橋さんでスペースをやろう!とりあえずスペースをやるか!って話よね。

高橋:うん。

永田:どうですか?スペース……私はこういうので喋るのめちゃくちゃ好きだけど……高橋さんは?

高橋:永田さん、なんか慣れてる感があるよね。

永田:そりゃそうよね、さすがにな(笑)。
※永田さんはTBSラジオsessionや文化系トークラジオLIFEなどへの出演多数。

高橋:やっぱ、カルチャーエリートでさ……私ね、ラジオの人ってカルチャーエリートだと思ってるから(笑)。

永田:マジか。そうなんだ(笑)。

高橋:だからね、永田さんに着いてく。私は(笑)。

永田:お、マジか。よっしゃよっしゃ……(笑)よっしゃよっしゃってよくわかんないけど(笑)。よっしゃよっしゃ、着いてこーい、わっしょーい、的な……(笑)

高橋:(笑)

永田:でも、今まであえてこういうのやってなかったんですよ……スペースとか、ポッドキャストとかって。やったら楽しいのはわかってたので、何かに引っ掛けてやりたいなって思ってたんですね。それで今度「恋愛社会学」っていう本を……作りました!

高橋:わ〜 (拍手)

永田:いよいよだよ〜(拍手)めちゃくちゃ頑張って……。

高橋:原稿、早くいただいてた皆さんすみません……今日ここ(スペース)に来てくださってる方もいて……もう本当にすみません、お待たせして……いまこのアイコンの方に謝ってる、私(笑)。

本作るの、大変でした。

永田:やってみると、意外な難しさがあったね。あまりにも……言いたいことが多すぎた、正直言うと。一冊では終わらなかったね(笑)。やっていくうちに、あぁこの話もあった方が良いよね、こっちも入れたいよね……ってアイデアがどんどん出てきちゃって……だからもう、私と高橋さんの間では勝手に3冊ぐらい先まで企画が立ってるっていう(笑)

高橋:ね、実はね(笑)。

永田:実はね、そうなんだよね(笑)。

高橋:でも、やっぱりすごい……時間かかるもんだなぁって思った。今回、初めて編著をやらせてもらって。永田さんがいたから、色々教えてもらいながら出来たなぁって感じがしてるんだけど。確認したら、まず2021年の6月ぐらいに対談してて。これがもう3年?4年?前なわけじゃないですか※。で、我々はすぐ本にしようって動き始めて、8月にはナカニシヤ出版さんに良いよって言ってもらって、9月ぐらいに執筆者に趣意書送って、2022年の6月に1回目の研究会をやってて、9月に2回目をやってる。

※ 「現代思想2021年9月号 特集=〈恋愛〉の現在――変わりゆく親密さのかたち」巻頭対談。

永田:素晴らしい、トントン拍子!

高橋:だから、2023年中に出るとすばらしいねって感じだったんだけど……申し訳ないです、いろいろありまして……そこから全部の原稿が揃ったのが、2023年?4年?とかですもんね。本にするって結構……大変なのかなって。

永田:大変。

どんな本になった?

永田:新書と違ってアカデミックな本なので、それなりにしっかりと足腰のある本にしたいなってところがまずはあったとは思うよ。だから、スッと出してスッと書いてくれた人もいれば、ある程度試行錯誤が必要なこともあったし……私、今までいろんな本をやってきたけど、やっぱり固まってる話を本にするのは早いんだと思うよ。

高橋:そう、それそれ。

永田:だよなぁ。

高橋:今回コンセプトから立てる本になったから、多分、執筆者の皆さんもどういうスタンスでどう書けばいいの?みたいな試行錯誤があったと思うし……だからみんないろいろ揺れたりとかもしつつ書いてくれて……でもさ、そういう作業って重要だなって思うの。

永田:集まって話をしたりする中で、論点がより明確になったっていうのがまずあるのと……あと「恋愛社会学ってこういう話だったのか!」っていうのが……待たせてたみんなには申し訳ないんだけど(笑)、やりながら見えてきたっていうところもあるなぁ。

高橋:確かに……そうだね。やってて「あー、オッケー。やっぱそう考えるよね」とか「あー、そこら辺が可能性だよね。うんうん」みたいな……。

永田:そうそうそう。でね、原稿が全部面白かったので「この本を、いかに良い感じに太い幹の社会学にするのか」って発想があったんですよ。

高橋:うん。

永田:なんていうのかなぁ……「あぁ、そうですよね。うんうん……」みたいなものから、さらにもう1歩踏み込んだ原稿……「玉稿」ってやつだよなぁ。それが多かったから。

教科書だったら、みんなが知ってる話を綺麗にまとめるかどうかってところになる。だけど、今回は「道なきところにまず道を作り、そこを道標にみんなでさらに大きな研究を進めていきましょう!」っていうスタートラインの本だったので。だから、みんなが書いてくれた原稿を読みながら「恋愛社会学」にはこういう可能性があったなぁとか、こっちの可能性もあるなぁというのを確認できた。

高橋:もうわかってる話を教科書的に書くってことではなかったから、結構いろいろ(今回の原稿)ぶっ飛んでるけど……。

永田:いやいや、私の中ではあんまりぶっ飛んでないよ、訂正したい(笑)。強いて言うなら編者の高橋(原稿)が1番ぶっ飛んでるけど(笑)。

高橋:そうなのよ、いろんな方向に広げようと頑張って……でも私としては、そこまで書かないと世に出せないと思っちゃったの。

永田:小さくなっちゃったらダメだもんなぁ。

高橋:そうなの。私さ、(目次で)一番最初と一番最後っていう、とても凄い場所をいただいておいて……なんていうか、どっちもぶっ飛んでるからさぁ。

永田:だねぇ。

高橋:なんかさー……。

永田:いいじゃん。

高橋:ありがとう永田さん。

永田:いやいや(笑)。

高橋:永田さんが1人でやってたら、きれいにまとまったと思うんだよ。章の配置とかすごく良いし。「恋愛のつらさ」みたいなところで、西井さん※から上岡さん※へ、ぐーっと掘っていったりとか、流れがすごく良いなぁと思いながら読んでいて。それで、私が書いた頭とお尻のぶっとび方よっていう(笑)。

※西井開(にしい かい) 第9章を担当。立教大学大学院社会デザイン研究科特別研究員。専門は臨床社会学、男性・マジョリティ研究。
※上岡磨奈(かみおか まな)第10章、Column 4を担当。慶應義塾大学非常勤講師。専攻は文化社会学、カルチュラル・スタディーズ。

永田:それはほら、あれだから。優秀な執筆者の皆さんが地盤をバチっと固めてくれてるから、編者の高橋が……(笑)。

高橋:自由、やりたい放題(笑)。ほんとに……すいません皆さん、ありがとうございますっていう感じ。でもこれ、私は重要だと思っている(笑)。

永田:重要だと思うよ(笑)そうじゃないと話が新しくならないからね。で、別に根拠なくぶっ飛んでるわけじゃない……ぶっ飛んでるっていうのは変な言い方で、根拠を持った新しい方針なわけだからさぁ。

高橋:そうそう、ありがとう(笑)。

永田:そりゃそうでしょうよ、何言ってんのよ(笑)。

本はできた。これからどうする?

高橋:でもね、この本ちょっと……すごく良いんだよ。良いんだけど、みんなが「え、ちょっと追いつけないかも……」って感じになるかもしれないから。この本、結局は研究したい人向けというか……卒論とかも含めてね。社会学やりたい人向け、みたいなところもあったので。もうちょっと、一般の人が読んでスッとわかる話も、エッセイみたいなかたちで書こうかなと思ってて。

永田:おーっ。

高橋:この出版に合わせて、エッセイもオンラインで発表します※。併せて読んでもらえば、なんで高橋が「恋愛社会学」をこっちの方向に引っ張りたいのかがわかる。

晶文社SCRAP BOOK「フェミニズム恋愛論」。第1回は9/20に公開予定。

永田:それはそれで楽しみだし……あと、関連書籍がいっぱい出たじゃん。我々がもたもた……もたもたはしてない(笑)丁寧にしている間に。だから、例えば出版されるまで……それか、出版後の1、2ヶ月ぐらい?定期的にスペースでゲストを招いて、議論したい。あとは、執筆者にも書いてみてどうだったのかとか、本全体をどう読んだのさとか。自分の研究をどういう風に発展させたいのかとか……そういう話を聞けたらと良いなぁと思っているわけです。

高橋:確かに、ゲストいいですね。

永田:あとは、いろいろイベントとかもやりたいし。

高橋:あとさ、読者の感想もすごく聞きたい。

永田:そうよなぁ。読書会みたいなものをやっても良いのかなぁ……本って、やっぱり世に出てからそれをみんなでどう使うのか?ってところも結構重要かなと思うわけですよ。せっかくなので、そういうところも一緒にやれると良いかなぁ、なんて思っておるわけですな。

高橋:ですよね。学部生とか院生から相談してもらうことが結構あって。「こんなこと考えてるんですけど、これってどうやったら研究になりますかね?みたいな相談をメールでくれて、ZOOMで喋ったりとか結構してるんですよ。それで、みんなの関心強いなぁと思うのが「好きの多様性」みたいなことなんだよね。今回の本なら中村香住さんとか、いろんな人が「好きって多様だよね」っていうのを、漫画とか引いたりしながら結構書いてくれていて。そういう話って、多分すごく盛り上がるよなと思う。

永田:うんうん。

高橋:こういうのもあり得る!とか、これが最近すごく熱い!好き!みたいなこととか、これってすごくスティグマされてるけど……みたいな。たとえば「ガチ恋」っていうとすごく馬鹿にされるんだけど、なんか違うよね、とか。そういうことを喋りたい人いませんか?この章について感想言ってくれる人いませんか?とか言ったら、スピーカーになってくれる人がいそうな気がする。

横の繋がり問題

永田:横の繋がりが無さすぎると思うんだよね。この「恋愛」って……メディア研究とか、若者研究とか、いろんなところで研究してる、したい、って人がいると思うのだけど……。

高橋:今回は「社会学」にしちゃったし、我々は社会学を地盤にしてるけどさ。他の研究分野の人が喋ってくれると嬉しいよね。

永田:でさぁ、実はこれ、私が最も得意とするところなのでございます。

高橋:うんうんうん(笑)。

永田:就職するまでずっと……生物学であるとか、工学とか、今でも社会心理のひとと共著論文出したりもしてるし。他領域のひとって面白いよ、やっぱり。

高橋:わかるわかる。

永田:あとはアレかなぁ、自然人類学の研究者と共同調査やったりとか。社会学以外の人と、いろいろ研究の可能性を探ってきたっていうのが今までやってきた事でもあるのだけど、なかなか形に出来なかったんだよね。どこで発表したらいいのかわからんとか、どこに投稿したらいいのかわからんとかで(笑)。

高橋:それ、テーマとしては家族で?

永田:家族……まぁ親密圏って感じだね。自然人類学の友達と一緒にやった調査、楽しかったねぇ〜。そのひと、お猿さんの群れを追っかけてアマゾンの山奥に泊まり込んだりとか、そういうタイプで。あとは、化石の分析で家族の研究をしてたり。すごい話が合うんだよ。似たこと考えてるから。

高橋:そうなんだ、いいね。だから、そういう人で恋愛について書いてくれる人とか……。

永田:全然いる。書いてくれるっていうか、一緒に考えてくれる人……ごく最近の社会学は「生物学の話とかちょっと置いといて、社会の話をしましょう」みたいな感じで最近はやってましたけど。でも私が社会学を始めた90年代とかは、本当に何でも使えるものは使ってたからね。

高橋:なるほどね。でも人文周りはさ、生物学とかをこう……セックス/ジェンダー二元論とかで切り離しましょう!みたいなときだったじゃん?90年代って。それがずっと強くて……今も、生物学みたいな話は「せ」って言うと怒られるみたいなみたいな感じあるじゃん(笑)。だから私は、第12章でめっちゃ生物学の話をするっていう、果敢な暴挙に出たんだけど(笑)。

永田:生物学とか心理学の研究とかも、やっぱりものすごい進んでいると思うので。だから、一回知見を持ち寄って、社会なるものがどの辺を論じることができるのか?ってところを、もう一回見直すのは重要なステップになると思うよね。

あらためて、どういう本?

高橋:ちなみに、ここまで目次とか何も言わずにきましたが、いいですか?

永田:いえ、どうぞご紹介ください目次を。

高橋:え、ちょっと待って今手元にないから(笑)。

永田:この本は三部の構成になってるんだよね。

高橋:はい。……もう始まって30分のところでようやっと……すいません(笑)。

永田:第一部が「社会制度と恋愛」です。不肖我々編者の高橋、永田、あとは『結婚差別の社会学』という本を書いている齋藤直子さんにお願いしています。そして、第一部の一章からすでに面白いよね(笑)。「近代社会における恋愛の社会的機能」(高橋執筆)、タイトルから美味しすぎるっていう……。

高橋:これみんな……みんなっていうか社会学者がさぁ……理解してくれるか……一発目これだと、拒絶反応の人もいるかも……。

永田:え、なんで?私めちゃめちゃ面白くて、これだけでどんぶり飯3杯ぐらい食べられるよ。

高橋:永田さん……この本、他の原稿もご飯3杯ぐらい食べれそうだから、ものすごいいっぱい食べないといけないかも(笑)。

永田:(笑)だってね、高橋さんの得意なところじゃん。ジンメルに始まり……。

高橋:そうです。私、ずっとジンメル研究やって来てて、ジンメル、恋愛、ジェンダーってこういう風につながるなぁ……みたいなことも今回書けたので、良かったです。

永田:だって、あれでしょう?今まで一番ずっと積み上げてきたところで。

高橋:そうなんですよ。実はその成果がめちゃくちゃ出ている。あと「恋愛と友情の違い」をどうやって学問的に規定して、とりあえず一歩目の議論をしていくか、っていうとこ……そこ、意外と社会学での語り方が全然確立してなかったと思うから。そこを書けたのが良かったかな。「恋愛と友情の違い」……。

永田:うんうん。「恋愛と友情の違い」……結構ね、そこをそもそも「親密圏」とか「親密性」みたいな言い方をしていて。区別をするのか、しないのかみたいなところを曖昧にして使っていたところがあるよね。

高橋:そうだよね。それは多分、わざとしてたでしょう?家族社会学では。

永田:そりゃしょうがないよな。

高橋:だよね。それは重要だったんだけど、あえて分節化してみた。

永田:それはだって、家族を論じるうえでの話と、恋愛っていう関係を論じるうえでの話は全然前提が違うわけだから。そこをしっかり区別していくのは超重要かなって思うよね。

高橋:ありがとう……なんかお礼言う日になってる(笑)。いやなんか嬉しいなと思って(笑)。

永田:当たり前よ、好きじゃないとここまで付き合わないだろう(笑)。

高橋:そうだけどさ(笑)。書いてるときって孤独じゃん、なんかさ……。

永田:それはね、しょうがないわな。

高橋:反論してくる人の顔ばっかり浮かぶみたいな。ない?そういうの、論文書くときって。

永田:だけどね、いやそれ超わかるんだけど……何ていうかな……もちろん戦うべきところは戦うべきなんだけど、他方で「この話はこの人がこういう風に使ってくれないかな?」とか「この話はこの人たちにウケそうだな」みたいなさ、ポジティブな横のつながりだってあって良いわけじゃん?敵ばっかじゃなくて。

高橋:いいね〜、うれしいね〜。……なんかさぁ、そういう風に歳をとるべきだよね(笑)。

永田:(笑)

高橋:ごめん、あえて永田さん歳上キャラにしちゃったけど(笑)。なんかさ、殺伐としてるじゃん、研究界隈……特に院生時代とかって。とにかく自分の議論をディフェンスするみたいな。……うん、横の広がり……まぁとりあえず第一部はそんな感じです。

永田:いやいや(笑)。まぁ、横に広げたほうが良いと思ってるし……院生のとき、私は比較的横の繋がりがあった方だと思うけど、すごく新しい話をしようとしたときに、どこに向かって喋って良いのか分かんないってのはあったので。だから、新しい話をしようとしている若者……若者?高橋さんが若いかどうかはさておき(笑)。

高橋:たった数歳の差でキャラ立てしようとしていく(笑)。

永田:もし、私がそういう人に会ったときには「自分が持っているネットワークで話がしやすくなることがあるんだったら、喜んで提供したいな」っていう考えよな。研究って1人でやるわけじゃないんじゃない?と私は思っているっていうさ。

高橋:嬉しい〜。

永田:いえいえ(笑)。

高橋:(笑)

永田:高橋論文において私が面白い、重要だなって思うのは「恋愛と友情の違い」ってのと「恋愛の特徴」の話をしている、ってのもさることながら、コミュニケーションの話をもう一回ちゃんと置き直したところも重要なんじゃないの?ルーマン使ったりもしたし。

高橋:そうなのよ。だけど、みんなに嫌がられるかな?と思ってあんましてこなかったの。

永田:なんで嫌がられるって思ったのよ(笑)。

高橋:(笑)なんかさぁ……でもこれ、読んでから聴いたほうが良いよね?こんな喋って良いの?第1章で。

永田:いいよ。

第1章、高橋論文のポイント

高橋:「個性を承認にするのに、恋愛コミュニケーションてめっちゃ使われてきた」って話があってさ。「唯一無二のあなた、唯一無二の私!」みたいなのを同定するのに恋愛コミュニケーションはめっちゃ使える……排他的な二者関係っていうのの原型になってるから。ってのがあってさ。私、ぶっちゃけて言ってしまうと今までの社会学者の……ってすごいデカい主語になっちゃうけど(笑)

永田:デカいなぁ!!

高橋:(笑)今まで社会学の恋愛論って、すごい簡単に恋愛を棄却してきたっていうか。なんか簡単に批判しちゃってる感じに見えてたの、少なくとも私としては。「はい、脱恋愛しましょう!恋愛至上主義なんかに囚われなくても大丈夫ですから〜」みたいな言説が結構多かった気がする。

永田:近代を乗り越えよう!みたいなときに「恋愛」がテーマになりがちだよね。

高橋:そう。だけど「個性を承認する」みたいな機能とかもあったわけだから……そこがどういう風に組み変わり得るのか?近代的個人は恋愛がなくなったときにどう変わっていくのか?そもそも、近代的個人はどういう風に恋愛と絡み合ってきたのか?みたいな、これまではどう成り立ってきたのか?みたいなのをちゃんと分析しないと、組み替えるにも組み変えられないではないか?って気がしていて。

ちょっと古いと思われるかもしれないけれど、19世紀の個人主義、個性承認、恋愛、っていうのがいかに不可分に絡み合って成り立ってるか……そして現代を生きる我々もそれを結構やってるよね、って話をがっつり書かせてもらって。「情熱」みたいなものが恋愛を特徴づけてるんだけど、でも現代の個人主義のところまでくると「「情熱」なしの親密な関係」ってのも可能だよね、っていうところまで分析すると。で、たぶん「「情熱」抜きの個人の自由を守る親密な関係」も可能だよね、みたいな話に最後開いていて。ここまで分析するとこれが言えるよ〜みたいな気持ちなんです(笑)。

永田:平たく言うと、やっぱり近代社会っていうところで「恋愛」っていう関係が生じてきましたよってのが前提で……その話は2章、3章で詳しくやるんだけどね。そこからポスト近代っていう社会に移行していく、ないしはポスト近代社会っていうのを分析していくってときに、近代社会によって生じている「恋愛」っていう関係、あるいはコミュニケーションとか自我みたいなものがどういう位置づけを与えているのか?って話が、あまりにもなかったって言うことよな。

高橋:そう、そうなの。

永田:それがないままに「今までに無いような新しい親密な関係が!」とかに話がいっちゃいがち。その手前のところをしっかり論じた上で、従来の社会学の古典理論に結びつけないと、社会学の話としてスケールがやっぱり小さくなってしまう……というところが難しかったわけですよ。

高橋:そうなんですよ。恋愛じゃない親密性を模索しましょう!ってなると、じゃあ友情?て感じになっちゃって。友情的な親密性にいきましょうみたいになっちゃうと、それも違うなって。だって現代の「恋愛」は19世紀のヨーロッパでできた概念だけど「友情」は18世紀の市民革命の時にできたわけで、それも近代で構築されたものだから。「友情」であればオッケーってことでもないだろっていうのは感じがするわけよね。

永田:さらに話を進めて言うならば、パブリックな領域の人間関係に関しては、アイデンティティーだのなんだのっていうところで結構細かく、機能を持った集団と結び付けられて分析されてきているから、近代社会って枠組みの中でも分析の対象にしやすかったと思うんだけれども。プライベートの人間関係って機能が不明確だからさ。家族とか。

高橋:はいはいはい。

永田:すると、役割って観点からも、あるいは構造や機能って観点からも……なんかメモとってるな(笑)。取り上げることが難しくなってしまうから、なんとなく話が宙に浮いた感じで置かれちゃってるっていうのはあるよね。

高橋:あー、そっか、そうだね。親密な関係を社会的機能で分析してみました!って意味が実はあるんですよ〜とも言えるんだ。いま初めてわかった。

永田:私はそう思ってたよ。

高橋:プライベートな関係ってなかなか機能分析しづらかったですよね、っていうか機能分析してみようと思ったらできるんじゃないですか?っていうね。

永田:で、その機能の一つにさっき言った「個性」を位置づける、みたいなところもあるんじゃないですか、っていうな。

高橋:以前、機能分析するって話をしたら、パーソンズ的な、保守的な議論をしようとしているんじゃないかって思われてすごい批判されたんだけど……だから、私がやろうとしているのはルーマン的な機能分析なんですって言ったけど伝わったかどうかわかんない(笑)。

永田:ルーマン、難しいからなあ……。

高橋:そういうのあるよね……ごめん、こんなに一章の話だけしちゃってよかった?みんなはそこじゃなくて、他にどういう章があるかとかを知りたいんじゃ(笑)。

永田:まぁ、これでは終わらないから。毎週やろうと思ってるからね(笑)。

高橋:だよね。こんなね、何分かで語り尽くせるわけが無いからね(笑)。

永田:無いからね。話をすごく簡単にすると、高橋論文っていうのは……19世紀ぐらいをスタートとして、古典理論を使いながら「恋愛」の機能、どう位置付けられ得るのかってことを「友情」を参照しつつ話したよ、ってとこなんだよな。

高橋:うん。

永田:いやめっちゃおもろいやんけ。

高橋:そう、しかも情熱が「短期的情熱」と──。

※ここで電波の不調?によりスペースが落ち、この回は終了。

高橋 幸(たかはし ゆき)@schnee05
担当:はじめに、第1章、Column 2、第12章、Column 6、7、おわりに
石巻専修大学人間学部准教授。専門は社会学理論・ジェンダー理論。主著に『フェミニズムはもういらない、と彼女は言うけれど──ポストフェミニズムと女らしさのゆくえ』(晃洋書房、2020年)、共著に『離れていても家族』(亜紀書房、2023年)など。

永田夏来(ながた なつき)@sunnyfunny99
担当:本書のねらいと構成、第2章、本書を閉じるにあたって
兵庫教育大学大学院学校教育研究科准教授。専門は家族社会学。主著に『生涯未婚時代』(イーストプレス、2017年)、共編著に『岩波講座社会学 家族・親密圏』(岩波書店、2024年)など。

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