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『恋愛社会学』が気になる人のためのnote:③-2 齋藤直子×永田夏来×木村絵里子──「親が気にいる相手と」恋愛する?

この記事は、10月7日にナカニシヤ出版より発刊された『恋愛社会学:多様化する親密な関係に接近する』の刊行にあたって、著者の1人である齋藤直子木村絵里子、編者である永田夏来がスペースにて行なった雑談を記事化したものです。元の音声はこちらから聴くこともできます。

文字起こし/編集:小阿瀬達基

前半はこちら。

コロンビアのラッパーは家族が大事。

永田:このスペースでは最近気になっている本、漫画、などを紹介してもらってるんです。あと……犬とかも?

齋藤:犬、足元で寝てます。

永田:いいな〜犬。おさいさんはめっちゃ可愛い犬を飼っているので、その話を聞きたい人もいるかもしれない…….。

齋藤:最近、本当に忙しくて……『SHOGUN 将軍』と『セヴェランス』ぐらいしか観れてない。

永田:『SHOGUN 将軍』、私まだ観れてないわ〜。

齋藤:『SHOGUN 将軍』、私めっちゃハマりましたよ。

永田:マジでかー。

齋藤:だって私、連れ合いと道歩いてるとき(ドラマのセリフにある)「えい、えい、おー」って言いながら歩いてましたもん(笑)めっちゃハマりましたよ。あとは……音楽の話ですかね。私、スペイン語学習者で。

永田:はい、存じております。

齋藤:コロンビア第二の都市……メデジンってとこがあるんですね。昔は麻薬都市として有名だったんですけど、今はだいぶ改善して。コロンビアは音楽が盛んな国なんですけど、特にメデジン出身の世界的に有名なロックとかラップの人ってめっちゃ多いんです。私の好きなフアネスって人も──。

(インターホンの音)

犬:(めちゃめちゃに吠える)

齋藤:めっちゃ吠えてるし宅急便来た!

犬:(吠え続けている)

永田:こんな吠えるんや、ちくわ(犬の名前)。

齋藤:宅急便……無視します。

永田:え、いいの?

犬:(吠え続けている)

永田:こんな鳴き声なんや。

齋藤:普段はもっと可愛いんですけど……。

永田:ていうか(宅急便)出てきて良いよ。私、そのあいだ繋いでるから。

齋藤:あ、そうですか?そしたら、行ってきまーす。

永田:……はい、多分このあと「マルーマ」って人の話をすると思うんですけど。まぁ、さっきせっかく名前が出たのでピエール瀧さんの話をすると。さっき『地面師たち』っていうNetflixドラマの話が出てきましたけど、私の最近見たコンテンツではそれが面白かったですねぇ〜。あとは『虎に翼』と『光る君へ』……それと、最近源氏物語の本※を出された西原志保さんっていう研究者の方がいて、西原さんとも恋愛の話とか『光る君へ』の話とかもしたいなと……。

※『恋愛しない私でも『源氏物語』は楽しめますか』(春秋社)

永田:あら、木村さん来ましたね。話せます?

木村:話せるかな?なんか私のスピーカー?がおかしいんだよな……。

永田:この本では、第4章で恋愛至上主義について書いてくれた人ですね。

木村:あ、ちょっとストップしますね!一回出ます……。

永田:お、そうこうしてる間におさいさんが帰ってきた。

齋藤:ただいまー。

永田:おかえりー。多分、おさいさんと木村さんはZOOMでしか会ったことがないかな?

齋藤:ない。

永田:だよなぁ。いずれ皆集まってね、シンポジウムみたいなのもやりたいよなぁ。

齋藤:やりましょうやりましょう。

永田:で、なんだっけ?スペインの音楽の話……コロンビアの……。

齋藤:そう、マルーマっていうね……。

永田:マルーマ。

齋藤:マルーマっていうコロンビアのラッパーで、いま31歳ぐらいなんですけど……その人がめっちゃ好きで!……いや、(フアネスの次に)2番目ぐらいに好きなんですけど。ラテンのラッパーって「俺たち、女いっぱい侍らせてカッコいいぜ!』みたいなノリなんですけど、すごい家族好きで。

永田:へー!

斎藤:もともとコロンビア、ラテンの人って家族主義強いし。で、特に移民の人たちはすごく家族の絆を大事にするんですよね。マーケットを意識したときにもそれは大事みたいで。マルーマって芸名なんですけど「マルマのマは母マロルのマ、マルマのルは父ルイスのル、最後のマは姉マヌエラのマ」って感じで、お母さんとお父さんとお姉さんの名前を足して芸名にしてるんですよ。

永田:すごいね!

齋藤:(笑)え〜みたいな感じなんですけど。インスタとかでも「お母さんをこのコンサートに連れてったよ!」とかすごい言ってて。マルーマって、めっちゃ濃い顔で刺青だらけでラップ歌っててダイヤモンドつけまくり!みたいな感じなんですよ。最近子供も生まれて、妻と子とずっと飼っている犬ちゃんをめっちゃインスタに載せてるんですよね。「ゴージャスで家族を大事にする」っていうのがお金持ちなラッパーの条件になってるみたいで。インスタ見てるとめっちゃ面白いんです(笑)。

永田:へぇ〜っ!!

木村:あ、聞こえますか?

永田:おかえりー。

齋藤:おかえりなさい。

木村:すみません!すごく、聞きたいことがあります。はじめましてなんですけど……あ、こんばんは!

齋藤:こんばんは。

木村:そのラッパーの方がすごく家族を大事にしていて……という話だったと思うんですけど、そこでの性別役割分業はどうなってるのか?というのが気になってます。

齋藤:すごくマッチョですね(笑)。

木村:ですよね。家族愛に溢れているけども、性別役割分業はバッチリ(従来通り)なんですね(それだとさ、結局、家族を大事にすることにはならないのですよね…)。

齋藤:そうですね。あと、中産階級が少なくて……中産階級だと夫婦平等みたいなのもありがちなんですけど、その層が薄い。だから、メキシコのドラマには中産階級の話がめっちゃ少なくて、金持ちの話か貧困層の話しかない。たまに中間層の話があると、すごくジェンダー平等的だったりするんですよ。やっぱり日本とは社会の構成がちゃうんだなぁ、っていつも思います。

木村:上流階級では男女平等が徹底されていたりしないんでしょうか?

齋藤:いや、上流は上流で全然違う世界になってますね。金持ちは金持ち過ぎるぐらい金持ちですし……。

木村:なるほど……。

親とのより良い関係性って?

永田:リスナーの方から良い質問が寄せられています。「結婚や恋愛をするにあたって、親との理想的な関係ってどういうものだと思いますか?」と。木村さん、これってどう思います?私とおさいさんで「親に忖度しちゃう、みたいな状況は微妙だよね」という話をずっとしていたんだけど、逆にどういう関係が理想だろう?って質問なんですけど。

木村:それはすごく難しい……ただ、やっぱり親子って、親が生きていた時代と子が生きている時代や社会の状況は大きく異なるので、絶対にジェネレーションギャップがあるので、親がいかに子ども世代の価値観をキャッチアップできているか、キャッチアップしようとするかということが一番大事になってくるのではないでしょうか。

齋藤:たとえば、親が「マッチングアプリで出会ったなんて大丈夫?」って言って、子供は「そんなので反対してくるの意味わからへん!」ってなるやつですね。

木村:あー(笑)、それは……反対したい気持ちもわかる……ごにょごにょ(笑)

永田:私、もともとできちゃった結婚……「妊娠先行型結婚」の研究をしていて。これって、ゼロ年代ぐらいだと結婚理由としてはあまり公言できない感じで「運命に導かれて結婚しました〜」みたいな言い方をしていたんです。でも、最近はそうでもなくて、親もできちゃった結婚だってことを隠さなくなっていたりする。

齋藤:なるほどね。

永田:一方で、現在だとマッチングアプリが「AIのお導き」とか言われているらしく、結婚式とかでは隠す傾向があるみたいな話を聞いたことがあります。だから、時代が変わっていくにつれて何が微妙なのかっていう線引きは変わっていくから、親の線引きが必ずしも自分の体感と合っているかは限らないよね。

齋藤:何が良いか悪いかって、時代によって変わりますものね。阪井裕一郎さんが書いてるんだけど、かつての農村では自分で好きな相手を村内で見つけて結婚していた。でも、大正時代になってくると、仲人がおらへん結婚なんて酷い!って言われるようになってきて……。

永田:「野合」だよね。「野合」!

齋藤:そうそう。

永田:「野合」ってすごいよね。野原の野に合うって書いて「野合」。仲人がいない結婚は野合だ!っていう。

齋藤:時代によって価値観は変わるよなぁってそこで学びました。

永田:『仲人の近代』ですねー。今、どういうのが良い親子関係なんだろうね。もちろん一概には言えない部分もあると思いますけど……。

齋藤:どうでしょうねぇ……。

永田:「嫌なものは嫌だと言えるような関係」ではあるかなぁ。親と喧嘩しろって話ではなくてね。親は子供の好きなものが自分の好きなものだと思いがちだし、子供もまた、親の好きなものが自分が好きなものだと思ってしまう……いま、わりと母娘関係を想定して喋っていますけど、母子関係って結構境界線(バウンダリー)が曖昧になりがちっていうところがある。だから、あくまで親の意見は一意見として「私はそうは思わないよ」ってちゃんと言えるような関係であると、不健全さが薄まるかな?とは思うんだけど……親子の間で境界が曖昧になってて、お互いに相手に気に入られるように振る舞っちゃうって感じだとちょっと違うかなって思ったりするよね。

齋藤:確かに、子供に「しっかり自分で決断できる人間になったんだね」って点を親が喜んでくれるようであれば良いなっていうのはありますね。

永田:そういうのはあるわなぁ。これは家族関係の話なので、社会学の話とはちょっと違うかもとも思うけどね。

感覚の違う親、どう接してる?

木村:個人的におうかがいしたいのですけど……。

齋藤:なんだなんだ?

木村:親とどういう関係を築くかっていう……さっきのジェネレーションギャップの話と関連するのですが、この間のお盆に実家に帰ったときに親と大喧嘩したわけですよ(笑)。

永田:おぉ(笑)

齋藤:おぉ(笑)

木村:世代が違うから、どうしても考え方のズレはあるじゃないですか。でも一応、社会学者として(笑)年老いた親にも「いま社会はこういう風になってるのだよ」ということを説明するべきなのかどうか、そのあたりのお考えをぜひおうかがいしてみたいです。どういう風に(ジェネレーションギャップが確実にある)親と関係性を築いているのか。

齋藤:私も自分の話していいですか(笑)。

永田:どうぞ(笑)。

齋藤:私の母親もやっぱりずっと専業主婦で、一度も働いていないんですよ。短大を出て、お見合いをして結婚して、ずっと専業主婦で今80歳、みたいな感じなんですけど。「女の人が働いてる」ってことをとても想像できないみたいで、忙しい授業期間中にいきなり電話かけてきて「来週ハワイ行かへん?」とか言ってくるんです(笑)。けど、それにめちゃくちゃ腹立って泣いて怒るほどで……。

木村:わかる〜(笑)(忙しいときに、メダカの水槽の移し替えを手伝ってくれと電話がかかってきたことがあり、ブチギレた記憶が。知らんがな)

齋藤:私がブチギレてると、連れ合いから「ノリコ(母)に優しくしろ」って言われるんですよね。

木村:喧嘩しないでってことですね(笑)。

齋藤:他人に対してあまり感情的にならないんですけど、なんで母親に対してはあんなに感情的になるやろって。

木村:ブチぎれられるっていうのはある意味では良い関係なのかもしれない。

齋藤:でも、なんぼブチぎれても全然わかってくれないんですよ。それで、同じく仕事が忙しい姪っ子にも似たようなことを言ってブチ切れられてるんですよ。

木村:私たちって、ふだん若い世代に向けて(比較的新しい考え方などを)教育をしているじゃないですか。けど、自分の親とは話が全然通じないわけで……(笑)。なんか(学生に教育をしている立場にもかかわらず、親との関係のなかでは)すごい不甲斐ないなぁと思うわけです。

永田:そういうことあるからねー。うちはステップファミリーで親が再婚してるんだけど、私がいくら言ってもうちの父親には全然響かなかったのに、新しいパートナーが言ったらハッとする、みたいなことがあるように「何を言うかじゃなくて誰が言うか」ってこれかー、と思って。

木村:うちもステップファミリーですが、親からすれば子どもだから聞く耳を持たないというところもあるのかな。

永田:まぁそれはあれじゃないの?やっぱり娘として話をするのと、教員として話をするのと、受け止められ方の違いってのもあるのかなと思ったりするよね。

木村:ブチギレてまで説得するのが良いのか、またはどうせ分かってもらえないのだからまぁいいかと諦めるのかというのと、いったいどちらが良いんだろうなぁと思い悩みます。

齋藤:確かに確かに。

永田:確かに確かに。

齋藤:でも、うちは姪っ子がブチ切れたことで母親はやっぱりすごく学んだところがあって。私が言っても効果なかったよなぁー、みたいな。

永田:そうなんですねー……というところで、夜も深まってまいりました。そろそろ締めの方向に話をしていきたいかなぁと思いますが。木村さんありがとうございました。

木村:すみません、乱入してしまって。お邪魔しました〜!

齋藤:またお話ししましょう〜。

家族・親密性研究の今後

永田:あれも話したい、これも話したい……みたいなこといっぱいあったと思うんですけど、最後は何の話で終わりましょうか。これから何をしたいかとか?

齋藤:それでいきましょう。この1年ぐらい、ずっと永田さんに「科研で一緒に何かやろうよ」ってお声掛けをしようと思っていながら声かけられなかったんですよね(笑)。でも、部落問題をちゃんとやるなら、日本の家族のこともちゃんとやらないといけないし、私がなんとかしたいことはなんともならないので。それと、やっぱり親の影響の話ってちゃんと考えたくて。今回は結婚についての話しか聞かなかったんですけど「親のアドバイスって、一般的にどういう風に聞かれてるんやろ?」っていうところをもうちょっとやりたい。

永田:その話、すごく興味深くて。我々って、家族にはこれだけ詳しいのに内部の人間関係の話になるとあんまりエビデンスを持ってないんですよ。特に、私がやっているのは家族社会学なので、やっぱり「社会の影響を受けて家族がどういう風になっているのか?」っていう話なんですよね。

齋藤:うんうん。

永田:だけど、家族の内部の人間関係の話、これは家族関係学っていう文脈になるんだけども……そこでは発達心理の話であるとか、地域の暮らし方とかって要素も入ってくるから、社会学だけだといまいち分析しきれないところがあるなと思ってる。

齋藤:なるほど、なるほど。

永田:70年代ぐらいの家族研究はそういうことをやってきたわけです。家族のなかで意思決定がどういう風になされているのかとか……でも、そういう研究って今はやっぱり心理学の方に重心が移ってるので、家族内部のやりとりとかって今の社会学だとあんまり分析できてないんだと思うんだよね。だけど、たとえば「毒親」とか「過干渉」とか「共依存」っていうような……家族内での人間関係の問題って単純に心の話ではなくて、社会の影響のなかで生じているものでね。そういうところに接近するような研究は必要だなって思う。

齋藤:やっぱり、それは心理学の研究とはやっぱり違うような気がしてしまうんですよ。

永田:わかる。私もお邪魔させていただいている青少年研究会ってところがあって、そこでも分析できるといいなと思ってます。今って、ポスト近代社会って言いますよね。社会全体が共有してきた規範……たとえば年功序列やジェンダー規範なんかが解けていって、規範に従うのではなくて自分で考えて決める世の中、ポスト近代になっているってことが前提とされている。

でも、すべてが完全に自由化されたわけでもない。日本でいえば、まだ家族主義が根強い。子供が病気したり、怪我したりしたときに頼るのは家族だってことになっている。若者はまだ家族から自由になれていない、っていうのは状況として一つあるんですよね。

齋藤:私、ポスト近代について考えてることが2つあって。一つは、今までの規範が失効して、人々が自由な選択をできるようになっても、結局マイノリティはリスクみたいな形で語られていくのかなぁってこと。もう一つが、そもそもまだ近代化すらできてないんじゃないかと。たとえば、まだ同性婚はできないわけですよね。性的マイノリティが結婚できないような社会で、ポスト近代の話をするのはまだ早いんじゃないかって気もするんですよ。

永田:わかる。「今の日本社会で実際に作られている家族は従来の性別役割分業が残っていることが多い」とはよく言われるし、ポスト近代って言うわりに、戦前からの制度とかを引きずってる部分がまだまだあるんだよね。ただ、一応「自由な選択ができるようになった社会」では、そこに根拠づけることが難しい。そこで「作られた伝統」とかが出てくるわけだな。本当はそんな歴史的根拠がないのに、女性が男性を支えることこそ日本の伝統だ!夫婦同性が伝統だ!みたいな考え方に寄っていく……っていう。そのときに、部落差別やマイノリティ差別的な言い方がすごく簡単になぞられるのは、どういう仕組みやねんって思うよね。

齋藤:そうなのよ。だから「いまの社会って近代なん?ポスト近代なん?」ってところから話していこうと思うと、言わなあかん前提がものすごいいっぱいあるから、大変やなっていつも思うよね。

永田:切り分けていかないといけないんだよね。社会ってそんなガラッとは変わらなくてさぁ。恋愛とか家族とか結婚とかも、ある部分は古い制度のままなのに、ある部分はすごく新しかったりする。一概に言えないところがあるんだよね。

齋藤:だから、研究者や実践家の人が分業して「ここの分までは言えてます。ここはまだ課題があります」みたいなものを皆で持ち寄って成立してるって感じがあります。

永田:わかる。分業は絶対これから大事になると思う。この本を作ってそれは強く思った。それぞれの専門家が持ってる知見って、やっぱり凄い知見だから、1人で考えるよりも集まって考えた方が深められるというかね、そういうのがあるよね。

齋藤:本当にそう思います。最初に出てきた『入門 家族社会学』とか『岩波講座社会学 家族・親密圏』とか……家族についてのいろんな論文がちょっとずつ載ってる本読んでると「色んな方面から見て、いろんな人の知見を集めてやっと何かが言えるよなぁ」って感じめっちゃします。だから、そういうものをコーディネートする仕事ってやっぱりすごく大きい。

永田:本当にそう思う。だからこそ、仲良く……仲良くっていうと急にアレやけど(笑)高橋さんとも話してるけど、もっと横の繋がりをもってね。単に馴れ合うってことじゃなく、批判もし合いつつ、それぞれの知見を持ち寄って新しい話をどうつくっていくのかってことをやれたら良いと思ってるんですよね。……おさいさんの岩波講座はいつ出るんだっけ?

齋藤:知らない(笑)。

永田:まだ出ないのかな?

齋藤:差別・マイノリティの巻なんですけどね(第七巻)。たぶん、だいぶ最後の方に出るんですよ。でもちょっとここで声を大にしていっておきたいのは、私はもう脱稿しました!(笑)

永田:いぇーい!!

齋藤:オーバービュー(総説)の人、一文字も書いてないみたいですよ。編集さん聞いてますか〜。

永田:あ〜〜。で、さっきおさいさんが言ってくれた『岩波社会学講座』の「家族・親密圏」の巻も、そう言う意味では家族研究の一つのアンソロジーみたいな感じで、私と松木さんでやらせていただきました。

齋藤:アレ、よかったです。

永田:ほんと?ありがと〜

齋藤:最初のほうに計量がバーン!とくるのが良いですねね。

永田:カッコいいやろ、あれ。

齋藤:カッコいい。「家族社会学って計量が結構すごいんですよ!!」ってのが伝わってきて良かった。

永田:だけどあれ、こないだの家族社会学会でその計量の論文を書いてくれた岩澤さんっていう国立社会保障・人口問題研究所の結婚とか配偶者選択についての素晴らしい論文をめちゃめちゃ書いてくれてる方……引用しまくりです。

齋藤:引用させていただきまくりです!

永田:その岩澤さんに「書いてくれてありがとう〜!」って言いに行ったら「あれ縦書きだった〜」って。

齋藤:確かに。

永田:縦書きだったから、数式が縦になっちゃってた〜って(笑)

齋藤:確かに。私も縦書きめっちゃ違和感あったから、ずっと横書きで書いてて、最後にレイアウト縦書きにしたらめっちゃページ数オーバーしてたっていう(笑)

永田:あるよな〜それ(笑)新鮮よな、縦書き。

齋藤:うん、新鮮。縦書きって1行の文字数多くて、私、ふだん横書きで改行多いから、縦書きにすると文章そのものが変わってくるんだよな。

永田:岩波講座本読んでると、息が続かんのよ。

齋藤:それ、わかる。

永田:あれ、ただ文字数が多いからやんな。

齋藤:そう、そう。あれ縦の文字数が多くて。

永田:あ!息を吸う場所がない!みたいな感じになるよね。

齋藤:そうそう。そしたら最後、岩波講座の家族・親密圏の話して良いですかね?

永田:はいはい。

齋藤:戸江さんの「子育て広場っでなんで和やかな場になってるんやろ?」(『和みを紡ぐ: 子育てひろばの会話分析』)って論考があってね。どうも、子育て広場では「あくまで私の場合は……」みたいな言い方でコミュニケーションが取られているから、ってことらしいんですよ。で、犬の飼い主コミュニティもそういうとこがあって。

永田:ほー。

齋藤:だから私、この話めっちゃわかるわ〜と思って読んでたんですよ。子どもとか愛犬って、ある意味で人質みたいになってるじゃないですか。このコミュニティで雰囲気悪くしちゃったら、もうこの子をここに連れてこられへん!みたいな。それで、普段とは違う遠慮がちな自分が現れて「ちくわがここに来られへんようになったらあかんから……」と思って、当たり障りのない会話をするようになる。

永田:なるほどな〜!良い話だなぁ。それ、戸江さんに話したらめっちゃ喜ぶと思う(笑)。

齋藤:あと、うちっていろんな友達を頼って犬を散歩させてるんだよね。だから、ちくわちゃんのパパ・ママ(齋藤さんたち)とは別に、あなたはちくわちゃんの誰?みたいな人が公園の飼い主コミュニティに現れる(笑)。でも、あなた誰ですかとはきかれないんですよ。おそらく私の友達たちは、私のこどもだとか、いろんな解釈がされてるはずで……でも黙っとこうなと思ってる(笑)

永田:面白いなぁ〜。シェアハウスで育った子どもとかもそうだよね。運動会にシェアハウスの住民がみんなで行くから、誰なのかはよくわからないけど、その子を応援している人が場にたくさんいるわけだ。そしたら「〇〇ちゃんは良いねぇ〜家族がいっぱいいて」とか言われて。

齋藤:あれも家族ですよね。で、ちくわを散歩させてる人たちも、全員私と家族になってるはずです。

永田:成員カテゴリー分析ですね。人をどういう枠として理解するかって話。

齋藤:あとは、野田先生の論文で「なんで日本のご飯や弁当はあそこまで手が込んでいるのか?」って内容のやつ、面白かったですね。

永田:あれ、面白いよな〜。人生相談を過去に遡って分析したっていう論文よね。

齋藤:「ごはんとか弁当ってやっぱり手が混みすぎやよなー」って思いますもんね。

永田:うん、思う思う。子供のために良いことっていうのは、時代と共に変わっていて。高度経済成長期ぐらいまで、夫婦仲が良いか否かっていうのは、子供に直接影響があるかどうかみたいな話とは繋げられてなかったんですよね。高度経済成長期以降から、夫婦関係は良好な方が子供のためにも良いよねって話になってくる。「子供のため」っていうのが、時代によって変わるんですよね。

齋藤:で、弁当の話でそれを説明してるっていう。

永田:野田ちゃんも私ファンでねー、面白いよね。新聞記事を過去に遡って、人生相談から家族の変化を追うっていうのは……。

齋藤:というわけで、『恋愛社会学』と『岩波講座社会学』の両方をお買い求めくださいということで……。

永田:はい、よろしくお願いします(笑)

齋藤:ついでに『入門 家族社会学』もお買い求めください。

永田:そして、齋藤直子先生の『結婚差別の社会学』もよろしくお願いします。

齋藤:ちょっと読んでてしんどくなる本ではありますが……日本ってこうなんだなってめっちゃ感じると思います。

永田:これはまぁ、事例が本当にびっくりすぎて……刺さるよねぇ、おさいさんの本は。

齋藤:自分で喋っててもしんどなってくるんですよ。

永田:うんうん。

齋藤:怒りながら授業してるんで、学生にもそれが伝わって一緒に怒ってるみたいな感じで。やっぱり、当事者の引用された言葉ってエネルギーが強いなぁって思います、私の言葉で説明するよりも、引用をそのまま喋るほうが学生に伝わるから、人の言葉ってすごく強いなぁって。

永田:確かに。という感じで、そろそろ終わりにしていきますかね。

齋藤:そうですね。

永田:本日は、齋藤直子さんと一緒に『恋愛社会学』の第3章の話をしてきました。ありがとうございました〜。

齋藤:ありがとうございました!

永田:次回も、来週の火曜日にスペースをやる予定ですので、また私のタイムラインを見ていただけると良いかなと思っております。というわけで、齋藤直子さんでした〜。

齋藤:さよならー。


齋藤直子(さいとう なおこ)@osai
担当:第3章
大阪教育大学総合教育系特任准教授。専門は家族社会学、部落問題研究、人権教育。
主著に『結婚差別の社会学』(勁草書房、2017)、「交差性をときほぐす──部落差別と女性差別の交差とその変容過程」(『ソシオロジ』66(1)、2021年)など。

木村絵里子(きむら えりこ)ErikoKmr
担当:第4章
大妻女子大学人間関係学部准教授。専門は文化社会学、歴史社会学。共編著に『ガールズ・アーバン・スタディーズ──女子たちの遊ぶ・つながる・生き抜く』(法律文化社、2023年)、『場所から問う若者文化──ポストアーバン化時代の若者論』(晃洋書房、2021年)など。

永田夏来(ながた なつき)sunnyfunny99
担当:本書のねらいと構成、第2章、本書を閉じるにあたって
兵庫教育大学大学院学校教育研究科准教授。専門は家族社会学。主著に『生涯未婚時代』(イーストプレス、2017年)、共編著に『岩波講座社会学 家族・親密圏』(岩波書店、2024年)など。















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