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欧州コロナ事情~ベルギーからの報告
近畿大学の現代新聞論ゼミに所属する2年生は6月、新型コロナウイルスの感染拡大に苦しんだヨーロッパの現状について、トヨタモーターヨーロッパに勤める米川直己さんにリモート取材しました。EUの本部のあるベルギー・ブリュッセルからの報告をゼミ生はどう受け止めたのか。四つの作品を紹介します。
スーパーから小麦粉消える
新型コロナの脅威にさらされたのは日本だけではない。特に欧州諸国における感染拡大は日本以上に爆発的なものだった。都市は封鎖され、人々は身動きがとれない状態に。そのとき、欧州は一体どんな状況だったのか――。ベルギー・ブリュッセル在住の日本人にリモートで話を聞いた。
昨年1月24日にフランスで欧州初の感染者が確認されて以降、イタリアでの感染爆発を皮切りに瞬く間に欧州各地に感染が広がった。ベルギーも例外ではなく、特に2月下旬の「カーニバル休暇」以降、イタリアなどから帰国した数百人がばらまくかたちで感染が急拡大した。感染者の増加に歯止めがかからず、昨年、政府は2度ものロックダウン(都市封鎖)に踏み切ることとなった。
大手自動車会社で広報を務める日本人男性の米川直己さん(50)も、ロックダウンによって生活を制限された一人だ。生活面では、必要不可欠な外出以外は認められず、理髪店でさえ営業を停止していたため半年ほど髪を切ることができなかった。仕事面では、準備を進めていたモーターショーが開催中止となり、在宅勤務に切り替わった。気晴らしに始めたのが料理だ。「本格的なパスタを作ろう」と思い立ち、手打ちパスタに挑戦。「おかげで太ってしまった」と微笑んだ。同じく料理に目覚めた人は多いようで、一時スーパーから小麦粉が消えたこともあったそうだ。
ベルギーでは6月19日現在、国民のおよそ5割が少なくとも1回目のワクチン接種を終えた。レストランでの飲食も5月中旬からテラスに限って認められるようになり、米川さんは「やっと人が戻ってきたと感じる」と語った。休暇中の過ごし方にこだわりを持つ人が多いというベルギー。現在の国民の関心事は、7月~8月のバカンス期間に移動ができるのかということ。政府は早期の接種完了を目指す。
ベルギーは日常を取り戻しつつある。日本もあとに続くことができるか。【2年・中島秀太】
スポーツセンターが遺体安置所に
日本から遠く離れたベルギーで暮らす米川さんにコロナ禍のベルギーについて話を聞いた。
ベルギーとはどんな国か。人口は、約1千万人と東京と同じくらいだ。面積は、約30平方キロメートルと九州より狭い。ヨーロッパ各地に3時間ほどで到着できる利便性のある国だ。首都のブリュッセルには、国際的な機関が多く並び、何か国語も話せる人が多く、フランス語、ドイツ語、オランダ語と様々な言語が使われている。
現在のベルギーでのコロナ感染者数は日本より少ない。2021年の年明けからワクチン接種が始まり、国民の4割は、1回目のワクチン接種を終えている。米川さん自身は、ワクチン接種を2回とも終了している。ワクチンを接種してもコロナウイルスにかかる可能性はあるが、重症化する可能性は、低いため接種する前に比べると安心感を得たという。
ベルギーで初のコロナウイルス感染者が確認されたのは2020年2月。感染は広がり、同年3月、1回目のロックダウンが準備期間もなく開始された。4月のピーク時には1日の死者数が500人にのぼり、遺体の火葬は追いつかず、米川さんの自宅付近にあるスポーツセンターは、仮の遺体安置所となった。店は営業ができず、無言の抗議をシェフが行うほどの厳しい措置だった。感染者数は減少し、ロックダウンが夏に解除されると旅行に行く人が増え、再び感染は拡大した。
2020年11月から始まった2回目のロックダウンでは、お店は宅配などで営業を再開させた。テレワークだが仕事もでき、営業できる業種の範囲も広がった。現在は、措置が大幅に解除され人々の関心は、旅行に集まっている。
今だ出口の見えないコロナウイルスによる混乱の状況は、どこの国でも同じだった。
一刻も早く世界各国で混乱を招いているコロナウイルスが収束し、流行前の暮らしに戻れるように願うばかりだ。【2年・清水遥音】
車両工場でフェイスガード生産
世界中で新型コロナウイルスが猛威を振るっている。しかし、各国の具体的な情報を知る機会は少ない。ベルギー在住の米川直己さんにお話を伺った。
毎日新聞社に勤めた後、2015年にトヨタ自動車に入社し、2019年にトヨタモーターヨーロッパに出向した。ベルギーの首都、ブリュッセルに住んで2年と少し。ベルギーはヨーロッパの中心にあり、各国にアクセスしやすく、重要な拠点の1つだ。
各国の行き来が盛んなヨーロッパは、コロナウイルスの感染拡大も早かった。ベルギーでは昨年2月に初の感染者が確認され、翌3月18日にはベルギー全土がロックダウンとなった。買い物は食料品など生活必需品しか許されず、外出していると警察に目的を聞かれ、違反なら罰金を取られる。厳しいようにも思えるが、強制力がなくても外出を自粛する日本人と違い、欧米の人々は強制されないとルールを守るのが難しいようだ。現在はレストランが営業再開するなど、少しずつ制限が緩められている。
トヨタでは、ロックダウンにより普段の業務ができなくなった。自主的に集まった社員が社会貢献活動を始め、それをホームページや各メディアに広報するのが米川さんの役割だった。車両を生産できなくなった工場は、フェイスガードや人工呼吸器部品を生産した。販売現場はマスクの調達に動き、事務職は社会貢献活動の広報やオンライン説明会を行った。
先日、米川さんは2回目のファイザー製コロナワクチン接種をした。1回目にはなかった副反応が起き、40度の発熱があったが回復した。コロナパスポートが導入されればワクチンは必須になるので、接種できて一安心という。再びヨーロッパ各国を行き来できるようになることを期待している。【2年・坪倉優衣】
テラスで飲食、戻る日常
ヨーロッパのコロナウイルス事情について、ベルギー在住のトヨタモーターヨーロッパで広報課長を務める米川直己さんに話を聞いた。ベルギーはフランス、ドイツなどに面し、2019年時点での人口は1146万人。東京都と同程度である。
ベルギーは2020年2月6日に初の感染者を確認。同年2月末からのカーニバル休暇の影響を受けて感染は拡大。政府は3月18日から全土に1度目のロックダウンを発令した。4月に第一波のピークを迎え、1日の死者は500人を上回った。火葬が追い付かず、地域のスポーツセンターが遺体安置所になる事態も発生したという。
米川さんの勤めるトヨタモーターヨーロッパもロックダウンの大きな影響を受け、ディーラーの営業は禁じられた。車の販売ができなくなったことを受け、工場も自動車の生産を停止。工場には自宅待機の指示が出たが、政府の打診を受け、フェイスガード、人工呼吸器部品の生産などを始めた。各国の大使館と連携し、中国から調達したマスクを感染状況が深刻だったイタリアに送った。米川さんはこうした社会貢献活動の広報活動などに励んだ。
2020年夏、米川さんはチェコのプラハまで遠出した。その程度まで感染は収まったが、9月以降再拡大。1日当たりの新規感染者が2万人に達する日もあり、2度目のロックダウンとなった。
2021年は3月~4月にイギリス由来の変異株が流行した。1日当たり5000人超の感染者を出したが、ワクチン接種が進むに従い感染者は減少。ベルギー国民の4割が1度目のワクチン接種を終えている状態という。米川さんも2度目の接種を終えた。
ベルギーではワクチン接種が進んだことにより、少しずつ日常が戻りつつある。テラスでの飲食も解禁され、町を歩くと感染の収束を感じると語った。【2年・水野智博】