ニュースな人~NSCに入学した近大生
近畿大学総合社会学部の現代新聞論ゼミに所属する3年生、岡泰聖(おか・たいせい)君=写真=がこの春、お笑い芸人やタレントを育てるNSC(吉本総合芸能学院)に入学しました。なぜ、お笑いの世界に足を踏み入れたのか。学生生活と両立できるのか。一学年下のゼミ生13人がエピソードや経歴を根掘り葉掘り聞き出し、新聞の「ひと」欄のように、ニュースな人物にクローズアップした800字の原稿にまとめました。そのうち四つの作品を紹介します。
背中押した広告出演
「なにかしなきゃいけない、という心の一端からNSCへの入学を決めた」と語る、近畿大学3年生の岡泰聖さん。大学生活とNSC(吉本総合芸能学院)の二足の草鞋を履く先輩に今回お話を聞かせて頂いた。
京都府出身で現在20歳。小さい頃から率先して手を挙げる性格だったという。昔からお笑いは好きで、輪の中心でみんなを笑顔にさせていた経験が今に繋がっているのだろう、話す様子から壁をつくらずに誰とでも気軽に話せる親しみやすさを感じた。
日々の生活に達成感や充足感を求め、大学ではアイスホッケー部に入った。しかし2年の途中で辞めた。この生活では高校時代と何も変わらないと気付いたからだ。同じレールの上を歩くことに満足が出来ず、悩んだ末に退部を決めた。
そしてこの春から何をしようかと自分を見つめ直していたときに思い浮かんだのがNSCだ。実はインターンで大学の広報部に行った際、オープンキャンパスの広告に出演した岡さん。準備から撮影まで関わったその経験がNSC入学を決めるにあたって背中を押すきっかけになっていた。卒業に必要な単位もほぼ取り終え、確実に両立ができると計画を立ててから入学を決意した。親は「自分に投資するのは良いことだ」と応援してくれたという。
入学して一番よかったことはいろんな世代の人との繋がりができたこと。まだ大学生だから大きな夢を掲げなくとも経験の一つになればいい。上手くいかなかったら就活に切り替えればいいという考えだ。だからといって中途半端に取り組むことはなく、今の目標はラストライブで優勝することである。入ったからにはこの1年はお笑いに力を入れるつもりでいる。
大学生の「なにかやらなきゃ」という気持ちを糧に次々と行動する姿、そして、大学生“だから”できないのではなく、“だからこそ”できるという考え方でチャレンジしていく様子は、自粛を言い訳にしてしまう自分に刺さった。貴重なお話が聞けたことをとても嬉しく思う。【2年・城山あすか】
目立ちたがり屋だった
NSC(吉本総合芸能学院)とは、吉本興業が「おもしろい人」を育成する目的で設立した学校で、ダウンタウンや渡辺直美ら、数々の有名タレントを輩出してきた。そんなNSCにこの春、現役の近大生がお笑い芸人を目指して入学した。
小さい頃から活発な性格だったという岡さん。真面目で目立ちたがり屋。「学校行事で手を挙げて決めるものにはたくさん手を挙げた」。高校ではラグビー部、大学ではアイスホッケー部に所属。達成感や充足感を求め、日々練習に打ち込んだ。
転機は大学2年のときだった。所属していたアイスホッケー部を退部。活動は楽しかったが、「高校の時と変わっていない」「もっと自分はできるんじゃないか」と感じたためだった。部員や先生からは引き止める声もあったが、苦悩の末、退部を決意した。しかし、「やりたいこと」はまだ見つかっていなかった。アイスホッケーというライフワークを失い、だらだらと過ごす時間が増えたが、「何かやらなきゃいけない」という強い思いが自身を駆り立てた。
社会人サークルなどを転々とし、半年ほどたったころ、ふと「NSCに入ろう」と思い立った。理由は特になかった。ただ、「売れる」という一つの目標に向けて、いろいろな世代の人たちと切磋琢磨できる環境に魅力を感じたという。
大学との両立には自信を持つ。2年生のうちに、必要な単位はすべて履修を済ませており、今年度の講義は週に一回のみ。週に四回あるというNSCの授業とも十分両立ができる。空いた時間で就職活動にも取り組む。
目標は、「NSCを首席で卒業すること」。既にコンビを組み、最近は「ネタ見せ」と呼ばれる実践的な授業に向けて、ネタ合わせに励んでいる。目指す芸人は「NON STYLE」や「かまいたち」。自身が昔から「いじられキャラ」であることを生かして、「自分たちにしかできない漫才の型を作っていきたい」と意気込んだ。【2年・中島秀太】
何かやらなきゃいけない
ユニークな展開をする近畿大学の広告に抜擢され、今年の4月からNSCに通う岡泰聖さん(20)。お笑い好きではあるが、NSCに入学するとは大学入学時には1ミリも思っていなかった。そんな彼がなぜお笑いの世界に足を踏み入れることになったのか。
「心の中にある、何かやらなきゃいけないという“強迫観念”の感情からNSCに入った」
この言葉が彼の性格を物語っている。「生産性があることをしたい」「達成感や充足感が欲しい」と語るように、部活動や文化祭の模擬店、体育祭の出し物など、立候補できるものはすべて立候補してきた。
大学でも体育会に所属しているアイスホッケー部に入部した。しかし、「やってることが高校の時と変わってないな、自分はもっと何かできるんじゃないか」という思いから2年生の途中でやめてしまう。退部から半年ぐらいは何をやろうか迷い続けた。東大阪から実家のある京都まで自転車で帰ったりもした。怠惰な時間が多いからこそ、その時間を自分と向き合い、見つめ直す機会とした。「それでも心の根底にあったのは『何かやらなきゃいけない』という感情」。導き出した答えはNSCだった。
「年下から60代ぐらいの人まで、いろいろな世代の人が集まり、皆がひとつの目標に向かって頑張っている。そんな環境に身を置き、挑戦できるのは面白い。これまでいろいろなことに挑戦してきたけど、やらなきゃよかったと思ったことは一度もない。これもいい経験になると思う」
達成感や充足感を求め、これまで多くの挑戦を繰り返し、自分を信じて歩んできた彼の言葉は力強かった。
「NSCでの目標は首席で卒業することです」
今はこの目標に向かって、ライバルに囲まれながら研鑽している。お笑い芸人になるということは彼の人生のひとつの可能性に過ぎないが、もしその未来に行き着いたなら、日本中に笑顔を届けていることだろう。 【2年・萩原翔】
首席で卒業、本気である。
近畿大学総合社会学部社会・マスメディア系専攻3年生の岡泰聖さんは、この春NSCに入った。NSC(吉本総合芸能学院)とは吉本興業が運営する「おもしろい人」を育成する学園。卒業後の進路は芸人以外にも多岐にわたる。なぜ大学生活の傍らNSCに入学することを決めたのか。「何かしないといけないという感情の一端でNSCにはいったというか…」。サッカーのユニフォーム風の服に身を包んだ岡さんの語りは自信なさげだった。
入学当時はNSCに入るつもりは全くなかったと語る岡さん。幼少期から、文化祭や学級委員など「みんなが手を上げないとこ」で手を挙げてきた。常に「何かやりたい、という強迫観念」に駆られていたと語る。大学生ではアイスホッケー部に入ったものの、二年生の途中で辞めた。部員には引き留められたが、アイスホッケー部をやめた後の「怠惰な半年間」は自分を見つめ直すきっかけになったという。様々な人とかかわりたい。高校と違うこと、大きなことをしたい。そんな思いから半年間の葛藤の末、NSC入学を選んだ。近畿大学の広告に出演したことも大きい。NSCでの目標は首席で卒業すること。本気である。
「リスクなどをあまり考えないから思い切ったことができるのですね?」と筆者が問うと、「リスクをめちゃくちゃ感じてるからいろいろしているんだと思うすよ」と返答があった。リスクを感じるのは、就活においてという側面もあるがそれだけではないという。大学生活においてこれだけ時間があるのに、授業しか受けず、やりたいことをしないこと、そのものをリスクだと考えていると岡さんは語った。
しかし、やってみたいことは、いつもあふれているわけではない。やりたいことの選択肢を頭の中で作るそう。「今回なら、演劇サークルとか、NSCとか」。頭の中の選択肢から最終的には直感で選ぶ。一つのことを続けることがすべてではない。向いてなかったのなら辞めればいい。大事なのは、「やり続ける」ことだと語った。【2年・水野智博】