コロナ禍にオープン! 近大生が営む麻婆豆腐ラーメン店「jinniyah/奈KAMA」
コロナウイルスの感染拡大は、多くの飲食店を苦しめている。そんな中、2020年10月、奈良市内に大学生が麻婆豆腐ラーメン店をオープンした。なぜ、この時期に店を開いたのか。店長を務める近畿大学農学部2年生、西奈槻さんに話を聞いた。【2年・八上礼央】(2021/03/20記)
◇店を始めるきっかけ
元々、人に希望や勇気を与えたい気持ちが強かったという西さん。彼は小学6年生からドラムを始めた。自分の音楽を通して「元気や勇気をもらった」と言ってもらうと達成感が味わえる。そうして、人のためになりたい、人を動かしたいという気持ちが芽生えた。
高校時代は即席でバンドを組んで、さいたまスーパーアリーナや幕張メッセでパフォーマンスをしたこともある。世界一のチームのオーディションを受けるため、渡米したが、自分の音楽との圧倒的な実力差を目の当たりにした。音楽で人に希望を与えることは難しい。ミュージシャンになることを断念し、他の形で人の心を動かそうと考えた。
大学に入り、起業家を目指し、経営学を勉強した。2年生の昨年9月、親から紹介されたラーメン店のオーナーから、休業中の店をリニューアルオープンして引き継がないかと頼まれた。「こんなチャンスはない」と思い、料理が得意な同じ農学部2年生の奥野亮太郎さんを誘い、1カ月後の10月、「学生が創る店」をコンセプトにした「jinniyah/奈KAMA」(じんにいや/なかま)をオープンした。
=店長の西奈槻さん(左)と料理長の奥野亮太郎さん
◇味で勝負
受け継ぐ前の店名が「jinniyah」。それに、自分の名前の「奈槻」の「奈」、カマキリが大好きな奥野さんのあだ名である「カマキリ」から取った「KAMA」を付けたのが、店名の由来だ。「仲間」という意味もかけたという、そのネーミングセンスから学生らしさを感じた。
リニューアルオープンするにあたり、テーブルや椅子のほか、キッチンを改装した。約30万円がかかり、それまでのアルバイトで貯めていたお金を使った。学生にとって30万円は大金だ。やると決めたら妥協したくないという彼の強い気持ちが表れている。西さんが店長、奥野さんが料理長となり、ほかにアルバイト2人の計4人で切り盛りしている。
=リニューアルした店内。テーブルとカウンター合わせて約20席ある。
麻婆豆腐ラーメンをメインにしようとしたきっかけは意外なものだった。奥野さんの得意料理が麻婆豆腐だったからという。西さんが調べたところ、奈良県内に麻婆豆腐ラーメンの専門店がなかったこともあり、「麻婆豆腐ラーメン専門店」と銘打った。中国の香辛料をふんだんに使い、本格的な四川麻婆豆腐ラーメンに仕上げたという。学生だからと甘えず、味で勝負している。
西さんは、他のラーメン店とのコラボレーションにも力を入れている。二郎系ラーメンの人気店と開発したその日限りのメニューを提供するなど、積極的だ。
オープン当初や他店とのコラボの時には、多くの客が訪れるが、通常営業になると客足が減っているのが課題だ。学生の得意分野であるSNSの発信に力入れている。
=シセンマーボードウフラーメン(950円)
◇遊ぶ時間がなくなった
店を始めてから以前に比べて、遊ぶ時間がほとんどなくなった。しかし、自分のやりたいことができているので満足しているという。そう話す声は明るい。この1年間、大学の授業はオンラインだった。通学時間などがなくなり、時間に余裕が生まれ、学業と営業との両立ができていた。4月から対面授業に戻ると、もっと忙しくなりそうだ。それでも妥協せず、頑張って営業し続けたいという。
<西さんの1日(平日のオンライン授業時)>
8:30 起床
9:00~16:00 授業
17:00~18:00 仕込み
18:00~21:00 営業
22:00~23:00 帰宅、晩ご飯、入浴
24:00~27:00 他店とのコラボのミーティングや取材対応、その他作業
◇行列のできる店として奈良を盛り上げたい
コロナ禍という逆境に立ち向かい、学生ながら起業するという道を選んだ西さん。音楽から食へと変わっても、人の心を動かし続けたいという信念は変わらない。最後に今後の目標を聞いた。
「お店の前に行列を作り、奈良を盛り上げたい。学生が創った行列の店として、奈良に自分の名前を残したい。卒業する頃には他の大学生に受け継ぎたい」
=住宅街の中に隠れ家のようにたたずむ店。一軒家だ。
jinniyah/奈KAMA
奈良市南城戸町28-34
平日 18〜21時
土日祝 11〜15時/18〜21時
木曜定休
https://jinniyah-nakama.owst.jp/