2度目の緊急事態宣言。人の意識はどう変わったのか。

 新型コロナウイルス感染拡大に伴い、今年1月、私が住む大阪は、2度目の緊急事態宣言が出された。府は不要不急の外出自粛、飲食店に対して20時までの時短を要請した。それでも出歩く若者や20時以降も営業を続ける飲食店が多くあった。同じ緊急事態宣言下でも、昨年5月頃はゴーストタウンと化していた。外出や深夜までの営業が決して悪いわけではない。でも、なぜ、感染のリスクをおかしてまでそういった行動をとるのか。前回の緊急事態宣言の頃と比べて人々の意識はどう変わったのか。知人たちにいくつかの質問をしてみた。【2年・岡野忠史】(2021/03/21記)

◇断ると関係が途絶える
 はじめに話を聞いたのは、インスタグラムのストーリーズで酒の席やクラブのような場所で遊んでいる様子を投稿している中学の同級生だ。高校を卒業してから建設業に従事している。彼にはまず、外出自粛が求められる中、なぜ酒の席に参加するのかを聞いた。彼は「誘われたから」と答えた。
 様々な場面で、会う機会が減り、対人関係が薄れてきている。彼は「希薄になりつつある友人関係をつなぎ止めるのが、遊びやお酒の席であり、それを断ると関係も途絶えてしまうかもしれない」と話した。私は、新型コロナウイルスは怖くないかとも聞いてみた。彼は「かぜと変わらない症状なので、それほど恐れてはいない」と答え、「万が一かかっても自己責任。他人に迷惑をかけなければいいのでは」と続けた。

 「でも、感染すると家族や医療従事者、保健所の方に迷惑がかかるのでは」と私が疑問をぶつけると、「家族とは別々に暮らしているから問題はない。医療従事者や保健所の人には確かにお世話になるかもしれないが、彼らはそれが仕事であり、それが嫌ならやめればいいのでは」と返した。私は憤りを覚えた。懸命に私たちのために働いている人に対して、あまりにも失礼な言い方で、配慮に欠ける発言だと思ったからだ。

◇2軒目の店を探している人がいる
 今度は、居酒屋の客引きバイトをしている大学生に話を聞いた。小中学校の野球部の後輩だ。集客状況を聞くと、彼は「緊急事態宣言後、人の往来は少し減ったが、声をかけると、お店に来てくださるお客さんは変わらずいる」と話した。営業しているなら応援したいといって店に入る客もいるという。「以前は客引きしても無視されたり断られたりすることが多かった。でも、やはり、お客さんは2軒目の店を探している。自分たちキャッチについて行けば確実にやっているお店に行ける。だから、多くの店が閉まる20時以降は客引きが成功しやすくなった」と説明してくれた。

◇生活のためやむを得ない
 この後輩を通じて、夜8時以降も営業を続ける酒類提供店の方に話を聞いた。要請に応じずに営業を続けるわけを尋ねると、「20時までだと店が成り立たないから」と話した。「自分たちのような居酒屋は1軒目から行くような店ではないので、20時までだと客の入りが少ない。国や大阪府には申し訳ないが、生活のためにはやむを得ない」という。20時以降であれば、来てくれる客がいることも理由の一つだそうだ。「営業を続けてもお客さんが来ないのであれば赤字になるためやらないが、店を求めているお客さんがいる。そういった方々のためにも自分たちは営業を続けないといけない」とも話した。

◇自制心と他人を思う気持ちを
 話を聞いて共通していると思ったのは、新型コロナウイルスに対する慣れである。昨年4~5月の外出自粛時期はウイルスがどういうものかわからず、恐れる人が多かった。しかし、現在では若者は感染しても重症化しにくいとか、症状がかぜと似ているといった情報が広まり、ウイルスへの恐れが薄れている。
 コロナ禍から1年が経つが、自粛社会以前の生活をいまだに取り戻せていない。「これ以上、時短の要請に従い続けると、ウイルスでなく経営で自分の首を絞めることになる」と居酒屋の店主は話していた。自粛を強いられる生活でため込んだストレスを発散できる場がないことも出歩く人が増えた要因だろう。
 ひとは誰もが、自分が一番大切であり、自らのために行動しようとする。それが自分さえ良ければという考えとなり、感染拡大を招く一因になっているのではないか。自制心、そして他人を思う気持ち。これがコロナ禍の終息に向けての大切なことかもしれない。