二十歳の頃2024(11)幼なじみのお母さんにきく

インタビューをしたのは、私の幼なじみのお母さん。1973年生まれ、現在は小学校の先生として働き、3人の子どもがいる。大学時代、文学部の心理学科に所属していた。(聞き手・福永紗子=2年)

――二十歳の頃は何をされていましたか

1浪したから、二十歳を迎える年(1993年)に大学1回生になった。

――当時、女性の4年制大学への進学率が低いのですが、進学に関してご両親から反対はありましたか

全然反対されなかった。母親も4年制の大学に通っていたから、反対はなかった。「やりたいようにやったら」ということで。大学でも男女の割合は同じような感じやった。文学部やから女子が多かったんちゃう。

――心理学科では何を学ばれていましたか

学習心理とか脳科学っぽいのとか、基礎の心理学をやっていた。やたらと計算させられたり実験したりと、ちょっと理系の感じ。でも、楽しかった。何になりたいというより、それそのものに興味があったから、それを活かして仕事することまでは考えていなかったかな。専攻が学習心理学で、ラットを使って、迷路に餌を置いて、ルートを学習させていた。文学部なのに白衣を着て勉強していました。友達の実験台にもなって、研究室の仮眠スペースみたいなところに日中やけど寝かされて睡眠時の脳波を調べられたりした。

――小学校の教諭になってから、大学で学んだことは活かせていますか

仕事に就いてからの研修で、発達心理とか心理学の基礎でやったことがいっぱい出てきて、「やったなぁそれ、あの時、勉強した」って。全く役に立っていないわけではないと思う。

――大学1回生で記憶に残っていることはありますか

ひたすら友達と遊んでいたかな。語学の授業は、名前の順の近い人が同じ授業に入れられていたから、出席番号の近い順の人たちが集まって仲良くなって、遊びに行ってたかな。勉強ももちろんするけど、旅行したりとか。それが楽しかったな。4回の時、卒業論文の実験を途中で放り出して、9月くらいにいったん休憩みたいな感じで、仲良しメンバーの何人かで「グアム行こー」となって、みんな卒論ほっぽらかしてグアムに行った。勉強よりも楽しかったことしか覚えていない。芝生で昼寝したりとか。

――二十歳になったらやりたいことはありましたか

特になかった。高校の時点で、そのうち大人になったら結婚をして専業主婦になるって思っていた。今、それ言うたら笑われんねんけど。「絶対向いてないやろ」って。

――就職活動はされましたか

大学在学中の4年間、塾でアルバイトをしていて、その塾に「そのまま来てくれへんか」と言われた。ほぼ就職活動はせず、卒業後1年間、塾の契約社員で働いていた。

――教えることは好きだったのですか

「子供が嫌いや」と高校の時に豪語していた。私がこの仕事に就いた時、高校の同級生からは「あんなに嫌いや言ってたのに」と言われる。塾でバイトしていたのは、教えるのが好きというよりも、お金を稼ぐため。塾は1年でやめて、市の施設の学童の指導員を5年くらいやった。その後、「小学校に不登校の子と関わる仕事があるねんけど、行けへん」と誘ってもらって、そこで1年間やった。

――不登校の児童と関わる仕事はどのような内容でしたか

朝、家に行って、ピンポーンして「起きてたー?」みたいな。担任の先生は忙しいから、そういうことに動ける人員として、「モデル事業みたいなんがあるねんけどやってみる」と言われて、「やります」って行かせてもらった。職員室に席をもらって、会議にも出ていた。朝は児童の家を訪問していた。

――小学校の教師を志したのはいつ頃ですか

そこからかな。その時の小学校の校長先生や教頭先生に「教師になったらええねん」と言われて、「やってみてもいいかな」って。

――教員免許を取ると決めてから取得までどのくらいかかりましたか

最短1年で取れるやつをね、3年半ぐらいかけて免許を取った。(大学では)教員免許に必要な単位を何一つとっていなかった。この子(私の幼なじみ)が生まれる半年くらい前から勉強を始めた。生まれてからも(勉強を)やり続けていた。

――話題が戻りますが、就活をしている友達を見て焦りはなかったのですか

全然。する気なかったんやろね。それで何とかなってしまっているから問題やな。ちゃんとしたほうがいいんやと思います。そのあとでね、やりたいことが見つかったら、それはそれでいいんやろうけど。私はたまたまやりたいことが見つかったのか、出会ったのかで、今こうやって仕事をさせてもらっているからいいけど。

――就活が早期化しています。今の大学生に思うことは

かわいそうやなぁと思う。私らの時、ほんまに4回生になってからやったし、それまではほんまにがっつり学生を楽しめる。そんな先のこと、誰が気にしてたんやろ、あの時。看護師になりたいから看護の学校に行くとか、教師になりたいから教育大に行くとかやったらわかるんやけど、大学は仕事を探すために行くもんなんかなあ。そんな早いうちから就職活動をさせられる風潮になってんのは、かわいそうやなあ。大学生を楽しまれへんなみたい。

――ご自身の経験を踏まえて今の大学生に言いたいことは

今の学生とは違うから、「ほんま大変やな」としか言葉が出てけえへんねんけど、仕事に就くためだけに大学生活を過ごすのはもったいない。その時にしかできひん、その時に楽しいことをしとかへんかったら。楽しかったという体験はやっぱり、自分を悪いようにせえへんでしょ。嫌なことなんて、これからなんぼでもあるんやから、楽しいことで「エネルギーをためて」かな。楽しいことをためて、大人になったらそれを切り崩さなあかんかもしれんけど。(楽しいこと)やっとかな、せっかくの大学生やのに。

<インタビューをして感じたこと>
大学生という時間は特別であると感じた。特に「楽しむ」ということを忘れてはいけないと思った。楽しかった経験は、今後の人生を良い方向にもたらしてくれるのだろうと思いました。当時と今の大学生とでは、大学に対しての考えや大学での過ごし方が変わってきていると思い、大学の存在意義について考えさせられました。予測できない出会いやささいなきっかけで人生が変わることもあるとインタビューを通して感じました。そういった出会いも大切にしながら、「今」を生きていきたいと思いました。この夏、幼なじみと旅行するので、そこで「エネルギー」をためようと思います。(福永)