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東京#10

初めて僕を担当する美容師は軒並み同じ言葉を言う。
「パーマかけてますか?」
僕は自嘲気味に癖っ毛なんですと返す。
すると美容師は必ず「これくらいゆるくかかってるのが流行なんですよ」と言ってくる。僕は少し驚いた後、知らなかったと返す。勿論、嘘である。何故ならこのやりとりをかれこれ5年間やっているからだ。
僕は5年間、無知を演じている。そして美容師の言う事が本当であれば、髪の流行はここ5年変わっていない。
そろそろ、僕の癖っ毛は殿堂入りするだろう。
ここにおいて悪者は誰だろうか。無知を演じる僕か、付け焼き刃の褒め言葉を言う美容師か。それとも何も変わらない流行か。いや、この一連の流れは全て最善の選択だ。失礼をしたかもしれないと思った美容師が「流行ってるんですよ」と言い、それを受けた僕が美容師の気分を害さないよう「知らなかった」と言う。
そう考えると、とても優しいやりとりのように思える。ただ、まどろっこしい会話には変わりはないので、行きつけのお店を作るべきではある。そろそろ髪を切りにいかなければ。次はどこの街で切ろうか。そして、また言うんだろうな。
「これ、癖っ毛なんです(笑)」

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