東京#11

昨日、友人Aとじゃんけんだけで新宿から自宅に帰れるかを実験していた。僕が勝てば右、友人Aが勝てば左、あいこは真っ直ぐというルールだ。後退だけは許されず、どんなに帰り道とは真逆になっても僕たちは進むことしか出来なかった。信号のたびにジャンケンをし、その結果に一喜一憂を繰り返す。気がつけば2時間近くたち、挙げ句の果てには丸の内線で池袋に向かっていた。正直僕たちは帰りたかった。その意思は顕著に互いの表情に表れていた。二駅過ぎた頃、僕たちふらっと次の駅で降りた。「もう僕たちは自分自身を裏切ったから、帰るしかないよ」
僕たちのチキンレースは突如として終わりを告げ、僕たちはその場で解散した。帰り道、誰にも縛られず自由に進める幸せを僕は噛み締めながら歩いていた。

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