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東京

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#友人A

東京#15

東京#15

唯一、嫌われても良いと思っている人がいる。
友人Aとカテゴライズしている彼は、本当に酷い人間だ。アイロニストな彼は世界のあらゆる事を小馬鹿にしている。しかしながら、彼なりの芯はしっかりと通っているので、ある意味論理的というか、話していて飽きることはない。

僕は他人に好かれたいと思っている。それは自分の本性を知っているからで、それを見せてしまう事で、嫌われてしまうのではないかと酷く恐れている。

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東京#11

昨日、友人Aとじゃんけんだけで新宿から自宅に帰れるかを実験していた。僕が勝てば右、友人Aが勝てば左、あいこは真っ直ぐというルールだ。後退だけは許されず、どんなに帰り道とは真逆になっても僕たちは進むことしか出来なかった。信号のたびにジャンケンをし、その結果に一喜一憂を繰り返す。気がつけば2時間近くたち、挙げ句の果てには丸の内線で池袋に向かっていた。正直僕たちは帰りたかった。その意思は顕著に互いの表情

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東京#1

東京#1

何かをしなければならないと言い出したのは、友人Aだった。暖色系のライトが灯る居酒屋で、僕は目の前のAの持論を聞いていた。
「俺たちは今は芽が出ないだけで、何かを成し遂げられる人だと強く思い込んでいる。それ故に、何も結果を残せていない現実から目を背け、自分よりも下の人間を探しては馬鹿にする事で、自尊心を守ってきていた。俺らは、何も生み出していない。何も結果を残していない。ただ、平穏な日常を過ごしてい

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