【レビュー】久保を活かし切る Copa del Ray ラウンド16 レアル・ソシエダ - ラージョ・バジェカーノ
スペイン国王杯(コパデルレイ)の4回戦目。
レアル・ソシエダはホームにラージョを迎える。
コパデルレイは下位のリーグに所属するチームがホーム扱いとなる規定があるが、今回はともに1部所属ということで抽選により決定。
ラージョのホームは縦も横も5mほど狭く、かなり勝手が異なってくる。加えて、ソシエダは3日前にビジャレアル戦を終えたばかり。
なので、今回ソシエダがホームチームに選ばれたのは幸いだった。
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チームコンディション
ベッカーが復帰。
ザハリャンは足首の経過が良くないようで、またもお休み。
スターティングメンバー
中3日ながらターンオーバーは無し。
インテリオールにはオラサガスティを起用。
試合結果
3ー1
得点者:オヤルサバル、オラサガスティ、セルヒオ・ゴメス
チームスタッツ
支配率は高くないが、自陣でのパスよりも相手陣内でのパスの方が多い。ビルドアップにこだわらず、縦に早い展開を志向していたことが表れている。
シュート位置
前半
後半
試合内容
久保を活かし切る
ラージョの攻撃時4−2−3−1に対し、ソシエダは左右非対称の形を用意してきた。
まず久保とスビメンディ、両SBアランブル&アイエンはマンツーで固定。
CBスベルディアとアゲルドでCF11番エンテカを見ながら、1人余らせる。
後ろで1人余らせるということは、前は1人足りない。
なので4人(オヤルサバル、バレネチェア、オラサガスティ、スチッチ)で5人をカバーする。
まず右CB5番アリダネに、オヤルサバルがプレス。
この時バレネチェアは右SB20番バジウのマークを離し、1列下がる。
もしラージョがキーパーに戻したり、もう片方のCB24番ルジューヌにパスを出した場合はオラサガスティが1列上げる。
オラサガスティに連動してスチッチがスライド。バレネチェアは右SB20番バジウのマークを捨てて、新たに4番ディアスをマークする。
この時ラージョとしては、左サイドの22番エスピノには久保がマンツーでついているため、左サイドが使いづらい。逆に右は空いている。
なので右SB20番バジウに出す。
するとソシエダは、また中盤3人のスライドを始める。
ここでバレネチェアは右SB20番バジウに対し、横を切って縦パスを促す。
うまいこと数的有利なエリアへ誘い込む感じ。
いつものようなハイプレスよりもボールを奪える位置は下がってしまうものの、数的有利なエリアで奪える分、安定感という面では増すように思える。
ただ、この守備設計の最大の目的は守備面での安定感ではなく、おそらくは久保の守備負担を軽減することにある。
見てわかる通り、ハイプレスを掛ける局面で久保の位置が動いていない。
反対の左サイドにボールを誘導する配置や、バレネチェアの横切りなんかを見ても、久保をなるべく守備に絡めないようにという意図が見える。
しかも久保は、マークする左SB22番エスピノがオーバーラップした時に必ずしもついていくわけではない。
カウンターを狙う局面では、追うのをやめて前に残る。
ソシエダは後ろで1人余っているので、久保が戻ってこなくても問題ない。
久保が戻るよりも、そのタイミングでボールを奪えればフリーの久保を使ってカウンターを打てる、というメリットの方がむしろ大きい。
守備面での負担が減った分、久保はカウンターで、あるいは1対1or2の局面でしっかりと攻撃を牽引し、圧倒的な存在感を見せた。
さすがという他ない。
後半にソシエダが見せた変化についても、少し触れておく。
すでに2−1のスコアだったこともあり、後半は負けていたラージョが前掛かってきた。
ソシエダは久保の位置を少し下げ、4−1−4−1のような形へシフト。
それでもマークの原則は変わらない。
変化があったのは、ボールが中盤4人(バレネチェア〜久保)で形成するセカンドラインを越えた時。
オヤルサバルが右に流れてカウンターの起点になれるようにスタンバイ。
これにより久保の役割も変わる。
前半までのようなカウンターやサイドでのプレーに加えて、ピッチ中央でゲームメイクするようなシーンが増えた。
こちらは後半25分のシーン。
オヤルサバルが右に流れ、久保はわりと自由に動いている。
後がないラージョがプレスを強めてくるであろう中で、右WGでの突破よりも、ポゼッションとゲームメイクに久保の役割をシフトさせたように思う。
久保の守備負担を軽減し、オフェンス力というストロングポイントを全面に押し出したゲームプランだった。
補足
久保の守備負担を軽減した結果は、出場時間にも表れている。
久保は3日前に行われたビジャレアル戦で長く出ていたにも関わらず、この試合でも試合終了間際までプレーしていた。(というか、交代したのはおそらく久保1人に客席からのスタンディングオベーションを与えるため)
勝敗がすでに決まっていた中で、疲労を考慮した選手交代が多いソシエダにあってはかなり珍しい采配に映る。
それくらい、守備での負担が少なかったということだろうか。
コーナーやフリーキックのキッカーを任せられていたことを見ても、チームの中心選手として格別の期待を寄せられていることが窺える。
この先も過密日程が続く中、もしかしたらこの試合のような久保を活かし切る起用法が増えるのかもしれない。
補足2
ひたすら久保の話をしてしまったが、どうしても一言書き残しておきたい。
オラサガスティが素晴らしかった。
追加点となったミドルも見事だったが、守備面での貢献もひとしおだった。
上下にスライドをする分、バレネチェアやスチッチよりも運動量とスプリントを要したはず。
献身的なそのプレーは、もしかしたらブライス以上にこの試合のプランにマッチしていたのかもしれない。
なお、オラサガスティはバレネチェア&スチッチとともに、後半25分近くで仲良く交代。こちらはとても納得のいく采配だった。
今後の話
これにてソシエダは、直近10試合で8勝1分1敗。
17得点3失点、クリーンシート8の超好成績を残している。
シーズンの折り返し地点でリーガは7位、ELは12位とまだまだ上が狙える位置につけている。しかもコパデルレイも順調に勝ち上がってるんだから、もう文句の付けようがない。
しばらくは過密日程が続くが、調子は良さそうだし、まだまだ勝ち星をあげてくれそうな感じが漂っている。
次のコパデル準々決勝は現地時間2月5日(水)、6日(木)の予定。
どうかマドリー、バルサ、アトレティコとの対戦はもうちょっと先でお願いします。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。