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【レビュー】久保とセルヒオ・ゴメスのプレーが合う訳 第3節 レアル・ソシエダ - アラベス

ソシエダは前節エスパニョール戦で今季初勝利を収めた。今節はアラベスをホーム、アノエタに迎えてのバスクダービー。

ちなみに7月のPSMでも対戦しているが、ユーロとオリンピックでだいぶメンバーが抜けていたこともあり、結果も内容もアラベスに持っていかれた。


前節、エスパニョール戦はこちらから

PSMのもあります
ほとんどサンセの話してますが



チームコンディション

  • 前節に負傷したアリッツが登録外。

  • センターバック不足のため、調整中だったスベルディアを間に合わせる。

  • バレネチェア、ザハリャンは引き続き不在。

  • メリーノのアーセナル加入が正式決定。

メリーノさん、今までありがとう!これからも応援しています。



スターティングメンバー

アリッツに代わりパチェコを起用。トゥリエンテスのところにセルヒオ・ゴメスが入り、右WGには久保を先発。この形を待っていた。

アラベスはわりと様変わり。
ハビ・ロペスとゴロサベルの両SBが抜け、ラファ・マリン(CB)にリオハ(左WG)、サム・オモロディオン(CF)も抜けた。
アラベスの核となるグリディ、ゲバラはそのまま。2人とも元ソシエダなのが少し嬉しい。



試合結果

1ー2

得点:ブライス・メンデス



チームスタッツ

laliga.comより


個人スタッツ

試合への影響度が見える以下の5項目をピックアップ。

・ xG (Expected Goals / ゴール期待値)
シュートを打った時に、その位置や状況からどのくらいゴールになりそうかを0〜1で数値化したもの。10本打って1本入るような難しいシュートなら0.1、こぼれ球を押し込むだけとかなら0.6といった感じ。この数値は、1試合の中でシュートを打つ度に加算される。

・xA (Expected Assisted Goals / アシスト期待値)
考え方は xG と同じ。どのくらいゴールに直結するようなラストパスを出したかという目安。

・ PrgC (Progressive Carries / 効果的なドリブル)
ドリブルにより一定距離(10m弱)ボールを前進させた回数。自陣でのプレーに関してはカウントされない点が特徴。

・ PrgP (Progressive Passes / 効果的なパス)
パスにより一定距離ボールを前進させた回数。こちらも自陣でのプレーに関してはカウントされない。ただし、右SB → 右SHのような比較的通りやすい縦パスもカウントされる。

・ Cmp% (パス成功率)
こちらは自陣でのプレーもカウントされる。なのでキーパーとセンターバック、ピボーテの選手あたりが良い数字を残す傾向にある。

データはOpta Analystによるもの、表は自作

早い段階で退場者を出してしまったため、今回のスタッツはあまり意味を成さない。それでもセルヒオ・ゴメスの xA は際立っている。


試合内容

長短おりまぜた攻撃

選手の入れ替わりこそ多かったが、アラベスの基本陣形である4-2-3-1は変わらない。PSMでもディフェンスの肝になっていたのは、フィールド中央でのプレッシングだった。

その対策としてソシエダは2パターンのビルドアップを見せた。
いつもより両SBを前に出し、7番ビセンテと21番レバッハを下げさせる。
中央(赤エリア)で3対2の優位を築いてボールを回す。

前節エスパニョール戦を受けてと思われるが、この日は18番グリディがスビメンディを常にマンマーク。9番ビジャリブレ1人で両CBに対応するのは無理なので、パチェコかスベルディアが時々フリーになる。

そのタイミングでボールを前進させ、対角の前線へロングボール。上の例ならブライスか久保が受け、一気にゴールへ迫る。

この形から何本か良い形ができたこともあり、アラベスがロングボールを嫌がるようになる。サイドハーフのビセンテかレバッハがここに加わり前を塞ぐ。

するとソシエダは空いたSBから難なく前進。

いずれにせよ、アラベスの守備の要である6番ゲバラに仕事をさせないことで、スムーズにゴールへ迫れていた。


勝敗を分けたジャッジ

大問題となったシーン。

主審の言い分は以下の通り。

「ボールの奪い合いの中で、相手選手に過剰な力でタックルした」

ソシエダからの疑義に対する回答

オヤルサバルが出した左足をトラップと見るか、タックルと見るかということのようだ。

はい、これ以上は触れません。



久保の機転

1人少なくなってしまったソシエダは4-4-1の形を余儀なくされる。

アラベスは両SBを前に出して攻撃の人数を増やす

前半に同点の状況で退場者が出た場合、攻撃よりも守備にウエイトを置かざるを得ない。基本的には上図のようにカウンター1本でCFを走らせ、ドリブルなりタメなりで起点を作ってもらう。シュートまでいけなくても、コーナーキックやファールをもらうことで次の攻撃に繋げることが出来れば、という狙いだ。

ただこの試合の久保は、そんな状況の中でも人数をかけて攻める姿勢を見せ続けた

まずはゴールシーン。
スビメンディがベッカーの裏あたりへ適当に出したハイボールが弾き返され、久保が収めたところから。
ブライスがサイドに流れたのでパスを出すことも出来たが、久保はドリブルを始める。

いったい、どこにドリブルのコースが見えるのか…

そのまま4人を引き寄せ、中央からゴールに近付いていく。上がる時間をもらえたスビメンディ、セルヒオ・ゴメスと繋いでブライスのゴールを生んだ。
(後でハイライト動画のリンクあります)

4人も引き寄せてロストしないなら、退場で欠けた1人分の穴なんてどうにでもなる。

もうひとつ。
38分のシーン。

当然、右サイドは誰もいない

右サイドの久保が逆サイドに流れてきたことで、局所的に数的優位が生まれている。もちろん1ヶ所に人数が集中しすぎている分、クロスやサイドチェンジといった大きな展開はできないが、1人少ない状況で活路を見出そうとする機転は素晴らしい。

久保はこうした状況判断能力のみならず、その狭いエリアでのプレーも苦にしない優れたスキルを持っているからこそのポジショニングだ。

サイドアタッカーとして使うのがもったいないと思えるほど、強みが多い



セルヒオ・ゴメスのマイナスクロス

後半の見どころも無くはなかったが、それよりも今節どうしてもピックアップしたかったプレーがあるので、こちらを優先。

セルヒオ・ゴメスのクロスに関して。
アシストとなったクロスではなく、前半4分にあった方。

セルヒオ・ゴメスがポケットを取り、ベッカーからのスルーパスを受けたところ。

得点に繋がった時のようにキーパーの前のスペース(赤エリア)に流し込んで、ニアかファーで合わせるっていうのもアリのところを…

その2人をおとりにして、空いたスペースに入ってくる3人目を選択。
これはマイナスクロスとかマイナスのクロスとか呼ばれていて、近年はポケット侵入後のフィニッシュパターンとしてよく見かける形だったりする。

ただ、ソシエダはWG勝負の形が基本であり、ポケットへの飛び出しがそもそも少ない。ましてこのマイナスクロスの形となると、昨シーズンはちょっと見た記憶がない。(あやふや)

ちなみにセルヒオ・ゴメスは普段めちゃくちゃパススピードが早いのに、この時はころころころ〜っと優しい優しいパスを送っている。しかもベッカーからのスルーパスをダイレクトで
上手すぎですね。シティさんはホントに売っちゃって良かったんですか?

ちなみにちなみに、久保はファーサイドにブライスが走ったのを受けて中央のスペースに侵入してきているわけだから、やっぱり頭が良い


0:21秒から



久保とセルヒオ・ゴメスが合うわけ

開幕から3節にわたってひたすらセルヒオ・ゴメスを絶賛しているが、今節でやはり久保とプレーが合うと確信できた。

セルヒオ・ゴメスは自由に動いているようで、ボールの経由地点として必要なところへ、あるいはそのスペースを作るために動いている。久保は久保で戦況を見極め、効果的なポジショニングとプレーの選択ができる。
お互い周りがよく見えているし、先ほどのマイナスクロスのように攻撃のビジョンを共有できているように思われる。
得点したシーンで、久保がブライスではなく真っ先にセルヒオ・ゴメスを捕まえて讃えていたのは、そうしたビジョンを実現してくれた喜びからじゃないかと勝手に解釈している。

セルヒオ・ゴメスはパサー、久保はアタッカー。スタートは同じ右WGだったとしても、別にポジションを奪い合う関係ではない。むしろセルヒオ・ゴメスも久保もこの試合のように右WGじゃなくたって問題なくフィットするはずだ。

その裏付けになるかもと、この試合で2人がボールタッチをしたエリアを示したヒートマップを添えておく。
10人だったということで、参考程度にしかならないが。

sofascore.comより

やはりどちらもかなり広い範囲でボールに触っている
同時起用することで、ソシエダの連携が劇的にスムーズになるように思えてならない。

久保自身もトップ下、10番へのこだわりがあるようだし、起用されるポジションはこの先また変わってくるかもしれない。


終わり
次回のヘタフェ戦も楽しみですね。



ヘタフェ戦はこちらから

サディクの話も良かったら

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。




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