【レビュー】セルヒオ・ゴメスは救世主? 第1節 レアル・ソシエダ - ラージョ
ついに24-25のラ・リーガ新シーズンが開幕。
初戦の相手は去年17位でギリギリ降格を免れたラージョ・バジェカーノ。
ソシエダから見れば格下ではあるものの、昨シーズンの対戦では2引き分け。さらにラージョはマドリーとも2引き分け、バルサとも1引き分けに持ち込んでおり、全然気が抜けない相手だ。
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チームコンディション
アイエン・ムニョスが復帰。
オリンピック組(パチェコ、トゥリエンテス、セルヒオ・ゴメス)合流。
メリーノとカルロス・フェルナンデスは移籍の関係でベンチ外。
スベルディアとザハリャンは怪我のため欠場。
オドリオソラが足首の違和感を訴え欠場。
スターティングメンバー
スビメンディではなく、ウルコをピボーテに起用。左WGにはベッカーを置いた4-3-3。
試合結果
1ー2
得点:スビメンディ
スタッツ
新シーズンということで、個人スタッツを追加。
先に表の見方から。
ボールタッチ数や走行距離など様々なデータがある中で、試合への影響力を可視化するのに有用と思われる5項目をピックアップしてみた。
xG (Expected Goals / ゴール期待値)
シュートを打った時に、その位置や状況からどのくらいゴールになりそうかを0〜1で数値化したもの。たとえば10本打って1本入るようなシュートなら0.1、得点の大チャンスであるPKなら0.76といった具合。
この試合でベッカーとスビメンディはどちらも2本のシュートを打っており、数値はそれぞれの2本を足し合わせたものになっている。つまりデータ的には、スビメンディの方がゴールを期待できるシュートシーンを得ていたということになる。
ちなみにこの xG という数値は膨大な過去のデータから算出されたものであり、誰が決めたかという部分は考慮されていない。シュートが上手かった人もいれば、そうでなかった人も山ほどこのデータに含まれている。その平均値というわけ。なので決定力があると言われるプレイヤーは、ゴール期待値を上回るゴール数を決めていたりする。
昨シーズンのソシエダに関していえば、チーム最多の9ゴールをあげたオヤルサバルのゴール期待値は9.1、7ゴールに終わった久保のゴール期待値は3.5だった。つまりデータ的には、久保はめちゃくちゃシュートが上手いということが分かる。
xA (Expected Assisted Goals / アシスト期待値)
アシスト期待値。考え方は xG(ゴール期待値) と同じ。どのくらいゴールに直結するようなラストパスを出したかという目安。
PrgC (Progressive Carries / 効果的なドリブル)
ドリブルにより一定距離(10m弱)ボールを前進させた回数。自陣でのプレーに関してはカウントされない点が特徴。プレスの強まる相手陣内でボールを前に運べるプレイヤーは、個での優位性を生み出す存在であり、相手にとって脅威となる。
PrgP (Progressive Passes / 効果的なパス)
パスにより一定距離(10m弱)ボールを前進させた回数。こちらも自陣でのプレーに関してはカウントされない。ビルドアップの際に頻繁に見られる最終ラインでのパス回しが含まれないため、実際のパス本数よりも試合への影響力が見えやすい。
ただし、トラオレ → 久保のようなサイドでの比較的通りやすい縦パスもカウントされるため、ディフェンダーを見る場合は少し注意が必要。
Cmp% (パス成功率)
こちらは自陣でのプレーもカウントされる。なのでキーパーとセンターバック、アンカーの選手あたりが良い数字を残す傾向にある。
以上を踏まえ、この試合の個人スタッツを見てみる。
ベッカーとハビ・ロペスの左サイドから前進した回数が多い。またアリッツが敵陣で、精度の高い縦パスを多く成功させていることも見て取れる。
逆にウルコの成績はふるわない。
これらはラージョのシステムによるところでもある。
試合内容
ラージョのディフェンス
ラージョは攻守で4-2-3-1をベースとしている。3の中央、7番のイシはトップ下よりも左でセカンドトップのようにふるまう。その影響でワントップの11番エンティカはやや右サイドに寄った立ち位置を取る。
ソシエダのビルドアップに対してもこの形を崩すことなく、プレスを掛けてくる。
11番エンティカがパチェコへのパスコースを消す。7番イシはウルコに張り付いた状態から、フリーでボールを受けるアリッツに寄せていく。
トラオレにはマークが付いているので、アリッツはブライスへの縦パスを狙う。その瞬間に相手の23番オスカル・バレンティンが、ボールの受け手ではないウルコに対して一気に距離を詰めてくる。
下がってきて後ろ向きのブライスがウルコに落とす。ラージョはここを奪いどころに設定してきた。奪えれば前は3対2の数的有利。少ない手数でゴールに繋げる狙いだろう。ウルコが強いプレスを受けていたことは、個人スタッツの数字の悪さにも反映されている。
しっかり対策された印象。
もうひとつ。
ラージョは左右対称ではない前線の関係もあって、必ずソシエダの右サイドに守備エリアを限定しようとしてくる。右SBのトラオレまでボールが渡れば、ラージョの右SH(19番)とSB(2番)はかなり内側まで絞って、コンパクトに守る。
なのでソシエダは右サイドから左サイドへとスムーズにサイドチェンジが出来れば、密度の低い左サイドでわりと楽に前進することが可能になる。
ソシエダの中盤
ソシエダのアンカーとインテリオールの関係性は、プレシーズンマッチでも大きな課題として残ったところだ。中央を経由した展開が少ないため、片方のサイドに相手の守備者が集まってしまう。結果としてWGまでボールを届けられても、1対1の良い形で勝負できるシーンはなかなか作れず、チャンスの回数も増えてこない。
この試合も前半は中央を経由した展開が少なく、右WGで受けた久保はやはり1対2での突破を強いられていた。
メリーノが抜けた中盤には成長著しいトゥリエンテスに加え、新たにスチッチが加入した。なのでPSMでは上手くいってなくても、これから改善し、成熟する余地はある。と思っていた。
セルヒオ・ゴメスは救世主?
インテリオールで途中出場してきたのはセルヒオ・ゴメスだった。
驚いたのはセルヒオ・ゴメス投入後に全体のバランスがとても良くなったこと。ペップシティにいたこともあってか戦術理解が素晴らしい。裏を取るふりだったり、下りてきてビルドアップに参加する動きだったり、周りの位置をしっかり気にしながらプレーしていた。ソシエダでの初試合とは思えないほどフィットしているように見える。
最後は右WGに回ったが、そこでもやはり効いていた。
中でもパウザ(pausa、ポーズ)と呼ばれるプレーが出来るのは稀有であり、メリーノが抜けたソシエダにとって、救世主となる気がしてならない。
パウザとは
溜めというふうにも表現される。止まるとか止めるとか、一時停止とかそういう意味の言葉。
主に中盤の選手が見せるプレーで、味方に押し上がる時間を作るためにボールをキープすること。
ソシエダではダビド・シルバがボールを持ったまま、よくその場でくるくるとターンをしていたのが印象深い。去年はメリーノも同様にくるくるその場ターンをしていた。でももうシルバもメリーノもいない。
↓ ビジャとイニエスタがパウザに関して語っている記事
ちなみにセルヒオ・ゴメスのパウザはくるくる回らない。
横に横にドリブルしていく。
これをパウザと呼ぶかどうかの議論はさておき、このドリブルにより両サイドバックが上がる時間を作れていたのは事実だ。スビメンディがゴール前に顔を出すのにだって時間は要る。
サイドバックが上がりスビメンディが上がれれば相手の守備を押し込めるから、攻撃がうまくいかなくてもセカンドボールが拾いやすい。なにより攻撃に人数を掛けられれば、得点自体ももっと取れるようになるはずだ。
今節のセルヒオ・ゴメスはプレー時間も短く、ソシエダが前掛かっている状況での出場だった。いずれスターターとして出てくるだろうから、その時どうなるかは今後の新たな楽しみだ。
次節に向けて
新シーズンは黒星スタート。
幸先悪くてつらいが、わりと仕方なかったかなという感じもある。ラージョは狙いがハッキリしていたし、準備できていたのが見てとれた。
ソシエダは移籍が上手く進んでいないし、ユーロとオリンピックの影響もあってか連携面にミスが多かった。
一方でポジティブな要素もある。
新戦力のスチッチや、既に活躍しているハビ・ロペスの存在。アイエンも帰ってきたし、パチェコも安定感が増している。あとたぶんバレネチェアがかなり調子良い気がする。
移籍市場もまだ開いているし、なによりシーズンは始まったばかり。
次節は昇格組のエスパニョールとのアウェイゲーム。
きっちり勝って今季初白星を祝いたいところ。
次節はこちらから。
またセルヒオ・ゴメスを絶賛しています。
9月から始まるヨーロッパリーグについて、詳細にまとめております。
ぜひ予習していってください。