【レビュー】エースの使い方の違い 第14節 アスレティック・ビルバオ - レアル・ソシエダ
前節のバルセロナとの対戦で、素晴らしいパフォーマンスを披露したレアル・ソシエダ。
その後の代表ウィークで多くの選手が招集される中、残ったメンバーでコパデルレイの1回戦を5−0で勝ち抜き、今季最も勢いに乗れている。
一方のビルバオはリーガでの直近3試合で引き分けが続いている。
ソシエダにとっては、ここ数年勝てていないアウェイのバスクダービーとなるが、今回は大いにチャンスがある。
前節、バルセロナ戦はこちらから
チームコンディション
オスカルソンは間に合わず。
思ったより長引きそうとか。
スターティングメンバー
セルヒオ・ゴメスとスチッチのインテリオールコンビは、今季4度目。
(5節Rマドリー、9節アトレティコ、EL4節プルゼニ)
試合結果
0ー1
チームスタッツ
きっちり守られてしまった。
シュート位置
前半
後半
枠内シュートはセルヒオ・ゴメスのミドル(右足)のみ。
個人スタッツ
全体的にふるわず。
試合内容
今回のマッチレビューでは、時間経過による試合の流れではなく、両チームの違いを生んだディテールに注目してみたい。
具体的には以下の3点。
ハイプレスとその対応の違い
ビルバオのベースはこんな感じ。
16番ガラレタと24番プラドスが横並びで中央を担う。
守備時には両WGが下がって4−4−2を形成する。
ビルドアップ時は4−1−2−3。
特徴的なのは、10番ニコと11番ジャロがポジションを替えているところ。
ここにソシエダのディフェンスを置いてみる。
トップ下8番サンセはスビメンディが担当。
ビルバオの3トップにはSBとCBの4人で対応するため、セルヒオ・ゴメスのところで人数が合わなくなる。
これによりソシエダは、どこかで必ず綻びが生じてしまうため、継続的にハイプレスを掛けることができない。
外回しの安全なパスだらけでプレス回避されてしまうのがつらい。
一方のソシエダ。
スベルディアがレミーロからのパスを受けたところから。
ビルバオの守備で特徴的なのは、中央の16番ガラレタと24番プラドスがゾーンで守っている点。
なのでライン間(紫の部分)がかなり空く。
ビルバオのCBの1人(ボールから遠い方)はオヤルサバル担当で、もう一方がライン間をケアできるよう準備している。
逆サイドのハビ・ロペスとバレネチェアはフリー。
ボールを持っているスベルディアにしてみれば、目の前は数的不利の状況であり、ショートパスを繋いで前進させていくのはリスクがある。
結局はレミーロなりスベルディアなりアランブルなりから、苦し紛れのロングボールを蹴らされることになってしまう。
オヤルサバルがそうしたボールを得意とするタイプではない一方で、ビルバオの両CBは大得意。結果が見えている。
セカンドボールの奪い合いでまだなんとかなっていたが、ビルバオのハイプレスが続いている時間帯では、ソシエダに効果的なビルドアップは見られなかった。
ハイプレスに対してロングボールを蹴らされてしまうのは、現状の課題。
ポジトラの違い
中盤での攻防が多かった試合にあって、どちらのチームも守備に対する意識は高かった。自分のマークやゾーンでなくても、プレスバックなりカバーなりに加わってボールを奪うといったシーンが散見された。
その中で違いとして気になったのが、ポジトラの部分。
ビルバオの場合、奪ったボールをほぼダイレクトで8番サンセに預ける。
サンセは守備時にキーとなる選手ではなく、ポジトラ時の起点になるよう、ライン間に残ったままであることが多い。
ここに縦パスが出た瞬間に前線のスピードが上がる。
サンセはキープもターンもポストも上手く、ここをショートカウンターのスイッチとしているのが、なんとも合理的に感じる。
ソシエダはというと。
前半23分。
ビルバオのシュートの跳ね返りをスビメンディが掻き出し、スチッチが前を向いたところ。
久保をマークするSB17番ユーリが攻撃参加しており、カウンターを狙っていた久保はノーマークだったが、スチッチからボールは出なかった。
ちなみにスチッチはこの後、切り返して左サイドを向いたところでタクティカルファウルで潰される。
ここで指摘したいのは、久保に出せとか、スチッチの判断がどうとかということではない。
久保がカウンター狙いで前残りしていたのは、ユーリが上がっていたからに違いない。であれば、チームとして久保を残しておき、カウンターでそこを使うという意識が全体で共有されているべきではないかということ。
こういうようなところ、わりと毎試合あって気になってしまう。
プレーする時間を共有することで改善されるはずなので、今後の伸び代とポジティブに捉える。
エースの使い方の違い
具体的には両チームのエースである久保とニコを、得意とする位置で、脅威となる位置で使うメソッドを持っていたかどうか。
まずはニコ。
話は少し戻って、ビルバオのプレス回避のところから。
この先の流れを見ていく。
前半11分。
24番プラドスが、ソシエダのプレスを回避して持ち運んだところ。
ここからサイドに張っていた11番ジャロが中央へ。
この動きにアランブルが引っ張られる。
すると今度は10番ニコがジャロと入れ替わって大外へ。
ニコがボールを受ける体の向きは決して良くはないが、確実に届けられる。
それに対応するアランブルも同様にベストではない。
ビルバオにとって、そこから先を託すのがニコ・ウィリアムズというリーガ屈指のアタッカーであるのなら、充分に採算の取れるパターンに思える。
ちなみに、もしアランブルがジャロに釣られず中央へ流れなかった場合には、もっとひどいことになる。
そのままスルーパスが出されて大ピンチ。
オフサイドが非常に取りにくい、フロントカットと呼ばれるプレー。
余談でした。
一方のソシエダ。
前半43分のシーン。
そもそもビルバオがソシエダの右サイドを厚めに守っている関係で、久保へのパスルートが限られてしまう。
後ろからのパスで体勢も悪い上に、しっかりカバーまで対応される。
それでもそこからなんとかしてしまえるのが、久保の凄さ。
中央へのカットインから、守備の手薄な左サイドへボールを届ける。
こっちのシーンも同様。
ただ、久保をどこで使うのが最も脅威となるかで考えると、やはりもう少し前で持てるパターンを作れなければならなかったように思う。
両者のプレーエリアを比較すると違いは顕著。
こうしたエースの使い方の違いは、ビッグチャンスの回数の差に繋がり、チームのゴール数に反映される気がしてならない。
総評
ビルバオをほめてばかりのマッチレビューになってしまったが、実際そうだったから仕方ない。
ビルバオは攻守4局面のどれもがしっかりと整備されている上、ホームでのダービーは絶対に負けられないという気概も備えていた。
ソシエダが前節のバルサ戦で見せたように、この試合ではビルバオも素晴らしいサッカーを見せてくれた。ほめないわけにはいかない。
次回のダービーはソシエダのホーム。
その時はぜひともビルバオを凌駕する気迫とプレーで圧倒してほしい。
あとがき
今回のマッチレビューではニコの左サイドを取り上げたが、それ以外のパターンをパパッとご紹介。
右サイドのパターン
右はシンプルに9番イニャキのスピード。
こちらも左のニコ同様、やはりパスを受けるイニャキの体の向きは悪いが、なんとかしてしまえるプレイヤーである特性を活かしたパターンといえる。
この試合ではハビ・ロペスがこれに対応することが多かったが、ことごとくボールを奪い切り、イニャキに目立った活躍をさせなかった。
ハビ・ロペスはこの試合の殊勲者だったと思う。
その他のパターン
その他もろもろある中で共通しているのは2つ。
ひとつは、中央を使わずとも無理なく攻撃ができていること。
それと、SB18番デ・マルコスのクロスだったり両CBのフィードだったり、前線のスピードだったりといった、個人の特性を活かせていること。
ビルバオがバスク人縛りをする中で、ここまで個の特性を活かしながら、無理なく勝つためのシステムを構築できるバルベルデ監督はすごすぎる。
もちろんイマノルさんもすごい監督であることを付け足して、今回はここで筆をおきます。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。