【レビュー】エースの正しい使い方 EL第5節 レアル・ソシエダ - アヤックス
24-25ヨーロッパリーグ(EL)のリーグフェイズは後半戦に突入。
レアル・ソシエダはここまで1勝1分2敗と、かなり苦戦している。
今回はオランダの名門、アヤックスとの一戦。
現実を直視するのが嫌で順位表を見ないようにしていたが、アヤックスの順位が気になって仕方なくチラ見。
ソシエダは25位らしい。
アヤックスは2位。さすがですね。
残り試合数と対戦相手を考えると、引き分け以上の結果が求められる。
前節、プルゼニ戦はこちらから
チームコンディション
オスカルソンはまだお休み。
スターティングメンバー
ビルバオ戦からは4人を入れ替え。
久保もちゃんとスタメンで、しっかりと勝ちに行く姿勢が伝わってくる。
試合結果
2ー0
得点者:バレネチェア、久保
ステキな写真
チームスタッツ
両チームのスタッツはわりと似ている。
アヤックスのビッグチャンスを阻めたという点では、GKレミーロの活躍も大きな勝因のひとつ。
シュート位置
前半
後半
個人スタッツ
久保の活躍が光る。
スチッチは体が重かった印象。
トランジションが遅く、パス成功率も68%にとどまっていた。
でも4日前のビルバオ戦でフルだったし仕方ない。
たまにはしっかり休んでね。
試合内容
アヤックスの攻撃システム
まずはアヤックスの攻撃システムを整理してみたい。
ベースは中盤横並びの4−3−3。
ビルドアップ時はここから7−3のような形になる。
両SBが中央により、コンパクトな6角形を形成。それぞれのパスコースを複数確保しながら、ポジションを入れ替えながらパスを回す。
狙いはパス回しによる前進ではなく、ディフェンスを引き付けること。
引き付けたところでCF9番ブロビーにロングボール。
ポストプレーから一気にスピードを上げて左から展開という流れが基本パターン。
もちろん、その他にも前進のパターンをいくつか用意している。
大外へのパスコースを作るパターンだったり、7−3ではなく6−4のパターンだったり。
でもこの試合においては、あまり重要なことではないのでここまでで。
得意のマンツーマン&ハイプレス
そんなアヤックスのビルドアップに対してソシエダは、マンツーマン&ハイプレスを敢行。
アヤックスの左SB4番ハトをマークするために、右SBアリッツが積極的に前へ出る。アヤックスのロングボールの出所はGK22番パスフェールであることが多いため、そこまでプレスを掛け切る。
この試合のソシエダは、終始ハイプレスを掛け続けることを徹底。
足元の技術に乏しいGKパスフェールに、何度もキックミスを誘発させる。
オヤルサバルと久保が先陣を切るチェイシングに、アリッツを筆頭に周りもしっかりと追随できていた。そのおかげもあって、前半は高い位置でスローインを得たり、ショートカウンターといったシーンが何度か見られた。
後ろのディフェンス陣にしても、序盤こそ同数で不安になる場面もあったが、早い段階で慣れたのかどんどん安定していく。
前半30分過ぎにCF9番ブロビーが負傷交代すると、アヤックスの得意な形はますます鳴りを潜めていった。
どちらのサイドから攻めるのか
続いては、ソシエダのビルドアップ時。
アヤックスは前線の9番ブロビーと10番アクポムが、横パスを切るようにプレスを掛け、ソシエダの左サイドにボールを展開させるよう誘導してくる。
そのためアリッツはフリーになることが多い。
アリッツにボールが渡った時は、左SB4番ハトが縦にスライドして対応。
4番ハトのスライドを受けて、今度はCB15番バースが横にスライドして久保のマークに当たる。
この段階で初めて完全マンツーマンの形になる。
というわけでソシエダの持つ選択肢は3つ。
前半に多く見られたのは、左サイドから攻め上がる形。
前半8分のシーン。
アヤックスが誘導するサイドなんだから、当然進んだ先ではソシエダにとって不利な状況が待っている。
左から攻めるなら攻めるで、何かしらの策が必要になる。
最も効果的だったのは、前半の終了間際。
ソシエダが誇る2枚看板、久保とスビメンディが左サイドの局面に加勢し、同数で打開したシーン。
ビッグチャンスが生まれた。
第4の選択肢
右サイドからの前進が出来ないのであれば、左サイドに人を集める。
後半はこの方針で行くのかと思ったが、全然違った。
アルグアシル監督が後半に用意したのは、第4の選択肢。
後半開始早々。
ソシエダのハイプレスで、アヤックスのGKにクリアを強いたところ。
注目はアヤックスのSB4番ハトとCB15番バース。
この2人は先ほど見たように、局面によって久保のマークを分担している。そのためアヤックスのネガトラ時に久保のマーク対応が難しくなる。
ソシエダはポジトラの瞬間を突くことで、久保に前でボールを持たせることを可能にした。
前半戦では、セカンドボールを拾ったら一度GKレミーロまで戻してやり直しというシーンが多かった中で、後半に持ってきた明確な変更点だった。
その後は何度も何度も、多少強引だろうとお構いなしに、ポジトラから久保への流れを繰り返す。
久保も大外で受けることにこだわらず、中へ顔を出してくることも。
アヤックスのGKまでプレスを掛ける、クリアを誘う、セカンドを久保に預けるという一連の流れはシンプルであり、チーム全体でしっかりと目的を共有できていたように思う。
久保に対するマークはどんどん崩れ、ソシエダは右サイドを起点にゲームを支配し続けた。
監督がエースを活かす策を練り、その期待に久保がしっかり応えた。
見事という他ない。
参考
前回のレビューで取り上げた、プレーエリアに関して。
以下は、久保のプレーエリアを比較したもの。
ゴールに近い位置でプレー出来ている。
フリーキックの話
マッチレビューはおしまい。
この試合でちょっと良さそうな変化が見えたので、今後の見どころとしてピックアップしておきたい。
後半12分に得たフリーキックのシーン。
普段ならゴール前にボールを放り込む場面のところで、孤立させた久保に1対1の状況を託した。
もうひとつ。
後半30分。
これも同じ。
決定率の良くないFKにテコ入れがされたものと思われる。
ちなみにこのフリーキックからエースの1対1を作って使うのは、直前のバスクダービーでビルバオがニコ・ウィリアムズを使って見せたパターン。
良いと思うものを吸収するのは良いこと。
もしかしたら今後はショートコーナーに転用される可能性があるかも。
といったところで、今回はここまでです。
ロングハイライトも貼っておきます。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。