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【レビュー】スチッチが輝いた2つの要因 第23節 エスパニョール - レアル・ソシエダ

リーグ戦3連敗中のレアル・ソシエダ。
ミッドウィークに行われたコパデルレイで久しぶりの勝利を収めたものの、リーグ戦の成績は11位まで沈んでしまっている。

今節の相手は17位、エスパニョール。
エスパニョールは年末まで降格圏にあえいでいたが、年明けから徐々に挽回し、前節はなんとあのマドリー相手に劇的な勝利をもぎ取った。

チームの勢いとしては、ちょっと負けているかもしれない。

https://g.co/kgs/1i823oY


直近のコパデルレイ、オサスナ戦はこちらから


チームコンディション

  • スベルディアとアイエンが怪我のため欠場。次のELミッティラン戦には間に合うかもとのこと。

  • ソシエダは中2日

  • エスパニョールは中7日(ずるい)


スターティングメンバー

過密日程のためここでターンオーバー。
前線の3人(オスカルソン、ベッカー、セルヒオ・ゴメス)は第20節バレンシア戦でも同時起用されている。

エスパニョールにレンタル移籍中のウルコは契約により出場不可。先日のマドリー戦でがんばっている姿が印象的だっただけに残念。



試合結果

 2ー1

得点者:ベッカーブライス

ベッカーはバースデーゴール。

チームスタッツ

数値は FotMob.com より

エスパニョールはPKによるゴールなので、それを除けば、枠内シュートもビッグチャンスも0に抑えられたということになる。

シュート位置

前半

xG: 0.97

後半

xG: 0.70

左サイドからのクロスに、右SBのアランブルが詰めているのは良い。
もう少し枠を捉えてくれるとなお良い。

個人スタッツ

(PrgCは相手陣内でゴール方向に約10mドリブルした回数)

アゲルドが持ち運ぶ回数(PrgC)が多い。
スチッチの話は後ほど。



試合内容

前半

開始わずか40秒での先制弾。
あまりに早すぎて、ともするとラッキーにも思えるが、細かく見ればちゃんとソシエダの狙いは詰まっている。

(エスパニョールのGKからのロングパスを相手陣内で奪い切ったところから)

・左SBハビ・ロペスのハイプレス参加
・左の大外でボールを収めた時のポケット侵入
・中がオスカルソンなのでクロス主体

相手DFが足を滑らせたことでシュートまで持っていけたことは間違いないが、準備してきたゲームプランと、最初から積極的にいく姿勢があったからこそのゴールでもある。


幸先の良いスタートを切ったソシエダ。

ビルドアップの局面では、スビメンディのマンマークだけきついものの、両CBアリッツとアゲルドのところでは数的有利。プレスにくるCF2番フェルナンデスの強度も別に高くないので、だいぶ余裕がある。

エスパニョールはスビメンディのところ以外、ゾーンで守る4−2−3−1。
そのため、中盤の2−3のところにスペースが存在する。

ここにインテリオールのスチッチやマリンが下りてきて、ライン間を広げようというのが序盤の狙い。

ソシエダの攻撃に対し、エスパニョールはひたすら自陣でミドルブロック。全然前に出てこない。それを受けてか、ソシエダは前半10分近くに早くも次の段階へシフト。

スビメンディをCB間に落として両SBを上げる。
中央レーンとハーフレーンのライン間全てに人を配し、攻勢を強める。

ただしこれはエスパニョールも対策済みだったようで、中盤をフラットにした4−4−2にスムーズに移行。ライン間はむしろ狭まってしまう。

するとソシエダはすぐさま次の一手を打つ。
最近のトレンド、左肩上がりの3−2−4−1に変化。

アゲルドが少し持ち運ぶことでSH7番プアドを釣り出しつつ、右サイドよりも左サイドに人数を集めることで、数的有利の状況を作っていく。

そして大外で前向きにボールが収まれば、積極的にポケットを狙う。

攻撃の局面では基本の4−3−3をベースに、こうした3−1−5−1や3−2−4−1を頻繁に織り交ぜていく。最後のところが合わないものの、左サイドをメインとした崩しの狙いは明確。
流動性も申し分なく、今後しばらくは採用されそうな感じがある。


守備面では、エスパニョールの狙いであるロングボール1本でのカウンターをしっかりと対処。

エスパニョールの右SBが高い位置を取りにきてくれるおかげで、ソシエダは4−3−3を維持しやすかったことも、守備が安定した理由に挙げられる。

(エスパニョールはあまりポジションチェンジしてこないので、マンツーで掴みやすい)

被シュートはわずか1本、xGも0.01と完璧な内容で前半を終えた。


最序盤に1点を取れたことが、気持ちを楽にし、終始主導権を握ることに繋がったのかもしれない。
ボールを持つ時間が長かっただけに2点目も取れれば最高だったが、そうでなくとも前半の出来としては合格点以上だったと思われる。



後半

ソシエダは守備局面では引いて構えず、積極的にプレスを掛ける。
そしてボールを奪った後は、攻め急がない。左SBハビ・ロペスを上げるのをやめ、4−3−3の形を維持したまま、ポゼッションを重視。

この辺りは前節オサスナ戦で、1人多かったにも関わらず試合をコントロール出来なかった反省が活かされている。

ただ、そうした時間は長く続かなかった。
だいぶ厳しめのジャッジによるPKから、失点を許してしまう。

2点目を取りに行かなければならなくなったソシエダは3枚替え。

IN:オヤルサバル、バレネチェア、オラサガスティ
OUT:オスカルソン、セルヒオ・ゴメス、マリン

さらにその15分後には久保も投入。

左SBだけでなく右SBのアランブルも上げ、さらにはCBアゲルドまで果敢に攻撃参加。可能な限りの人数を攻撃に注ぎ込む。

エスパニョールの堅いローブロックを破るのに苦戦するが、残り時間わずかというところで、なんとか決勝点をもぎ取ることに成功した。


PKを除けば、エスパニョールのシュート数は3、xGも0.08とともに極めて低く抑えられている。
要所要所でうまくいかないところはあったものの、総じて見ればソシエダが主導権を握り続けた試合だった。それゆえに、たった1本の不運なPK判定で勝ち点3を取りこぼすなんてことにならず本当に良かった。



スチッチ考察

マッチレビューはおしまい。

ここからは特別企画。
この試合、特に動きがキレていたスチッチに関して少し考察してみたい。

スチッチは幼少期よりモドリッチを崇拝し、唯一のお手本と公言している。
当然そのプレースタイルには共通点が多い。

・高いキープ力
・広い視野
・長短関係なく精度の高いキック
・意外性のあるパス
・利き足偏重(逆足使わない)

加えてスチッチには185cmの恵まれた体格と、22歳という若さがある。

そんなスチッチの輝きやすい条件が、この試合には2つあったように思う。

. プレーエリアの変化

これは先ほど使った図。スチッチがピボーテに下りている。

3−2−4−1システムが採用され始めた前節でも、スチッチがスビメンディと並ぶように、ピボーテに顔を出すシーンが何度かあった。

以前までのインテリオールのポジションよりも、1列低い位置でのプレーが増えている。そのため、相手のプレスが少し緩い状況で前を向けるし、得意のドリブルでボールを持ち運ぶことができる。

たとえば、前半27分のこのシーンでも、ディフェンスを1枚剥がした後は余裕を持ってパスを展開している。

低い位置でプレーすることでスチッチ主導で試合のリズムを作る、ゲームメーカーとしての能力が発揮されやすい状況が生まれていたように思う。

これはモドリッチがトップ下で起用されないのと同じ理屈。

(今季、モドリッチが起用されたポジション/transfermarktより)


. 周囲の味方との関係性

もうひとつはドリブラーがいなかったこと。
ちょっと言いにくいが、具体的には久保、バレネチェア、ブライスがいなかったことに起因する。

この3人は違いを作れる選手であり、ソシエダの攻撃はこの3人にボールを預けることでチャンスに繋がるシーンが多い。ただこの3人に加えて、もしスチッチまでボールを収めて持つようになると、今度は途端にパスを回すテンポが悪くなってしまいかねない。

でもこの試合で出場していた左のセルヒオ・ゴメスもハビ・ロペスも、1対1のドリブルを仕掛けることはほぼ無い。右のベッカーにしても縦に抜けてクロスを上げるか、少し手前でカットインして横パスというプレーが多い。

つまりスチッチがキープし、ドリブルすることは、周囲の味方とプレースタイルが被らない。パス主体のソシエダの攻撃にスチッチのドリブルを織り混ぜることが、良いアクセントとして働く。
きっとスチッチ自身も、これまでの試合よりも自由に、のびのびとプレー出来ていたに違いない。

誤解がないよう付け加えておくが、スチッチを久保やバレネチェアと一緒に出さない方が良いという結論ではない。

最近のソシエダはオラサガスティの台頭やザハリャンの復帰、3−2−4−1の新スタイルといったポジティブな変化がある。ここにターンオーバーが加味されることで、ますますスタメンが固定化されにくい状況にある。

スチッチの起用法や役割が変わっていく余地は大いにあり、その中でまた新たな強みが引き出されるのではないか、というのが結論になる。


たとえばスビメンディを休ませる時に、ピボーテにトゥリエンテスを置き、攻撃時にはスチッチが1列下りてゲームを作る。みたいな感じとか。

(スビメンディのいない日)

具体的な起用法に言及してもあまり意味がないので、ここまでで。

今後、スチッチがもっともっと輝けますように


最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

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