【レビュー】カウンタープレス用ロングボールの見極め方 第17節 レアル・ソシエダ - ラス・パルマス
レアル・ソシエダは公式戦5連勝中。
しかも複数得点にクリーンシートのおまけ付きと絶好調。
一方のラス・パルマスも3連勝中。
開幕から9試合勝ちが無かったことで監督を交代、その後は7勝2敗と圧倒的な勝ち星先行。しかも第15節ではバルセロナにも勝っている。
順位ではその強さを判断できない。
前節、レガネス戦はこちらに。
チームコンディション
スビメンディとバレネチェアが復帰。
スターティングメンバー
左WGにはセルヒオ・ゴメスを起用。
試合結果
0ー0
チームスタッツ
今のソシエダのスタイルからすると、相手がもう少しポゼッションにこだわるチームの方が相性良さそう。
シュート位置
前半
チャンスのシーンは何度かあったものの、シュート自体は少なめ。
後半
後半はラス・パルマスが点を取るために前掛かってきたので、逆にチャンスが多く生まれた。
個人スタッツ
試合内容
ラス・パルマスのハイプレス対策
ラス・パルマスは攻撃時4−2−3−1。
これに対してソシエダは、久保を絞らせてCB15番のマークに当て、ハイプレスを掛ける。
アランブルが1列前に出て、スベルディアもそれに連動。
中盤の3人(ブライス、スチッチ、スビメンディ)が形を変えることなくマークを掴める点は、前節のレガネス戦よりもやりやすさを感じる。
前半3分。
アランブルがかなり高い位置までハイプレスを掛けに行くシーン。
ラス・パルマスの左SH10番モレイロも引いてきているため、スベルディアがかなり釣り出されている。後ろはアゲルド1人という状況。
ラス・パルマスはそこにロングボールを放り込み、CF17番マタのポストを起点とする狙い。
ソシエダはハイプレスの際、必ずSBのどちらかを上げる必要があるため、最終ラインの大外が空きやすい。そういう意味では、ラス・パルマスのこの狙いはとても合理的。
ただソシエダとしては、仮にこのエリアにロングボールを放り込まれても、対応するのはアゲルドなのであまり心配はない。
アゲルドはハイボールの競り合いも、足での競争もまず負けない。カードをもらわないタクティカルファウルも上手いし、なんならスベルディアのプレスバックだってある。
一方でラス・パルマスの方は、味方との距離が離れている。
なのでこのラス・パルマスの攻撃自体には、それほど脅威を感じない。
それよりも、ソシエダにとっていまいち都合が悪いのは、ラス・パルマスがこうしたロングボールを多用してくること。
できればラス・パルマスにはビルドアップをしてきてもらった方が、ソシエダは高い位置で奪えるし、カウンターでチャンスを作りやすい。
でもラス・パルマスは全然ビルドアップしてこない。
ソシエダだってロングボール多様でほとんどビルドアップをしないので、完全にお互い様ではあるが、うまいことやられた印象は否めない。
以下の表は、ラス・パルマスの直近4試合における支配率と、後方(GK&DF)からのロングパス本数の関係。
ラス・パルマスがポゼッションも出来るチームながら、相手によってスタイルを変えていることが見て取れる。
そして今回のソシエダ戦に用意してきた作戦が、ロングボールによるハイプレス回避であったと思われる。
そんなわけでソシエダは、ラス・パルマスからすんなりボールを回収できる代わりに、カウンターではない何かしらの崩しが求められた。
ラス・パルマスの守備設計
ラス・パルマスの守備陣形を確認しておく。
ラス・パルマスは攻撃時の4−2−3−1から、守備時はゾーン重視の4−4−2に変形する。
ラス・パルマスの守備にはいくつかのルールがある。
これらの目指すところは、CBの2人を動かさないこと。
大外を使われた時の対応は左右で少し異なる。
右は右SH19番サンドロが下がって対応。左は左SB3番マルモルが出て行って、そのSBがいたスペースをCHのどちらか(20番or29番)がケア。
いずれにしてもCBの2人は中央にいるままで動かない。
同様にライン間を取られた時も。
ライン間はCHのプレスバックで対応し、CBは出て行かない。
この両CBに、SB1人(ボールのない側)を加えた3人を常に中央に残すシステムが、ラス・パルマスの堅守を支えている。
前半19分。
この試合さんざん見られた、アゲルドから対角の久保へロングボールが出されたところ。
ブライスの裏抜けの動きによって、ラス・パルマスのSB3番マルモルが引っ張られる。そのため、労せず久保まで届けられる。
ただし、届けた先がチャンスかというと、意外とそうでもない。
パスの滞空時間が長いため、大外の対応用に守備を整えられてしまう。
ラス・パルマスがどう動くかは徹底されている。
左SH10番モレイロが必ずサポートに来るのであまり時間は掛けられないし、間を割ってカットインというのも難しい。
残された道はタテ突破一択になるが、クロス対応にはCB2人+SB1人と中のディフェンスは揃ってしまっている。
大外のスペースをどう見るか
ちょっと脱線。
いま取り上げている、この状況をどう見るか。
たとえ数的不利でも、久保がこの位置で前を向いて受けられるならチャンスを作れるというのは、ソシエダの持っている大きなアドバンテージ。
でも普通に考えればラス・パルマスにとって有利な状況であり、おそらくは奪いどころ。
というかそもそもの話、CBアゲルドから対角の久保までこうもロングボールがピンポイントで届く方が不思議なわけで、パスがずれればソシエダはロストやカウンターを受ける可能性すらある。
アゲルドのパスが上手すぎて見えにくいが、ラス・パルマスはむしろ積極的に対角の大外を誘っていたようにすら思えてしまう。
ちなみにアルグアシル監督の目にはこう映った模様。
一気に飛んで、後半24分。
縦に突破すると中のディフェンスが揃ってしまうので、その前にグラウンダーのアーリークロス。
左WGセルヒオ・ゴメスからのグラウンダークロスで、前半から何度か惜しいシーンが生まれていたことも頭にあったかもしれない。
右バレネチェア、左セルヒオ・ゴメスにしてサイドと利き足を揃え、クロスの精度を上げ、いつもとは違ったゴールパターンを加えたものと思われる。
なお触れるまでもないが、久保の交代自体は直近の試合でのプレー時間的に、既定路線だったことは間違いない。
中央での崩し
話は戻って、まだ前半。
ラス・パルマスのディフェンスは、外が空くのに崩せない反面、意外にも中はそこまで堅くない。
その理由はライン間の守り方にある。
前半2分。
ブライスとの連携から久保が中央へ進入。
この久保の動きに対して、ラス・パルマスはCH20番ロドリゲスが対応。
CB2人+SBの最終ラインは必ずラインを下げる。
なのでCBの目の前がぽっかりと空く。
もうひとつ、前半42分。
今度はスローインから、ブライスが中央に流れて受ける場面。
ブライスのマークにはCH29番エスーゴがいるが、またしてもCH20番ロドリゲスが出てきて対応。
結果、やっぱり中央がぽっかり空く。
ここが空く理由は、ラス・パルマスの守備設計にある。
ラス・パルマスから見て左サイドにボールがある場合、右の外が空く。
SH19番サンドロがその対応に当たるルールだが、攻守が切り替わる度に上下動するのは体力的に無理がある。かといって、戻りが遅ければ大ピンチ。
だからラス・パルマスは、このような状況ではまずなによりもサイドチェンジさせないことを優先する。
なので久保やブライスのカットインに対して、CH20番ロドリゲスは横からプレスに来るし、それゆえに斜めのパスで中央が空く。
ソシエダが前半に見せた崩しの多くは、こうしたサイドから中央という形だった。
これもそのひとつ。
後半はラス・パルマスが左SB3番マルモルの位置を上げ、得点を取りにくるスタイルにシフト。
そのおかげで前半にはほとんど無かった、ロングボール&カウンタープレスが何度か見られた。
カウンタープレス用ロングボールの見極め方
今回のマッチレビューはこの辺で唐突に切り上げて、ちょっとロングボールに関して考察しておきたい。
ひとえにロングボールと言っても、その中には違いがある。
この試合でソシエダが見せたロングボールを3種類に分類してみた。
サイドチェンジ用のロングボールに関しては説明不要ということで、次へ。
裏抜け用
前半20分。
スベルディアからオヤルサバルに出されたロングボール。
これを裏抜け用とするのは、周りが同じ方向を目指していないから。
当然セカンドボールに対するプレスは掛からない。
カウンタープレス用
一方でカウンタープレス用は周りも同じ方向を目指す。
後半14分。
セカンドボールに対してプレスが掛けられるように動いている点が、見分けるポイント。
なので前半最大のチャンスはセルヒオ・ゴメスの素晴らしい裏抜けと、アゲルドの正確なキックから生まれたチャンスということになる。
(そこから再生されます)
決まっていればなぁ…
今回は以上です。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。