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【レビュー】完敗 EL第7節 ラツィオ - レアル・ソシエダ

ヨーロッパリーグ(EL)第7節。
レアル・ソシエダは、リーグフェイズで現在首位を走る強豪ラツィオとのアウェイ戦に臨む。しかもラツィオはELではターンオーバーを使うことが多く、それでいての首位。ちょっと格が違う?

なおソシエダは12位。
9位以降だと決勝トーナメント進出のプレーオフに回ることになり、試合数が増える。できればこの試合で引き分け以上、さらには最終節PAOK戦に勝ってストレートインを決めたいところ。(引き分けだとちょっと厳しいかも)

EL前節、ディナモ・キーウ戦はこちらから



チームコンディション

ウルコがエスパニョールにレンタル移籍。
やっぱり選手は試合に出てなんぼなので、素晴らしい選択だと思います。


スターティングメンバー

両チームともにターンオーバーは無し。


試合結果

 1ー3

得点者:バレネチェア

退場者:アイエン(29')

チームスタッツ

数値は FotMob.com より

ラツィオのビッグチャンスは全て前半。

シュート位置

前半

ソシエダは右

後半

バレネチェアのおかげで溜飲が下がった

個人スタッツ


試合内容

ポジションの循環

ラツィオのビルドアップの話から。
スタートは4−2−3−1。

(見やすいようにDMF2人の色を変えた)

CBがプレスを受ける場面で比較的多く見られるのは、ここから片方のDMF(主に6番ロベッラ)がSBの位置に下りてくる形。

(8番ゲンドゥージが右に落ちるパターンもある)

この時、左SB30番タバレスは高い位置を取りに行き、サイドに張っていた左SH10番ザッカーニはハーフレーンに移動。ポジションの循環が起きている。

あるいはDMFがCB間に下りてくるパターン

今度は両SBが上がり、両SHは絞る。前線の5レーン全てに人を配した3−1−5−1のようになる。

特徴的なのは、こうした4バックor3バックからのビルドアップの際に、いくらでも人が入れ替わるところ。

下図はEL第6節、アヤックス対ラツィオの試合から。

(本当は出場している選手が違うけど、分かりやすいよう今回のメンバーに置き換えている)

場面はDMFが2人とも下りてきて最終ラインを形成しているところ。
ここでもSBからSH、OMF19番ディアへとポジションの循環が発生。DMFが空けた中央のスペースを使うまでの流れが出来ている。

さらにはGKがCBのように振る舞うなんてことも。

両CBをDMFの位置に上げ、GKとDMFで擬似的な4バックを形成している。

ラツィオがすごいのは、これだけトリッキーに動きながらもそれによってどこにスペースが生まれるのか、どこで位置的優位を作るのかという共通理解がしっかりと浸透しているところ。

強い理由がよく分かる。



ハイプレスは掛かるのか

そんなラツィオのビルドアップに対し、ソシエダがどうハイプレスを掛けるのか。というのがこの試合のキーになる。

だが、そもそもの話をすれば、これほど動きの多いラツィオのビルドアップにハイプレスを掛けるのはかなり難易度が高い。ハイプレスよりもミドルブロック(あるいはロールブロック)で構え、ある程度の前進を許したところからディフェンスを始める方が、守備の複雑さは軽減される。

だから例えばマドリーのように、攻撃陣による前線でのプレスが弱く、自陣に引き込んでからカウンターというスタイルのチームだと、おそらくラツィオとの相性は良い。

でもソシエダはそういうチームではない。
ハイプレスから相手の狙いをくじき、試合のリズムを作ることで、強敵相手にも結果を出してきた。当然この試合にしたって、ハイプレスをせずにミドルブロックなんていう選択はありえない



前半3分。
ラツィオに最初のビルドアップ局面が訪れる。

(CBがGKにパスしてスタートというのがラツィオのテンプレ)

ソシエダは両SBアランブルとアイエン、それとスビメンディにだけマンツーを設定。前5人(オヤルサバル、久保、ベッカー、スチッチ、ブライス)で6人+GKへのプレスに当たる。

まずは久保が右を切るようにプレスを掛け、ボールを左サイドに誘導
この時、オヤルサバルはまだ中央にポジショニング。DMF6番ロベッラへのパスコースを消す。

GKから右CB34番ジラへのパスを機に、オヤルサバルがプレスを掛ける。
後ろもこれに連動してスライド。

片側にプレーエリアを限定することで、数的同数の状況でのプレスを実現できている

この時のソシエダの注意点は、絶対にサイドチェンジをさせないこと。

(こんなのは避けたいという例)

仮にハイプレスを抜けられ逆サイドに展開されると、右SBアランブルは後ろでマンツーを掴んでいるため、左SB30番タバレスに誰も対応できなくなる。


こちらは前半7分、ラツィオのスローインのシーン。
ソシエダはやはり片側に人を集めて局面を圧縮。高い位置からのプレスを試みる。

(サイドチェンジを防ぐため、久保もこれに寄っている)

プレスはしっかりと掛かっていたが、不運にもセカンドボールをDMF8番ゲンドゥージに収められ逆サイドへ展開される。

そうなると久保が長い距離を走らなくてはならなくなる。しかもラツィオの左SB30番タバレスはやたら速い。
ソシエダとしては、攻撃時のために久保のスタミナはなるべく温存しておきたいところ。ハイプレスをかわされた時の代償が大きすぎる

その後も何度か左サイドでのプレスをかわされ、久保が長い距離を走らされることになってしまった。


さて、ここまでがDMFのポジションを移動させてこなかった例となる。

前半10分。
今度はDMF6番ロベッラがCB間に下りてくる。

オヤルサバルと久保はプレスをやめてストップ
イレギュラーな形ではハイプレスをしないという選択をしたようだ。

6番ロベッラをマークしていたスチッチは、そのままついていくと中央のスペースを狙われかねないので、とどまって中央のゾーンをケア。

ただ、それに対するラツィオの反応はとてもスムーズ。

フリーになっているCB(SBではない)13番ロマニョーリを経由し、ピン留めしているアランブルの裏を狙う。やり慣れてる感がすごい。


もうひとつ。
今度はDMF8番ゲンドゥージがCBとSBの外に下りてくる。

イレギュラーなせいか、ここでもやはりソシエダのプレスの足は止まる

ビルドアップのバリエーションをいくつも持つラツィオに対して、ソシエダは特定のパターンでしかハイプレスにいけない。ボールの奪いどころが定まらないから、ポジトラ時の足並みも揃わない。ミスも増える。

主導権を握れるわけもなく、完敗を喫した


総評

勝敗を分けたポイントはいくつかある。
早い時間帯での失点も、前半途中でのアイエンの退場も、その中のひとつであったことは間違いない。

でも一番は、準備不足ではないかと思われる。

直前のバレンシア戦から中3日。しかもアウェイ。
ラツィオの特殊なビルドアップへの対策を落とし込むには、時間的に無理があった。

この先もし決勝トーナメントで再び当たったら、もし準備の時間がしっかりと取れれば、全く違う試合を見せてくれるはずと信じている。



今回は以上です。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

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