【レビュー】3バック型ビルドアップの真意 第19節 レアル・ソシエダ - ビジャレアル
24-25シーズンの前半戦最終節。
レアル・ソシエダはホームに難敵ビジャレアルを迎える。
現在の順位はソシエダ7位、ビジャレアル5位。
来季のCLやEL出場を目指すソシエダにとって、いずれ順位を上回らなければならない相手。
ここで勝って、ぜひとも差を縮めておきたいところ。
前節、セルタ戦はこちらから
チームコンディション
スビメンディとアゲルドが復帰。
スベルディアが累積によりお休み。
ベッカーは引き続きチームを離れている。
スターティングメンバー
左WGにはセルヒオ・ゴメスを起用。
ビジャレアルはピノが累積、アジョセ・ペレスが怪我により欠場。
試合結果
1ー0
得点:久保建英
チームスタッツ
堅守を誇るソシエダらしい勝利。
シュート位置
前半
後半
後半はかなりシュートを打たれたが、一応ビッグチャンスは0に抑えた。
個人スタッツ
久保が活躍する試合はやっぱり楽しい。
試合内容
序盤からの仕掛け
ビジャレアルの守備は4−4−2のミドルブロック。
その並びはかなりコンパクトで、中央をきっちり閉めている。
なのでソシエダの両SBアランブル&アイエンはほぼフリー。
またビジャレアルは、ソシエダに後方でのパス回しをかなり許容しつつも、スビメンディへのマークだけは徹底。常に18番ゲイェか15番バリーがスビメンディの前に立ってパスコースを消している。
これに対してソシエダは、無理に中央を使おうとはしない。
前半4分。
ブライスが縦に抜け出すことで久保のマークを一瞬引っ張り、アゲルドから久保へのロングパスを通す。
SH16番バエナがヘルプに来る前に、久保は縦に仕掛けてクロス。
中には4人(オヤルサバル、ブライス、スチッチ、セルヒオ・ゴメス)がしっかりと入ってきていて、準備していた攻撃であったことが窺える。
直後、前半5分。
今度は久保が引いてきたところから、ブライスがその裏を狙う。
ブライスはCB5番カンブワラを釣り出し、クロスを上げる。
中には前線の3人(オヤルサバル、スチッチ、セルヒオ・ゴメス)に加えて、少し間に合わなかったものの左SBアイエンまで飛び込んでくる。
ビジャレアルにピッチの中央をブロックされているものの、ソシエダはそれほど攻撃に苦慮している様子はなく、しっかりと久保を絡めながら攻撃を展開していく。
ボールを失った時のトランジションも早く、積極的なプレスバックも見せ、序盤の主導権を握る。
ビジャレアルがカウンター以外でさほどギアを上げてこないことも手伝ってか、前半10分にしてソシエダは次の段階に移行。
スビメンディをCB間に落として両SBを上げる3バック型のビルドアップに切り替え、攻撃の人数を1人増やした。
3バック型ビルドアップの真意
ソシエダが3バック型のビルドアップを見せたのは第11節オサスナ戦振り。
その試合でカウンターのリスクを露呈して以来、すっかり見なくなったので守備重視のアルグアシル監督はてっきりもうやらないものかと思っていた。
それをこのタイミングで再び見せた真意について考えてみたい。
もちろんひとつには、攻撃の人数を増やすという最も分かりやすい理由があるだろう。ただもしそれだけならば、その前の段階で、攻撃が上手くいっていなかったという前提が必要になる。
だがこの試合においては、そんなことはない。
ビジャレアルの守備が手薄なサイドを起点にしっかりと形を作れていたし、ゴールにも迫れていた。これじゃダメだと、たった10分で判断したというのは無理がある。
それでも、リスクを冒してまで攻勢を強めたかった理由には、ビジャレアルのゲームプランを壊す狙いがあったのではないか。
下の図は、今季のラ・リーガにおける両チームの得点(Scored)と失点(Conceded)を時間帯(横軸)ごとに表したものになる。
ビジャレアルが終盤に最も多くの得点(11点)をあげているのが見て取れる。
反対に、わずかではあるが序盤〜中盤にかけては失点が多い。
仮に75分まで点が入らず進んだ場合、ソシエダは主力を下げる時間ということもあり、勝ちの目は一気に低くなる。
ビジャレアルはアジョセやピノがいないとはいえ、ベンチには前節レガネス戦で途中出場から点を取った2人、ジェラール・モレーノとパウ・カバネスが控えている。(どちらもアディショナルに得点)
加えて、ソシエダにポゼッションを許す現状。
序盤〜中盤までは守備にウェイトを置き、終盤で一気にギアを上げるというビジャレアルの狙いが透けて見えるかのよう。
そんなビジャレアルに対し、ソシエダはある程度のリスクを抱えることは承知で、攻勢を強める方向にシフトした。
そのまま押し切って1点を取るも良し、ビジャレアルもペースを上げてきてオープンな展開が増えるならそれでも良し。ピッチ中央でボールを奪い合う局面が増えることは、プレスの強度やトランジションの早さで勝っているソシエダにとって有利に働く。
そんな思惑があったのではないか。
結局は前半の内にゴールを奪えなかったが、あと1歩というシーンを何度か作り出すことは出来ていた。
いつもとは少し違うハイプレス
いったん、ディフェンス面の話へ。
ソシエダはいつものようにマンツーマンを組んでのハイプレスかと思いきや、少し様子が違う。
ここ数試合の流れでいけば、SBアランブルが1列前へ出て左SB23番カルドナのマークにいくところ。この試合では左SH16番バエナを優先するケースが何度か見られた。
これはおそらくビジャレアルの攻撃を考慮してのこと。
ビジャレアルはピボーテ2枚の位置を低くし、その前のエリアで意図的にスペースを作っている。
そこに前線の16番バエナや18番ゲイェ、時には15番バリーが入ってきて受けたところから、一気にスピードを上げるという形を得意としている。
そもそもの出し手である10番パレホと14番コメサーニャが繋げなさそうな時は、無理してビルドアップはせずロングボールで前線に送ることが多い。
そういった点を考慮し、ソシエダはハイプレスを掛けながらも、いつものような完全マンツーマンとは少し異なる形をとったのではないかと思われる。
カウンター狙い
左SB23番セルジ・カルドナへの対応については続きがある。
前半42分、自陣でミドルブロックを構えている場面。
警戒すべき中央のエリアではコンパクトなゾーンを作っている。その代わりに、オーバーラップしてきている23番カルドナがノーマークになっている。
23番カルドナはこのシーン以外でも頻繁に上がってくるが、ソシエダにはあまり気にする素振りはない。むしろこのオーバーラップをカウンターのチャンスと捉えていたような節がある。
この場面の直後、ボールを持っていたCB8番フォイスのパスミスから攻守が入れ替わる。
ソシエダの前線がスピードを上げる中、飛び抜けて久保の切り替えが早い。明らかにカウンターを狙っていたことが分かる。
この延長にあるのが、得点シーン。
直前がフリーキックからの流れだったこともあり、23番カルドナに加えてCB5番カンブワラも上がっている。ソシエダとしてはピンチながらも、カウンターのチャンスにもなりうるシーン。
そこで冷静にカウンターに備えていた久保のポジショニングが光る。
このロングカウンターを1人で決め切ったスピードとテクニックは、間違いなくワールドクラスですね。
先制点をあげた後も、ソシエダはハイプレスを継続。
攻守4局面で高いインテンシティを見せ、守勢に回らず、追加点を奪おうとする勢いを感じさせる。
最終盤はやはりビジャレアルに何度も攻め込まれたが、数的不利の場面は作らせなかったし、最後まで懸命にプレスを掛け続ける姿勢は勝者にふさわしいものだった。
アイエンのポジショニングの自由さ
アイエンのポジショニングがかなり気になったので、書き残しておきたい。
スビメンディがCB間に下りた時の動きはすでに取り上げた。
続いては前半30分過ぎ。
スビメンディの横に入ってピボーテ2枚に。
その後はさらに前へ。
もちろん前に出る動き自体は、監督からの指示で間違いない。
ただ、アイエンは頻繁に周囲を確認してポジションを修正している。WGの位置が低ければ自分が前に出るし、味方の動きと被りそうな時はあっさりとスペースを譲る。
第15節ベティス戦で先制点をあげた時のカウンターにしても、この試合で序盤からクロスに合わせにくるプレーにしても、攻撃面で気が利くプレーを見せることが多い。
左SBとしての序列がハビ・ロペスより上がっているのも、もしかしたらそういった点なのかもと思ってしまう。
今後の活躍にも期待しています。
最後にハイライト載せておきます。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。