【レビュー】 オヤルサバルのポジショニングの妙 第34節 ソシエダ - ラス・パルマス
勝ち点57〜63。
6位フィニッシュのためにはどの程度の勝ち点が必要になるのか、直近10年のデータを検証してみた結果だ。
前節マドリー戦で惜しくも負けてしまったソシエダは、現在勝ち点51で残り5試合という状況。最低でもあと2勝は必要になるだろう。バルセロナ、アトレティコとの対戦が残っていることを考えると、今節ラス・パルマス戦はもはや引き分けすらも許されない状況と言える。
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コンディション
ブライス・メンデスが復帰
スベルディアが累積により出場停止
スビメンディが怪我で欠場
スベルディアが出れないのは痛いが、このタイミングで累積がリセットされる点を考えればポジティブ要素。ブライスの驚異的な回復力に驚かされるのは今季2度目。
それはさておき、スビメンディの怪我がやばすぎる。次のバルセロナ戦も欠場濃厚とかなんとか…
スターティングメンバー
ソシエダはいつもの4-3-3。
怪我のトラオレ、スビメンディのところにオドリオソラとトゥリエンテスをそれぞれ配置。オヤルサバルはいつものセンターではなく、左WGでの起用となった。
試合結果
スタッツ
交代
アンドレ・シルバ → バレネチェア
ブライス・メンデス → ザハリャン
ハビ・ガラン → アランブル
オドリオソラ → アリッツ
ベッカー → 久保
得点
オウンゴール
ベッカー (アシスト:ブライス)
試合内容
ソシエダとラス・パルマスは戦術的に似ている。
オフェンス時は4-3-3のようなワイドに開いた形を取りつつ、後方から丁寧にビルドアップをしていく。守備時には4-4-2に変形し、相手のビルドアップに対して前線からプレスをかける。 もちろん細かい部分ではだいぶ違うが、お互いのスタイルを出しながらの攻防は興味深かった。
ソシエダのビルドアップの部分を少し細かく見ていく。
ソシエダのビルドアップ(旧)
ここ数試合、ソシエダは左サイドからのビルドアップが多い傾向にある。
右SBから両CBを経由し、左のハビ・ガランから縦や斜めのパスを入れる。パスが出せない時はやり直すのが普通だが、ガランの場合はそこからドリブルを仕掛けるケースもある。このドリブルでの前進はガラン特有のものであり、キーランやアイエンが左SBの時には見られない。
ここでのポイントはソシエダのディフェンスラインがあまり深さ(CBとSBの縦方向の距離)を作らないこと。プレスにくる相手の人数をなるべく多く引きつける目的と、ミスがあった時のリスクを考慮してのことと思われる。
もうひとつはこのパターン。
ハビ・ガランが上がったところにスビメンディが下りてきて受ける。こちらもよく見るシーンだと思う。いずれにせよ左サイドからの展開であり、深さはあまり取らないという点も共通している。
ラス・パルマスの狙い所
それを踏まえた上で実際のシーンを見てみよう。
場面は、レミーロからビルドアップが始まるシーン。いつも通り、プレスが来るまでボールは出さずにのんびりと待っている。
ラス・パルマスは11番のMFベニートが中に絞ってくる。それを確認した後、17番FWムニルが右サイドへの展開を阻むべく横からボールにプレスをかけてきた。
ムニルのプレスでル・ノルマンとオドリオソラを孤立させ、最終ラインのエリア(紫)では守備者の数的優位を維持し、ビルドアップのエリア(緑)で数的同数を作って奪い切る、という狙いだろう。トゥリエンテスへの縦パスは11番がケアしている。左からのビルドアップを誘っていることは明白だ。
ソシエダのビルドアップ(新)
(新)と銘打つほどの物ではないのだが、分かりやすく対比として。そんなことよりも、この結果がどうだったかと言うと。
ガラ空きになったスペースへのフィードを選択。先制点が入るまでのおよそ30分間に3回もこの形からの前進が生まれた。
一見するとラス・パルマスのプレスがずさんなようにも映る。だがそうではない。ソシエダの対応力の高さを評価すべきだ。ビルドアップの形は持ちつつ、それを狙われている時には次の手へ移行できる。しかもハーフタイムを挟んだわけでもなく、試合中にさらりと対応してみせた。準備と戦術理解がある証拠と言っていいだろう。
ラス・パルマスさんのおかげで良いものを見せてもらえた。
オヤルサバルのポジショニングの妙
もうひとつ、どうしても記しておきたいプレーがある。
この試合左WGで起用されたオヤルサバルだったが、バレネチェアのように大外で張るということはほとんどしなかった。
パチェコからのビルドアップのシーン。
もうすでにサイドにいない。ここからメリーノがボールを受けに流れる。その動きを見てオヤルサバルも動き出す。
きれいにディフェンス間でボールを受け、前を向いて基点となった。こうしたセンターとサイドの間、ハーフレーンでの顔出しが頻繁に見られた。
これに対してラス・パルマスは右SBの4番とボランチの8番で、この動きに対応し始める。
おそらくは15番のセンターバックがアンドレ・シルバをマークし、もう1人のCB(23番)は極力フリーでいられるようにとの狙いだろう。
オヤルサバルはそれに気付いてか、今度は2トップのようなポジショニングを取る。
得点のシーンだ。
トゥリエンテスの素晴らしいターンと持ち出しを受けて、一気に前線のスピードが上がる。トゥリエンテスの出したスルーパスに、ベッカーはダイレクトでクロスを中へ流し込んだ。
速攻のシーンで、ターゲットはいつもならセンターの1枚しかいない。だが、今回はオヤルサバルのポジショニングが功を奏し、2枚で押し込めた。
もしオヤルサバルが左サイドに張っていたら、中央はアンドレ・シルバ1人に対し両センターバックが残る形になる。おそらく片方(15番)は出し手のベッカーのところへプレッシャーを掛けにいけただろう。
スピードで圧倒的な優位性を見せていたベッカーを、右サイドで孤立させるためのポジショニングだったのかもしれない。
偽ウイング
左WGが中に入ってくれば、必然的に外のレーンでスペースが生まれる。この試合ではあまり見られなかったが、ガランの攻撃参加もより効果的になってくるだろう。そういう意味でも左WGにオヤルサバルはとても良い。
いやウイングにいないんだから、偽ウイングか。絶対マッチすると思う。
じゃあ、センターフォワードはどうするの?
というところで話は終わる。
次節バルセロナ戦に向けて
スベルディアが左大腿二頭筋を負傷したようだ。
どの程度かは定かでないが、少なくとも数試合の欠場を余儀無くされるとのこと。スビメンディも次節には間に合わない。
ポジティブ要素はベッカーとトゥリエンテスの調子が良いこと。
一方のバルセロナも好調とは言い難い。前節ではジローナに敗れ、1ポイント差ながら2位を明け渡してしまった。マドリーの優勝はもはや仕方なかったとはいえ、だからこそ、せめて再びジローナを抜いて2位でシーズンを終わらなければという使命感があるだろう。
激戦必至の試合だが、もう後が無いソシエダにとって、それでも勝ち点1を奪えないと今後がきつい。
なにせベティスが迫っている。
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