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徒党を組む


バンドができるかもしれない。友人の紹介で地下室で夜な夜なギターを弾いているというギター弾きを紹介してもらった。彼は相対性理論真部脩一を敬愛しているミックス、録音、作曲を一人でこなす所謂宅録野郎であった。翻って俺は作曲歌唱以外はてんで能の無い人間なのでまさに喉から手が出るほど求めていた人間だった。咽頭から突き出る唾液まみれの手で握手せざるを得なかったほどである。
彼の家に行くと彼はおらず連絡すると勝手に入って良いとのことだったので、引きこもりの得意技である『音殺し歩き(癖になってんだ)』で侵入し地下室へ。やたら鳴りの良いアコギを勝手に弾き、andymoriの1984を熱唱しているとそれを聞いた彼の母君が地下室に入ってきてしまい非常に気まずい状況になった。丈がバカに短いTシャツを着た謎のメガネ男性が息子が不在の息子の部屋で歌を熱唱しているのだ。後ろに回されていた両手には拳銃が握りしめられていたに違いない。だが、母君とは前回お会いしたことがあったのでことなきを得た。
彼が到着したので早速「入眠計画」と言う曲を録音マイクにぶち込んでみた。君島大空の遠視のコントラルトを意識して作った90s00sのグルーブを搭載した初めてのバンド向けに作った曲だ。歌とアコギを録り終えて、ギターを取る段階になってギターの肉付けを彼に投げてみた。すると夥しい数のエフェクターボードをいじり出し、スーパーカーのようなギター音が部屋の空気を一掃した。みるみるうちにギターフレーズが展開されていき、ギターを四つ重ねるという怒涛のギター四段活用をpcの画面に閉じ込めた。
相談して曲の展開を変えたり、理想の音を口頭で伝えて再現してもらうという作業がとても楽しく夢中になっていてると午後1時だったはずの時計が9時を回っていた。当初想像していたものよりも明らかに良い音が出来上がっていて震えた。恐ろしきバンドアレンジ魔改造。
休憩中にタバコを吸いながらミッシェルのようなバンドもやりたいと言う話をすると彼がアベフトシになりたいボーイであることが判明する。すかさずチバユウスケの歌い方をかなり意識して作ったデモを聞かせる。気がついた時にはもうバンドをやろうという話になっていた。

彼にバンドアレンジしてもらった俺の曲をサンクラに上げたことがあったが、正月鬱で前のアカウントを消してしまったからもう聞けなくなってしまった。正直いえばそのアレンジはあまり好みではなかったし、彼のオリジナルもそこまで惹かれるものはなかったが、最近録り直したと言う彼の曲を聴くとレベルが数段上がっていた。もうこいつしかいないと思った。




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