講義ノート①『男と女の文化史』Week1:源氏物語の世界(gacco)
★①源氏物語の3種の写本…3種とも異なる表現が入り混じることもあった。写本されているうちに様々な写しが存在してしまい、編者も苦労したことが編者の手記などから読み取れる(『原中最秘抄』など)
・大島本(青表紙本)⇒室町時代に書かれた本に基づいている。藤原定家が忠実に写した(数冊しか残っていない)。現在我々が読んでいる最もスタンダードなものがこれに基づいている。
・河内本⇒源光行・親行が校訂したもの。中世ではむしろこちらが多く流通していた。
・別本⇒現存最古の写本。13世紀までさかのぼることができる
★②なぜ様々な源氏物語が生じたのか?
・写本している途中で、写本している人が勝手に表現を書き加えた
・紫式部自身が作っているオリジナルの「源氏物語」が、1つではなく、複数あった(←『紫式部日記』から読み取れる)
③★失われた、幻の巻
・玉鬘十帖には、『桜人』というスピンオフ的作品(玉鬘に貴公子たちが求婚する)があった可能性がある
・藤原定家の注釈書『奥入』(引き歌の出典などを書いたもの)には、『輝く日の宮』という幻の巻がある。
└『桐壺』から『帚木』までの、13歳~16歳の光源氏は描かれていない。『輝く日の宮』にもしかしたらそれがあったのかもしれない(第2巻だったのかもしれない)。輝く日の宮とは、藤壺を指す言葉。研究者は、その空白期間そのものを「輝く日の宮」と呼んでいるのではないか、としている人が多い。
・失われた巻『巣守』の巻について、源氏物語系図に見ることができる。巣守宮という女性がいて、薫や匂宮と関わりがあった女性である可能性が高い。
★④創作されたスピンオフ作品・続編
・『幻』のラストから『匂宮』までの8年間の空白(光源氏が死ぬところが含まれる)を「雲隠」と呼ばれていて、この間の物語を空想して6帖創作されている。今でいうと同人誌みたいなものかな。
・『山路の露』は源氏物語の続編作品。序文で、「続編ではないよ」と断言して始まっている。浮舟が入水自殺を生き延びたことを薫が知ってしまうのが『夢の浮橋』のラストだったが、この作品中では浮舟は母・薫と再会を果たす。
・浮舟は「手習いの君」とも呼ばれており、手習いは「手習い=自分自身との会話」を象徴するものであり、自分の中にこもって苦悩する浮舟を描いていた。しかし『山路の露』では浮舟の手習いシーンは出てこず、そうすることによって、自分の殻を破り世界と向き合っていく彼女の様子が描かれていると言える。
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