途上国の宇宙感を映し出すプラネタリウム『SocialCompass活動レポート』
カンボジアの子どもたちが考える宇宙とは?
カンボジアやミャンマーの子どもたちに対して環境問題啓発していく上で、『僕たちの地球を守ろう』という概念が理解できるのか、という疑問にぶつかった。
なぜなら、カンボジアでは理科教育が進んでいない。
カンボジアの子どもたちは地球が丸いことも知らないかもしれない。
地球を知らないのに、『僕たちの地球を守ろう』は理解できないだろう。
ということは、夜空の星々が宇宙だということも知らないかもしれない。
そこで実際カンボジアの子どもたちに、宇宙や地球はどうなっているのか聞いてみることにした。シェムリアップの田舎の子どもたちを対象に、宇宙を描くワークショップを行ってみたのだ。
空の足と子どもたちの宇宙
カンボジアには「空の足」という言葉があるらしい。世界の端っこに、空を支える足があるという考え方みたいだ。つまり、世界は真っ平らの天道説。
実際にカンボジアの田舎の子どもたちを絵を描きながら、宇宙や空を描いてもらうと、やはり地球は平面だと思っている子どもたちは多かった。
しかし、子どもたちに絵を描きながら宇宙や地球について聞いてみると、色々と意見が出てくる。同じ平面でも、円形の平面だと思っていた子や、四角い平面だと思っている子もいたのだ。少し街の子どもは球体だとドヤ顔。
いつも仲が良い友達同士でも、宇宙や地球について話題を話すことがなかったのだ。宇宙の話が白熱すると、子どもたちから雷はなぜ発生するのかなど、質問も飛び交う。
まさに宇宙ファシリテーションだ。
「空の足」を誘導するために書いてみた日本人の大人の絵
それならば、とカンボジアの「空の足」について聞いてみる。しかし「空の足」という言葉はみんな知っているが、実際に比喩の表現で実際に足があるわけじゃないと子どもたちに諭される。意外にそこはカンボジアの子どもも現実的なのだ。
子どもたちの話を聞いていると、カンボジア特有の仏教感も合わさってた。仏様が作った世界だとか、守られているなどの意見もでる。聞いているこちらも関心させらる。
円形の紙に地球を描くワークショップ
カンボジアで作ったプラネタリウムドーム。しかし、プラネタリウムといっても、西洋文化の西洋星座を知るプラネタリウムをやっても仕方がない。
カンボジアの子どもたちが考える宇宙観をを形にするプラネタリウムを作りたい。
そこで、丸い紙に自分たちが住んでいる世界を描いてもらうことにした。
細かく地図のような街を描いてくれる子、そうかと思えば家一軒だけの子。
それぞれの子どもたちの描く世界の広さを表現してもらう。自分の住んでいる世界を惑星に見立てたてて、プラネタリウムで上映するのだ。
カンボジアだけではなく、ミャンマー、ラオス、ルワンダなどの子どもたちにも同じことをしてもらった。各国でアニメーションワークショップをした際に、キャラクターとともに丸い紙に世界を描いてもう。
見ている人は、世界中の国の子どもたちが描いた星々を見て回る宇宙旅行と体験することができるのだ。
子どもたちの星々をみるプラネタリム
ストーリー的には地下施設のプロジェクションマッピングと同じように、子供たちが描いた地上の風景から始まる。車が走る普通の風景に、大雨が降り、水没してしまう。そしてロケットが打ち上がり青空の向こうへ抜けると、夜空が広がるのだ。
そこに現れる星々の点々。その星々に近づいていくと、自分たちの住んでいる地球のように大きくズームしていく。すると、その上には人や動物たちが住んでいる。そして、その中のひとつの惑星へ迫っていくと、最初風景に戻ってループする。
今まで、カンボジアの孤児院や学校、そしてイベントなどでこのプラネタリウム上映を行ってきた。前日にアニメーションワークショップを行い、そこで描いた星々をプラネタリウムドームで鑑賞する。
プラネタリムドームはいってみれば、みんなで鑑賞ことができるVRモニタだ。Oculusなどのヘッドマウントディスプレイは、ひとりでしか見ることができない。しかしプラネタリムならば、バーチャルリアリティというこれからの時代のテクノロジーをカンボジアの子どもたちにも触れてもらう機会になるかもしれない。
今まで、子どもたちの作ったアニメーションは作って終わりということが多かった。自分自身で作ったアニメーションをみんなでプラネタリウムで鑑賞し、星々としてアーカイブしていくことができれば、我々のワークショップをやり続けている意味があるかもしれない。
とはいえ単純に、みんな驚き、喜んでくれた。
そして準備を手伝ってくれた人々や、自分たちも毎回楽しんでいる。
世界中のたくさんの国々で、自分の世界を丸い紙に落とし込むワークショップは今後もソーシャルコンパスのライフワークとして続けていくつもりだ。
宇宙という規模でものを考えて、国境なんてものはない地球を意識していってほしい。それが『僕たちの地球』を意識して、環境問題はもちろん、戦争のない平和な世界を作る一歩になると固く信じている。
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