WhiteCanvasカンボジア2021ゴールド賞受賞作品【SDGs×ART×ASIA】
WhiteCanvasカンボジア2021のゴールド賞をしたMorn Chear氏と、オフィスでまで来て頂いた。
トロフィーと賞状、賞金をお渡しする。
Morn Chear氏の受賞作品は、『Metamorphosis』と題された版画作品。
力強いストロークと、メリハリが効いた赤と白と黒のバランスは目を惹く美しさだ。
そして、大きな羽を持った自画像には、『手』がない。
『手』を使って表現をするアーティストなのに、Morn Chear氏には『手』がないのだ。
1990年にカンポット州に生まれたMorn Chear氏は、二十歳の頃に感電事故で両手を失う。
成人してから利き手どころか両手を失うということは、想像を絶する精神的な苦しみや肉体的な苦労を経験したことであろう。
しかし、障害者支援をする英国系の慈善団体Epic Artsで、芸術の的表現に出う。
アートセラピーの一環で、アート活動を始めた。
当初は、コンテンポラリーダンスで表現をしていたMorn Chear氏だったが、次第にビジュアルアーツに傾倒していく。
今では、両肘を器用にうまく使い、ペンや彫刻刀を扱っている。
そばで見ているこちらが感心するほどだ。
だから、創作活動だけではなく、自分自身の身の回りのことや、運転なども一人で行うことができるようだ。
逆に「できないこと」を聞いてみると、シャツのボタン閉めや靴紐をしばらることができないと教えてくれた。とはいえ、シャツはマグネット式ボタンの特注を服を着ていて、靴も靴紐がないものを選んでいる。
驚くほど、自由自在に両肘や体を使い、なんでも器用にこなすことができるのだ。
そんな、Morn Chear氏がなぜ『版画』という表現を選んだのであろうか?
なぜ、『絵画』ではなかったのであろうか?
それを聞いて、さらに驚かされることになる。
腕の事故とは全く関係なく、『色覚障害』を患っているのだ。
当初、自分でも自覚障害はなく、絵の具の色を見て細かい差が理解できないことに気がつく。
赤や青など、基本的な色は区別ができるのだが、細かいグラデーでーション差が判別できないのだ。
だから『絵画』の道ではなく、『版画』を選んだ。
つまり、ダイナイックな力強いストロークと、メリハリが効いた画面構成は、『色覚障害』の影響があって故の作風なのだ。
腕を失い、色も判別できない。。。
そんな障害を抱えながらも、Morn Chear氏の作品はゴールドを受賞した。
『アート』という自己表現が、Morn Chear氏に美しい羽を与えた。
自由に飛び回ることができる真っ赤な羽。
Morn Chear氏は、今後、世界に大きく羽ばたいていくことは間違いないことであろう。
こちらの記事でもWhiteCanvasについて書かれています。