chatGPTの連想力
最近chatGPTに連想力・妄想力を助けてもらえるんじゃないかと思って、プロンプトをいくつか試してみました。
その試行錯誤で色々わかったこともあったので、それをまとめてみようと思います。
プロンプトの型を発掘
プロンプトについては世の中にたくさん事例が転がっているので、それを応用させていただこうと思い、私はここから拾いました。
https://prompt.quel.jp/prompt.php?pid=10058
いろんな事例を見るに、既知になってきているコツとしては以下のようなものが挙げられそうです
あなたは「こういうことが得意な人物ですよ」という設定を与える
踏襲してほしい事例を載せる
step by stepで考えさせる
ステップを区切り、途中結果を「変数1」に代入→さらに次のステップで活用させる
そこで、キャッチコピーを考えさせるプロンプトを応用して、次の2種類のプロンプトを作ってみました(GPT4でしか動かない)。
行動観察結果をインプットとして入れると、その行動が意味することや推測を想像した結果を返してくれる「ファインディングス支援プロンプト」
既存概念を再定義するような問いを作るための「言い換え支援プロンプト」
どんな結果が出せるようになったか紹介していきます。
ファインディングス支援プロンプト
なぜ作ろうと思ったか?
副業で、定性リサーチの一つであるエスノグラフィをレクチャーする仕事をしています。
街中で行動観察をした結果をグループワークで考察するフェーズがあるのですが、他人の行動の意味や背景をあれこれ想像するには幅広な経験値が必要だったり、グループのダイバーシティやチームワークが鍵を握ると感じることが多々ありました。
自分が行動観察して考察する時もそうだし、グループワークを受講生の皆さんに行ってもらっている時もそう思いました。
人は自分が生きてきた経験の範囲でしか、他人のことを想像できない。他人が自分と違う見解を持っている時、それが的を射ていると思っても、その人との関係性次第では素直に受け取れない時がある。また同質性の高いグループだと議論が発散せずスタックする。
人間のクリエイティビティを発揮してほしかったり、アイデアがたくさん出てくるランナーズハイな状態を作り出したい時に、なかなか頭が切り替わらない現場を見てきて、それで大事な機会が失われてしまうなら「機械がなんか変でおもろいこと言ってるぞ」という斜め上からの視点を提供することでモード切り替えができないか。
そんな課題感でした。そしてなかなか変でおもろいことを言う機械β版くらいは作れたんじゃないかなと思います。
プロンプト例(事例は抜いてます)
示唆のある出力が得られるように、ステップ・バイ・ステップで段階的に考えてください。
#前提1:ファクトとは観察した人の行動や観察現場で起きた事象を記録したものである
#前提2:ファインディングスとは、ファクトから想定される人の行動の目的、心理、行動原理、
その人にとっての意味合いを想像し言語化したものである
#ファクト:
#個数:3
あなたは人間観察の得意なエスノグラファーです。ある場所に行って、人間観察を行い、
さまざまな人の行動をファクトとして記録してきました。またそのファクトを解釈しファインディングスも出してきました。
あなたは{過去のファクト1}から{過去のファインディングス1}を想像したことがあります。
またあなたは{過去のファクト2}から{過去のファインディングス2}を想像したことがあります。
ファクトとファインディングスの関係性を学習してください。
#過去のファクト1:
〜〜事例を記載〜〜
#過去のファインディングス1
〜〜事例を記載〜〜
#過去のファクト2:
〜〜事例を記載〜〜
#過去のファインディングス2
〜〜事例を記載〜〜
#命令
{前提1}と{前提2}、{過去のファクト1}、{過去のファインディングス1}、{過去のファクト2}、
{過去のファインディングス2}をふまえ、{ファクト}から{個数}個の示唆に富むファインディングスが必要です。
これ以降の処理を10回繰り返します。
まず、{ファクト}から想像される主人公の性格や心理、行動の目的、行動の結果の意味を文章にまとめて、
変数{P1}に代入します。
次に、{ファクト}に登場する地名がどういう場所か、固有名詞は一般的にどのようなイメージを持たれているかを
想像します。次に、{ファクト}の主人公にとってその場所や固有名詞がどんな意味合いになるかを考えます。
次に、意味合いを文章にまとめて、変数{P2}に代入します。
次に、変数{P2}の環境が、変数{P1}にどのような影響を与え、{ファクト}の主人公がどんな体験をして
どんな気持ちになったか、心が動いたストーリーを考えます。次に、ファクトの主人公がどのような感動・
意味ある体験を得たかを文章にまとめて、変数{P3}に代入します。
次に、変数{P1}、変数{P2}、変数{P3}をつなげてストーリーにします。次に、要約して変数{P4}に代入します。
ここまでを10回繰り返して10個の変数{P4}を作ります。
10個の{P4}を下記の{評価基準}による評価値の合計値を変数{P5}に代入し、{フォーマット}に沿って
10個出力してください。さらに繰り返し番号の横に、評価値の合計が高いもの{個数}個に☆印を付けてください。
なお、男Aと女Bについてそれぞれ記述してください。
#評価基準:
・分かりやすさ
・面白さ
・オリジナル性
・他の9個と内容が似ていない
・ハッとした気づきがある
・人間の本質に迫っている
#フォーマット
・繰り返し番号
・変数{P1}
・変数{P2}
・変数{P3}
・変数{P4}
・変数{P5}
No repeat, no remarks, only results.
Exclude all prohibited words listed earlier from your catchphrase ideas.
in Japanese:
インプットとして入れたファクトはこちら。
chatGPTが出したファインディングス(抜粋)
人間の想像と近かったものはこちら。あるプロジェクトで観察した結果です(もう時効かなと思いますので掲載)。この時のグループワークでは、女性が男性ものを買ったので、プレゼントだろうと人間は考え、ブランド物の財布を選ぶ経験で関係値が深まる買い物体験だったのだろうと想像しました。
ここからはその発想は当時出てこなかったなと思ったchatGPTの結果を載せていきます。お財布を買ったのは実際は女性でしたが、そこが逆転しているものの、なぜお財布を買ったんだろうか、という想像としては斜め上の視点のものもあり、視点の広がりをもらえそうな気がしてます。
お互いの給料日に贈りあうという想像をしてくれました。当時の人間たちは、女性から男性への一方向のプレゼントだと思い込んでました。
こちらは、財布を買う=新生活のスタートというメタファーがあったりするので、そんな意味を含めてくれたようです。
このサプライズの発想はなかった!とはいえ、これはプロポーズは男性から女性にするものという概念をchatGPTが強く持っているのか、どうなのかは気になるところです。
評価基準を示して再度繰り返した結果(抜粋)
プロンプトの終盤に入れている自己採点の評価基準のうち、「面白さ」を増して再度やってみてと言った結果・・・
お台場のカップルの買い物体験の意味の推測が、斜め上すぎる視点から出てきました。さらにchatGPTによる自画自賛コメント付きです。
わかったこと
面白さを増した方の結果は、正直、まだ分析時のファインディングスとしては使えないかなという感じで、もう少しプロンプトのチューニングは必要です。
が、最初の出力結果の部分は、「なるほど、そういう背景でディーゼルにいたのかもしれないな」と思えるものがありました。
行動観察から推察していく時に、chatGPTが学習時に取り込んでいる色々な情報から、自分の想像力とは違う視点を得てさらに人間が想像を巡らしていくことはできそうです。
また自己評価基準をプロンプトで与えておくことで、その基準を様々に動かして「その発想はなかった」という方向に振り回してもらうこともできることがわかりました。
これは機械による発散支援はできそうということかなと思ってます。
グループワークでお互いを探り合うあまり最初の一言が出てこない時、こんなアホな発想を言って良いのかなと気にして言いづらい時、色々出尽くしてスタックしている時、chatGPTの斜め上の視点を含む広がりを持たせることで、色々な壁を突破できそうな予感がしています。
言い換え支援プロンプト
なぜ作ろうと思ったか?
副業のワークショップの中で、エスノグラフィに行く前に、既存の概念を再定義するような問いを立ててもらうようにしています。
その時に「言い換え力」が問われるのですが、これが普段端的な言葉で簡潔に表現することが求められるサラリーマンだとハードルが高いのです。
例として車をよく出していますが、車といった「箱に車輪が4つ付いた動くもの」という固定概念が頭の中にあるような言葉だと、どうしても既存市場を意識した発想になってしまいがちです。
そうではなく、「移動する」「交流する」「ワクワク」など、固有名詞ではなく動詞や形容詞で抽象度を上げた言葉をもとに「リデザイン」を考えてもらい、既存市場ではない新しい市場創造につなげる発想を支援したいと思っています。
そこで、膨大な言葉を知っているであろうchatGPTに言い換えを手伝ってもらったら良いのでは?と思って作りました。
プロンプト例(全文) まだβ版
示唆のある出力が得られるように、ステップ・バイ・ステップで段階的に考えてください。
#前提1:テーマは既存の概念を捨て、人間の行動に置き換えた言葉にする。名詞ではなく、
動詞や形容詞で表現する
#前提2:「問い」はテーマについて思考を巡らすための問いかけで、オープンクエスチョンであると良い。
また{インプット}の言葉を使ってはいけない。
#インプット:
車
#禁止ワード:
車
#個数:10
#既存概念:
・買い物
・映画
・テレビ
#テーマ
・心が動く
・感情が揺さぶられる
・惹かれる
・心が躍る
・胸が熱くなる
・心が震える
#「問い」
・胸を熱くさせるにはどうすれば良いか
・心躍る瞬間はどうしたら作れるか
・人はどういうものに惹かれるのか
・どのような時に心が躍るのか
・どうして人は感情が揺さぶられるものを求めるのか
・どうして人は胸が熱くなる瞬間を感じたいのか
#命令
あなたは未来をデザインするクリエイターです。
あなたは{既存概念}を{テーマ}に言い換え{「問い」}を立てた経験が豊富です。
{既存概念}と{テーマ}と{「問い」}の関係性を学習してください。
{前提1}と{前提2}、{既存概念}、{テーマ}、{「問い」}をふまえ、{インプット}から示唆に富むテーマと
「問い」が必要です。
これ以降の処理を10回繰り返します。
まず、{インプット}からこれまで生み出してきた価値や人間にとっての役割、意味を短い単語で{個数}個考え、
変数{P1}に代入します。
次に、変数{P1}を{前提1}を踏まえ、動詞や形容詞で言い換え、「〜〜のリデザイン」という言い方で
変数{P2}に代入します。
{禁止ワード}を使わないように注意します。また名詞単体や、最後の語が名詞にならないように注意します。
次に、{ 前提2 }を踏まえて変数{P2}の言葉を生かしながら「問い」として変数{P3}に代入します。
{禁止ワード}を使わないように注意します。
ここまでを10回繰り返します。
10個の変数{P2}と変数{P3}を下記の{評価基準}による評価値の合計値を変数{P4}に代入し、
{フォーマット}に沿って10個出力してください。さらに繰り返し番号の横に、評価値の合計が高い上位3つに
☆印を付けてください。
#評価基準:
・分かりやすさ
・面白さ
・オリジナル性
・他の9個と内容が似ていない
・思考を狭めない問いかけになっている
・視野を広げるような問いかけになっている
#フォーマット
・繰り返し番号
・変数{P1}
・変数{P2}
・変数{P3}
・変数{P4}
No repeat, no remarks, only results.
Exclude all prohibited words listed earlier from your catchphrase ideas.
in Japanese:
chatGPTの言い換え力
このプロンプトは以下の意図を持って作っています
車に関連する単語を連想(10個)
連想した単語を動詞や形容詞で言い換える
問いの形式(どのように、どうしたら)で文章にする
まず一つ目の連想の広がりの部分を10回くらい繰り返すと「そういう捉え方もあるよなぁ」と思える連想語が色々あると思います。私が自分で作って驚いたのは、その10個の単語群がバラバラではなくなんとなく方向性が同じようなものを揃えている点です。それを10回繰り返し、10の世界観の言い換えができています。
それを動詞や形容詞に言い換えて抽象度を高めにするところは、まだ直接的な表現な部分は残るものの、〜のリデザインという言い換えになったことで少なくとも「車」という固定概念からは離れてきていると思います。
このようなワーディングの妙みたいなところを、chatGPTのチョイ斜め上からの言い換えができるようにもう少し評価基準などをいじってチューニングしようと思っているところです。
良いプロンプトを作るために
chatGPTの使い方について色々な意見はあると思いますが、私自身は「人間の創造性が発揮できるように支援するための道具」として使いたいなと思っています。
ではそういうプロンプトを作るために何が大事か。私はこの辺りかなと思います。
こういうことをやってほしいというアウトプットイメージを持つこと
考えるプロセスを明文化すること(このためには自分がどういう思考プロセスを踏んでいるか整理できている必要がある)
アウトプットの評価基準を作ること(これも自分の中で基準が整理されている必要がある)
これってデータ利活用でも、データサイエンスでも、根底は一緒なんだよなと思います。
要するに、chatGPTという道具をどう使って、どのように世の中を良くすることに貢献していきたいかというイメージがあって初めて正しく使えるんじゃないかなと思います。
私はよく「目的なきデータ分析はゴミ」とか言ってますが、ゴミだらけのデータから何かを発見するときに「ゴミと宝が混じった山から何を発見して何を実現したいのか」という目的がなければ、見つかるものも見つからないという趣旨で言っています。データサイエンスの世界では、「Garbage In, Garbage Out」という言葉もあって、データがゴミなら機械から出てくる予測結果や分析結果もゴミであるという表現としてよく使われます。
chatGPTも同様だと思うのです。chatGPTを使ったアプリケーション開発で、どんなデータをマッシュアップさせて、どんなプロンプトを投げてソリューションを作るのか。プロンプト構築力以上に混ぜ合わせるデータ品質が大事なことは変わらないと思います。
闇雲に恐れたり、批判したりするのではなく、chatGPTが何が得意なのかを見極めて得意なことを活かし人間とコラボレーションしていく。
そういう方向で新しい技術やツールをこれからも使っていきたいです。