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SNSデータを使った新商品開発の為のマーケティング・リサーチ

こんにちは。
株式会社オン・ザ・プラネットのマーケティング担当です。

今回の記事では、主に商品開発に携わる担当者様に向けて、新商品開発をする為のSNSデータ活用法についてご紹介させていただきます!

新商品の開発はとても大変!

日頃コンビニやスーパーへ行くと、商品が入れ替わるスピードの目まぐるしさにしばしば驚かされます。
「昨日棚に並んでいた商品が、今日買いに行ったら店頭に置いてない!」
という場面は何度も経験があります。

刻一刻と変化していく消費者心理を見事に捕まえて、そこからアイディアを絞って商品を企画・開発・販売している企業の皆様には、本当に頭が下がります。

しかしそういった企業の皆様は、果たしてどのくらい正確に消費者心理を把握できているでしょうか?


商品開発の為の事前調査をするなら「ソーシャルリスニング分析」を活用すべき

SNSが普及している現代において、商品開発をするにあたりSNSデータを分析することは最早必要不可欠であると言えるでしょう。

「即時性のある、大量のデータを活用したリアルな分析」が可能なSNSのデータ分析(ソーシャルリスニング)ですが、まだ日本ではその扱いが浸透しきっていない為、実はその圧倒的なポテンシャルを十分に活用出来ていない企業がほとんどです。

しかし、あらゆる企画の出発点である「調査」のフェーズは、その後の方向性を決める最も重要な工程である為、調査の精度がそのままプロジェクトの命運を握っていると言えるでしょう。


ソーシャルリスニング分析で出来ること

ソーシャルリスニング分析がどのように役立つか、本記事の内容と照らし合わせてまずは簡単に2点ほどご紹介します。

①「商品」と「商品の使用シーン」を分析できる
まず、商品を企画する上で既存の商品が「どのような場面、どのような状況で」多く活用されているかを知ることが非常に重要です。
そして、競合の商品と比べて「どこに強みがあるのか」「どこがウイークポイントなのか」も重要なポイントとなります。

既存の商品の得意な状況が、競合商品も同様に得意なら、そこで差別化はできません。
後述しますが、ソーシャルリスニングにはシーン毎、商品ごとの得手不得手を網羅的に調査できる強みがあります。

②「商品の使用シーン」と「その時の感情」を分析できる
次に、そのシーンにおける消費者の「感情」を調査できるのも大きな魅力の一つです。
既存の商品を買った人が、「どのようなシーンで、どのような感情になっているか」は従来のアンケート調査などでは中々知ることのできない情報です。

消費者の感情とは、最も訴求力の高いポイントである為、それらをSNSという大量のデータから分析することで、より良い企画の創出に繋がります。


今回は、
「ソーシャルリスニングを使って商品開発の為に必要なインサイトを知りたいけど、満足な分析が出来ていない」
といったお悩みをお持ちの担当者様に向けて、その活用方法の1例をご紹介させていただきます。

<<こんな人にオススメ!>>
・新商品開発の為のアイディアが欲しい
・SNSデータを使って、どの様な分析ができるのかを知りたい
・SNSデータを分析して顧客心理を捕まえたいが、上手く行かない


ソーシャルリスニング分析をするにあたって

SNSデータを分析する上で最も気をつけるべきは「定量データの取り扱い方」です。
データを抽出する上で「キーワードの選定」が必須となるソーシャルリスニング分析では、そのキーワードの切り取り方次第で大きく数字が変動してしまいます。

例えば、「商品A/美味しい」 で抽出した投稿の量が「商品B/美味しい」で抽出した投稿量の2倍の数あった場合、一見すると「商品Aは商品Bよりも人気がある」と結論付けてしまいそうです。

しかし、残念ながらそうとは言い切れません。
「商品A」に関する投稿量と「商品B」に関する投稿量は、そもそも分母が違う為、単純比較をしてしまうのは誤りです。

もし「商品Aが美味しい」という発言が「商品Bが美味しい」という発言の2倍の量あったとしても、「商品Aが美味しくない」という発言が「商品Bが美味しくない」という発言の3倍あったらどうでしょうか?

その場合、「商品Aの方が商品Bよりも人気がある」とは到底言えないでしょう。

通常アンケート調査などを実施する場合には、比較する項目の分母を揃えるなどといった事は誰もが当たり前に行う事なのですが、
SNSデータとなると様々な要素を持った情報の集合体である為「1か0かの回答」が揃っている訳ではなく、そのデータの特殊性から分析における慎重さを欠いてしまいがちです。
キーワードの切り取り方によって分母の数も簡単に揺らいでしまう為、そこに留意しておかないと、アンフェアな分析となってしまいます。


これらの問題を解決できる一番簡単な方法は、「数量の問題」から「割合の問題」に変換をすることです。

例えば、「商品Aが美味しい」という投稿量が、「商品Aが美味しくない」という投稿量とほぼ同数あり、
(ex.商品Aが美味しい:商品Aが美味しくない = 50:50)
「商品Bが美味しい」という投稿量が「商品Bが美味しくない」という投稿量の3倍あったとしたら、
(ex.商品Bが美味しい:商品Bが美味しくない = 75:25)
「商品Bの方が商品Aよりも美味しいと感じている人の割合が多い」
と言うことができます。
(ノイズの除去やキーワードの選定は依然として必要ではありますが)

この様に、ソーシャルリスニング分析においては

・どの数字に意味があり、どの数字に意味がないか
・数字に意味を持たせる為に、どの様な比較をすれば良いか

をはっきりさせることが最も重要です。

分析の概要を決定する

では、以上の注意点を踏まえて、実際に分析を行います。
今回はお菓子メーカーの企画・開発を想定して、キャンディーなどの「飴(アメ)」に関する商品分析を行いたいと思います。
特定の商品名で分析をすることも可能ですが、今回は商品ジャンルに分けた市場調査という名目で進めていきます。

分析対象が決まったら、続いて比較対象を検討します。
ソーシャルリスニングは、何かの数字と比較をすることで数字に意味を持たせることができる分析である為、この比較対象の選定も非常に重要です。

今回は「飴」の商品と競合になりそうな食べ物として、「ガム」と「タブレット」の2つを比較対象に選び、それらについて分析を行ったものを例として示したいと思います。

別ジャンルの食べ物ではあるものの、比較的似た系統に属している上記3つについて、それぞれどの様な特徴があるでしょうか?

下記条件において分析を実施してみます。

分析カテゴリ:飴、ガム、タブレット
分析期間:2019年4月~2021年4月(2年間)
分析内容:分析①/どの様な場面で食べられているのか(シーンの分析1)
     分析②/どの様な気分の時に食べられているのか(シーンの分析2)
                   分析③/クロス分析を使ってシーンと感情の関係を分析


分析①:どの様な場面で食べられているのか(シーンの分析1)

商品がどの様な場面で食べられているのかを知ることは、インサイトを見つける上で重要なヒントになります。
様々なシーンの切り取り方が出来ますが、まずは日々の生活の流れを意識して、"日常の場面"をベースに考えてみます。

日常の場面(シーンその1)
・仕事前、勉強前
・仕事中、勉強中
・仕事後、勉強後
・休憩中
・休日
・移動中
・家でくつろいでいる時
・お出かけ中
・パーティーや飲み会

これらの状況において、分析対象である3つの商品をそれぞれ当てはめてみます。
結果は以下の通りです。

スクリーンショット 2021-04-30 2.58.02

飴 n=40645

スクリーンショット 2021-04-30 2.58.52

ガム n=44992

スクリーンショット 2021-04-30 2.59.06

タブレット n=16212

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早速、これらのグラフからそれぞれの特徴を見つけていきましょう。


場面の特徴

ガムやタブレットと比較して、飴を食べる時(舐める時)はどのような特徴があるか確認してみます。
ここでのポイントは、飴を舐めるシーンの中だけで比較するのではなく(移動中よりも仕事中の割合が少ない、などの比較ではなく)、「ガムを噛むシーン」「タブレットを食べるシーン」と比べて「飴を舐めるシーン」どういう状況が比較的多いかについて確認します。

グラフの数字を比較してみると、休日や家でくつろいでいる時お出かけ中など「オン/オフ」でいうところの「オフ」の場面においてよく食べられている傾向にあることがわかります。

<家でくつろいでいる時>
・飴 = 23%
・ガム = 19%
・タブレット = 16%
<お出かけ中>
・飴 = 20%
・ガム = 15%
・タブレット = 14%


一方で、仕事中や勉強中、移動中など「オン」の場面では他の2つと比べると食べられにくい傾向にあります。

ちなみに、ガムは移動中タブレットは仕事中・勉強中やその休憩中によく食べられる傾向にあることがわかります。

<仕事中・勉強中>
・飴 = 11%
・ガム = 18%
・タブレット = 23%
<移動中>
・飴 = 14%
・ガム = 22%
・タブレット = 18%


分析②:どの様な気分や状況で食べられているのか(シーンの分析2)

続いて、どういう状況で食べられているかという分析を、別の角度から見ていきます。
先ほどは仕事中や休憩中などの"日常の場面"における特徴を確認しましたが、次は"気分や状況"におけるシーンを軸にして調査をします。

日常の気分や状況(シーンその2)
・お腹が空いた時
・おやつの時間になった時
・食後
・休憩したい時
・口寂しい時
・リフレッシュしたい時
・眠気を覚ましたい時
・集中したい時

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飴 n=10199

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ガム n=36862

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タブレット n=13968

スクリーンショット 2021-04-30 3.51.25

先ほどと同様に、これらのグラフからシーンの特徴を探っていきます。

気分や状況の特徴

飴の特徴として、ガムやタブレットと比較するとまずお腹が空いた時に食べられる傾向が強いことがわかります。
そして、食後(口直しなどの目的)に食べられることも比較的多いことが見て取れます。
反対に眠気を覚ましたい時にはあまり活躍していないようです。

<お腹が空いた時>
・飴 = 21%
・ガム = 13%
・タブレット = 11%
<食後>
・飴 = 14%
・ガム = 11%
・タブレット = 12%

因みに、ガムは集中したい時や口寂しい時タブレットは眠気を覚ましたい時に食べられることが多いという結果が出ていますが、この辺は確かに直感とも合致します。

<集中したい時>
・飴 = 15%
・ガム = 18%
・タブレット = 8%
<眠気を覚ましたい時>
・飴 = 28%
・ガム = 37%
・タブレット = 57%
<口寂しい時>
・飴 = 5%
・ガム = 8%
・タブレット = 3%


商品戦略に繋げるには①

これらの分析から得た結論を、どのように活用していくべきでしょうか?
使い方は様々ですが、

・強みを徹底的に伸ばす戦略
・競合製品の強みを潰す戦略

上記2点の方向性からそれぞれ考えていくのが良いと思います。
「飴」の新商品開発において、強みを伸ばす戦略をとるのであれば、

・プライベート空間に寄り添った、仕事終わりの疲れを癒す様な商品
・少し小腹が空いた際に、ちょうど良いお供になるような商品

などが考えられます。

また、競合製品の強みを潰す戦略をとるのであれば、

・仕事中や勉強中に、集中力がアップするような商品
・眠気がスカッと覚める商品

などをコンセプトに、今まで飴商品では獲得できなかったシェアをとりにいくことも戦略の一つです。


分析③:クロス分析を使ってシーンと感情の関係を分析

次に、「飴」単体における分析を行なってみます。
先ほど挙げた"日常の場面"において飴を舐める際、どのような感情が沸き起こっているのかを分析します。
感情とは、消費者の持つ最も強いインサイトである為、これらを上手く企画に組み込んだ商品は、数多くヒット作となっています。

またここでは、先ほど示した"日常の場面(シーンその1)"を使っていますが、分析をする上で十分な分母が確保できなかったものは除いています。

日常の場面(シーンその1)
・仕事中、勉強中
・休日
・移動中
・家でくつろいでいる時
・お出かけ中
感情
・喜び(嬉しい、幸せ...etc)
・安心(癒される、落ち着く...etc)
・怒り(イライラ、ムカつく...etc)
・恐怖、不安、驚き(心配、焦り...etc)
・悲しみ(辛い、憂鬱...etc)

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仕事中・勉強中 n=681                          /  休日 n=1306

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移動中 n=964                                         /   家でくつろいでいる時 n=1285

スクリーンショット 2021-04-30 5.50.09

お出かけ中 n=1382

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*全て飴についての投稿

グラフからは様々なことが読み取れますが、主な項目をまとめると以下のようになります。

・お出かけ中や家でくつろいでいる時は「喜び」の感情が他より強い為、楽しい時や嬉しい時に飴を舐めたり、逆に飴を舐めることによって一層幸福感を得ている場合が多い

<喜びの感情>
・仕事中、勉強中 = 24%
・休日 = 36%
・移動中 = 30%
・家でくつろいでいる時 = 41%
・お出かけ中 = 52%

・仕事中や勉強中の場面では、他の状況と比較して不安や焦りの感情を抱いている状況で飴を舐める傾向にある。

<恐怖、不安、驚きの感情>
・仕事中、勉強中 = 33%
・休日 = 23%
・移動中 = 29%
・家でくつろいでいる時 = 21%
・お出かけ中 = 17%


・お出かけ中は特に、ネガティブ要素の強い感情は抱きづらいことがわかる。

<悲しみの感情>
・仕事中、勉強中 = 27%
・休日 = 24%
・移動中 = 24%
・家でくつろいでいる時 = 22%
・お出かけ中 = 15%


商品戦略に繋げるには②

上記の分析結果から商品戦略に活かすとしたら、

・商品によって幸福感を助長したり、幸せな場面を想起させるような商品や商品デザインの開発
・不安や焦りを抑えるために、安心感を与えたりポジティブな気分になれる様なブランディングを踏まえた開発

などの戦略が考えられます。
他にも感情の種類を増やしたり、シーンの追加をするなどして違う角度から分析してみても面白いと思います。


最後に

本記事を最後まで見ていただき、ありがとうございます。

他にも別商品との比較や時系列分析、販売ルートで切り分けたのクロス調査など、書ききれなかった項目がたくさんありますので、また別のテーマで表現していきたいと考えています。

弊社では、マーケットリサーチツールを活用し、様々なソーシャルリスニング分析業務を行なっています。
ソーシャルリスニング分析に興味がありましたら、お気軽に弊社までお問い合わせください。

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