プロDD・M ~その480

※この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。

 ヨシケー、伝説のヲタク。かつて呪いの島でその剣の腕で活躍した男である。
 そんな彼が今まさに、節制のヲタククモノサーカスを生贄として、技のヲタクとして召喚された。
 シンソツとヒトヅマを真っ二つにしたヨシケーは、その後、空中に向かって剣を振るった。
「野郎…..いったいどこに向かって……」
 大切な武器を失ったポッターは悲しみを目に浮かべながら、ヨシケーの行動に疑問を呈した。
 だが、そのヨシケーの行動は、予想外の大きな形で現れた。
「なっ…..!」
 次の瞬間、黒の拠点の壁も天井も切り開かれ、空が露になった。
「ホホホホ、凄まじい剣の腕でおじゃるな」
「これが…ヨシケー…..!」
 対照的なヒロマルとソウチョウ。
 当のヨシケーは、平然とした顔つきで尋ねた。
「ここはどこだ?俺は何をしている?」
「ホホホ、ヨシケー、これは走馬灯戦争でおじゃる。お前はここにいるマキゲに召喚されたでおじゃるよ」
「召喚?俺が?」
「基本的な情報は召喚に際して走馬灯から送られているはずでおじゃるが…..」
「ふむ…」
「やはり正規の召喚方法でないからでおじゃろうな…」
 ヨシケーは、ヒロマル達と、ソウチョウ達を見比べた後、一言発した。
「あっちが敵か」
 そして、消えた。
「…….!!」
 再び現れたと思ったヨシケーの剣は、ソウチョウの身体を縦に切り下ろしていた。
「ソウチョウ!!」
 ポッターの声が響いたかと思ったその時、既にヨシケーの剣は、ポッターの頭上にあった。
「くっ…!3本目の宝具・モトドル!!」
 現れた剣がポッターを守るべく、ヨシケーの振り下ろされた剣と当たる。
「な..に…」
「笑止。そのような紛い物で我が剣を止めることなど出来ぬ」
 ポッターの剣はこれに3本ともこの世から消滅した。


「マルス起きろ。ガリ達からの連絡だ」
「で、なんだって?」
「集合だ」
 マルス達は一旦、待機班のもとまで戻ることにした。

「よし、それぞれが得た情報を確認しよう」
 ガリの音頭で会議は始まった。
 そこで各々から語られた敵の戦力。それは想像を絶するものだった。
「ライチパーティーにゴールデンチェイン、それに強化人間やスミオ達…それらが従うスギコってのは一体何者なんだ?」
 アネンゴが疑問をぶつけた。
「とにかくこちらが圧倒的に不利な状況と言うのは代わりないでしょう。それでも、行くんですよね?」
 ブルーハワイがマルスの方を見た。その目を見て、マルスはただ短く答えた。
「ああ」
 その表情は決意に満ちていた。
 そんな様子を見ていた囚われのバスタースミオが初めて声を発した。
「それは…女のためか?」
「おい、てめぇの発言は認めてねぇよ!」
 スギエが掴みかかろうとするが、それをガリが止めた。
「いい、スギエ、待て」
「ちっ… 」
 バスタースミオはもう一度聞いた。
「それがお前の、いや、お前達の意思か?」
 その問いに、全員が頷いた。
「……..わかった。ならば、話そう。スギコ様…そして、ツムギについて」
「何!?知っているのか!」
「俺達、スミオは開発の際にあらゆるデータを与えられた。いや、ある男によってわざとインプットされたと言った方が正しいか」
「ある男?」
「それは明かせない…」
「まぁいい、続けろ」
「スギコの目的は走馬灯自体ではない。奴はツムギに作らせている…あれを……あれが完成すれば歴史が変わってしまう……うう……」
「おい、大丈夫か!」
「すまん、では順を追って話そう」


 疫病により世界が荒廃し、幾つもの犯罪組織が乱立し始めた頃、大規模な戦争があった。
 そんな中、カワサキタウンは、中央の戦いからやや離れた場所に位置し、穏やかな時の流れていた。
 その街に、ある日、1人の戦士が帰郷した。彼は、街でも評判の不良だったが、軍へと志願し、その腕っぷしから若くして出世していた。
 そんな彼も戦場で死にかけた。それほど大きな戦いだった。
 生きるのを諦めようとした時、目の前に置き去られていた赤子が見えた。その隣にいた女の子が言った。
「この子、笑ってる」
 赤子は笑っていた。その笑顔に彼は救われた気がした。
 そして、男は、戦場で拾った赤子を連れてカワサキタウンへ戻ってきたのだった。
「お前が育てるって言うんか?や、やめろ、無理じゃて!」
 街の大人達は焦った。だが、男の決意は変わらなかった。
「こんな時代にも負けない立派な人間に育てて見せる」
 赤子は、男を見て笑っていた。
「おい、お前はなんて名前なんだ?」
「あたいはルン…」
「ルンか。この子は?」
 男がルンに、赤子の名前を尋ねたが、ルンは首を横に振った。
「そうか、知らない子か…うーむ、じゃあ、名前をつけてやろう」
「だー!」
「よし、お前の名前は…ツムギだ。いい名前だろ?そうか、嬉しいのかい?」
「きゃっきゃっ」
「ねぇ、この子、嬉しいのかな?笑ってるよ」
 赤子は笑っていた。ルンも笑顔を見せた。
「俺の名はミツミツ。豪腕の一族の末裔だ」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?