プロDD・M ~その547

※この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。

「じょうじ!じょうじ!じょうじ!」
 大量のオルマが一気に溢れだした。
 それはまさに始まりを告げる合図であった。
「くそ!こいつら!きめぇ!」
 各陣営はオルマ達の対処に手こずっていた。
「キリがないよぉ…」
「ナオユ、そっち10匹ぐらい行ったぞ!」
 ムネッチの声も届かず、囲まれたナオユがオルマ達に蹂躙される。
「じょうじ!!!じょじょじょ?」
 しかし、オルマ達は気づけば、自分達で潰し合っていた。ナオユの姿はそこにはなく、その外側に。
ダウター…知能が低い生物ほど騙されやすい。消えるんだよぉ…」

「ごみはごみでも、数がいりゃあってなァ!!」
 フリーダムスミオも大暴れして、オルマ達を潰していった。
 その後ろでジャスティススミオが、籠を守っていた。
「いいぞ、俺、そのまま敵を滅ぼせ」
「……」
「何か言ったか?娘よ」
「…どうして」
「ふん、貴様もいずれわかる。ヲタクとは闘争の生き物なのだ。安心しろ、お前はこの父が守るさ」
 籠の中の化様は、悲しい顔をしていた。

「フヒヒ、こいつら、ちょっと脳内をいじってやったらよォ…面白い動きをするぜ」
 カエルが相手をしていたオルマ達が自身の制御を失い、気持ちの悪い行動をしていた。
「カエル、やめろ、趣味が悪い」
 そのオルマ達をヨシケーが一刀のもとに斬り伏せる。
「ひゅーっ、さすが…やるねぇ。俺には出来ない芸当だ」
「…….しかし、それにしても、数が多い。肝心の敵本隊が見えない」

 とはいえ、各陣営、強者揃いである。
 オルマ達は次々と駆逐されていった。
 だが……

「こいつぁ…少しまずいんじゃあねぇのか」
 ガリがオルマを潰しながら、呟いた。
「ああ…これは想定以上だ」
 マルスの額から汗が流れ落ちる。
 他の面々も戦いながら、疲労が増している様子だった。
 なんと、オルマは倒しても倒しても復活するのだ。
 首を飛ばしても生える、ばらばらにしてもすぐにくっつく…。
「なんて生命力だよ!こいつあぁぁぁ!!」
 セルーの叫び声が響き渡った。

「ニシさんの作戦通り。どこもかしこも混乱してるわ!さすがニシさん!わしらの王!ニシさん!このままわしの能力で押しきりましょう!ニシさん!」
 灰かぶりの陣では、原初のオルマがニシを褒め称えていた。
 しかし、ニシはオルマの称賛には反応もせず、戦況を見つめるのみだった。
 そして、ぽつりと呟いた。
「来る……」
「へ?」

 その女は、周囲に炎を纏っていた。
 それを遠目に見た原初のオルマは笑った。
「ニシさん!来るってあれがですかい!わしの分身達は、無限にわき、ほぼ不死身!たかが女一人に何が出来ますか!」
 そんな原初のオルマの位置を簡単に特定した消し炭の魔女は、その指を向けた。
 そして、冷たく笑うと、指1本を自身にくいくいっと折り曲げて、オルマを挑発した。
「なめた真似をするやないか!わし達よ!まずはその女からやれィ!!」
 原初のオルマの号令に従い、各地で戦っていたオルマ達が消し炭の魔女へと集中していく。
「わしは地下に潜り、分身達を産み出し続けた!この時を見越してなァ!お前がどんな英雄だとしても、数の暴力には勝てんのや!わしが!今宵伝説を作る!オルマやァァァァァ!!!
 空間を黒く埋め尽くすかのごとく放たれたオルマ達。一斉に消し炭の魔女へと飛びかかっていく。
 しかし、消し炭の魔女は眉一つ動かさなかった。
「いやぁ、正直驚いたよ」
「なんや、言い訳か?」
 すっかり勝ち誇った原初のオルマは歯を見せて笑った。
 そんなオルマに対しても、消し炭の魔女はなおも表情を変えず、その目に輝きだけが、オルマを刺すように増した。
ちげぇよ、虫ケラ。この程度で私に勝てると思ってる脳みそに驚いたって言ってんだよ
 次の瞬間、炎が膨張し、そして、収束した。
「は……?」
 原初のオルマは呆気にとられた。あれだけいた分身達が、跡形もなく一瞬で消し飛んだのだ。もはや復活も出来ない。
「愚か者が…調子に乗りおって」
 ナガツキがオルマを叱りつけた。
 当のオルマはビビって後退する。
「ひぃぃぃぃ!化けものぉぉぉ」
 しかし、消し炭の魔女が指を鳴らすと、原初のオルマの身体は炎上した。
「ぎゃああああああああああっぺし!」
「この距離も射程圏内ってわけか」
 ナガツキはオルマの心配をせず警戒を強めた。

「考え事はよくないですね」
 無の力を込めた拳がニシを襲う。
「コイケ…しつこい奴だ」
「灰かぶりの組織は渡しても、灰かぶりの心は渡さない」
「裏切り者の台詞か!」
 2つの拳が衝突した。

「……油断したな、消し炭の魔女」
「…….!!!?」
 その時、消し炭の魔女は地面から足を掴まれた。見ると、そこには数体のオルマがいた。
「全て始末したはず……」
「そう、お前は、原初のオルマの指揮下にあったオルマを全て排除した。だが、奴からのパスが外れた連中までは認識できなかったようだなァ…..うへへへへ」
「カエル……!!」
「さっき脳をいじってやったオルマどもよ!」
「こんな虫ケラで……」
 一瞬の内に燃やされたオルマ達。だが、その隙にカエルは消し炭の魔女へ向けて、悪美烈駆の兵達を放っていた。
 それも次々と燃やしていく消し炭の魔女。
「やれ!イオリ!」
Spider Line!」
 その中に紛れて、イオリが背後から、消し炭の魔女を狙う。
 放たれた糸は、消し炭の魔女に絡み付く。
「私の炎は私自身…..絡み付く糸を燃やしたところで私が燃えるわけじゃないのよ」
 容易く拘束を解いた消し炭の魔女は、そのままイオリに攻撃をかけた。
「ぐっ!!」
 その炎を纏った手は、イオリの心臓を貫く。
「…!」
 その時、消し炭の魔女は驚いた。
(こいつ…自分の心臓部にまで糸を…..!?バカな、死ぬことを見越して…..は!?)
「遅い!気づいたか、消し炭ィ!その男の脳は既にいじってあるッ!てめぇがそいつを殺すことまで計算尽くよォ…..!!生き地獄体験キットサイコパスの檻……!!」
 カエルの生み出した空間が、消し炭の魔女を包み込んでいく。
「封印完了…ちょっとおとなしくしてろよ、消し炭の魔女ォ…せっかくの兄さんとの再会の時なんだからよォ……」

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