プロDD・M ~その557
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。
その女は、当たり前のように立っていた。
そして、その周囲の男達は当たり前のように地面にへばりついていた。
「次は誰?81か、灰かぶりか、それとも、悪美烈駆かしら?先に滅びたい者から来ればいいわ」
その圧倒的な力を前にソバシは、エーケーに耳打ちした。
「エーケーさん…ここは...」
「わかっている…消し炭の魔女が出てきたとなれば、話は別だ」
一方、ニシは考えていた。
(この場はまだこちらが有利…消し炭の魔女も本調子ではない。押し切れる……!)
ニシの合図にナガツキが咆哮する。
「おおおおおおおお!皆でかかれば、奴一人、行けるぞおおおおお!!」
しかし、その呼び掛けに応えるものはなかった。
「出過ぎたわね、ナガツキ」
「むぅ!?お前ら!!」
「次に灰になるのはあなただったようね!」
「くぅ!!このナガツキ、ただでは果てぬ!!お逃げください!ニシ様!!」
ナガツキが標的になっている隙に逃げる81。それを見たナガツキは、自身の主も逃がそうとその身を震わせた。
「ふっ、最後のあがきってわけかい。無駄よ、私はニシだけは逃がさないって決めてる」
「この命、尽きようとも、灰かぶりだけは存続させるッ!!MGCだけは!あの人はその要ッ!やらせるわけにはいかないッ!たとえ消し炭の魔女が相手でもォォォ!!」
「んんん、男が己を擲ってまで何かを守ろうとする意志、実に尊い。いい!いいわ!ぞくぞくしちゃう」
その時、放たれた消し炭の魔女のプレッシャーはコジオとヨシケーの足を止めた。
ツムギは仲間達のもとへと歩いていた。
しかし、傷ついたその身体では遠かった。
(早く伝えないと…..)
ふとツムギは不気味な気配に気づいた。
(何…..この悪寒は……自然と身体の芯から震えてくるような……)
(俺は何をしていたんだ….?ああ、渇く…..その前にこの渇きを何とかしねぇと…..)
男は身体を引きずっていた。今まで自分が何をしていのかも思い出せなかった。
「ノドが渇いてしょうがねぇぜ……」
そして、男はツムギを見つけた。だが、名前も思い出せなかった。
「お….あそこにいる女は…ちょうどいい…..ビッチ系ビッチの…えーと名前はなんだっけな、忘れた、ビッチでいいや…」
ツムギは見た。男が這うようにしていたはずなのに、急速に飛びかかってくるのを。
男はツムギに噛みついた。
「ぐっぎゃ!!」
「う、うめぇええええええ!!血がァァァ」
「なんで…..ここに…..まだ生きていたの……」
「はぁ?何を言ってやがるんだ?あぁ?」
「いえ、あなたからは生命を感じないわ…..」
「んぁぁ!?」
「…….カエル!!」
カエルの顔は身体はボロボロに崩れていた。露出した骨は、もはや生きているとは思えなかった。
「ミエナイモノ」
ナガツキがその見えない武器で、消し炭の魔女に攻撃を仕掛けた。
奥義とも言えるその技だが、消し炭の魔女の前では無力だった。
「無駄よ…私の炎は近づくものを焼き尽くす。見えようが見えまいがそれは関係ない」
「このォ!!俺の命を、力に転換して….FLOWER OF LIFE!!貴様の命、刺し違えてでももらい受けるッ!!」
ナガツキの命はまさに尽きようとしていた。その全てを消し炭の魔女へとぶつける。
「たまらないねぇ…..」
「うおおおおおおお!!」
「もっとッ!もっと来なァ!!」
ナガツキの最期の力は、消し炭の魔女の炎の膜を破り、その身体にヒットした。だが、それでも消し炭の魔女への致命打にはならなかった。
しかし、今、誰かが後押しすれば、話は別だ。
「ナガツキ、今、加勢するッ!DDパワー全開ッ!!」
「コジオッ!!」
コジオも消し炭の魔女へ向けて突っ込もうとした。
「命を賭けた勝負に割り込みなんて無粋ね」
「それがどうしたァ!勝てばよかろうなのだァーーー!!」
その時だった。コジオは横から斬られた。
「がはっっっ!!」
「1つ言い忘れたのだけど、ヨシケーは初めから私の手下よ」
「ばか…な….」
「悪いな、そういうことだ」
斬ったのはヨシケーだった。消し炭の魔女に注意が向けられていたコジオは、その一太刀を無防備なままくらい、その場に倒れた。
「コジオーーーーーー!!おのれ!消し炭の魔女!」
涙をこらえて、殴りかかるナガツキだったが、既に限界であった。
その攻撃はもはや消し炭の魔女に傷ひとつつけることすら叶わなかった。
「もうおしまいみたいね、ナガツキ」
「くっ….そっ…..だが。ニシ様さえ無事なら、灰かぶりは…..」
「ああ、そのニシだけど」
はっとしてナガツキは後ろを振り返った。
すると、そこにはまだニシの姿があった。
「な…ぜ…逃げて……」
困惑するナガツキに、消し炭の魔女は告げた。
「ナガツキ、あなたには残念なおしらせだけど、ニシはとっくに灰かぶりを捨てていたわ」
ナガツキの表情が絶望に曇る。
「う、うわああああああああああああ」
「……」
その叫びにもニシは応えなかった。
「さようなら、ナガツキ」
消し炭の魔女の抜き手がナガツキの心臓を貫いた。
「部下…いや、元部下が失意の内に死んでも、眉ひとつ動かさないのね、冷酷な男。でも、どうして逃げなかったの」
「試してみたくなったんだよ。俺の作り上げた人工女神の力と、最強の魔女の力、どっちが上かを」
「……?そんなの結果はわかりきってるじゃない」
「そうか、俺の作った女神の力をそこまで評価してくれるとはな」
「ふふっ、せいぜい吠えなさい。その方が健気でかわいいわよ」
カエルは食らいついたツムギの肩の肉を噛みちぎった。
「俺はッ!何か飲みたかったんじゃあねぇッ!…喰らいたかったんだ!!..喰らってこの渇きを癒したかったんだッ!ハハハハハハ」
「あぐぅ…..」
ひとまず離れたツムギは肩を押さえながら倒れ込んだ。
「思い出してきたぜ、ツムギよォ!兄さんを誑かしたクソ女がッ!いいか…これからてめぇの脳ミソをすすり喰ってよォォォォー!その開いた頭蓋骨にてめぇの腹の中のクソを代わりに詰め込んでやったとしても、俺の気分は晴れることはねェェェェェ!!」
「カエル…….」
「おおーっと不用意にはもう近づかないぜ」
ぐっとツムギは拳に力を込めた。
カエルは腕を広げて、何かの技名を叫んだ。
「さぁ、付き合ってもらうぜッ!地獄DATE!!」
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?