プロDD・M ~その561
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。
「ニシの身体を……!」
コイケの視界にあったのは、ニシであってニシではなかった。
「アハハハハ!でも、このオリジナル女神も呪術も全てニシのものよォ~!それらを全て強奪して使いこなす……それがこのあたしの力~よ!」
「そういうわけですか」
コイケは1人、納得の表情を浮かべた。
「理解したようねェイ!」
「ふむ、あなたがニシでないならば、どうしてヲタクを失った灰かぶりがいまだこの場にいるのか不思議でならなかった。全ての謎は解けました」
「わかってくれたようねィ」
「ええ、ですので、あなたは用済みです」
「!!?」
「モノクローム・覇」
コイケの一撃が、謎の男に炸裂した。
「んふふ、見た目より血の気が多いのねぃ」
コイケの一撃をくらった男はその拳を顔面で止めながら、笑っていた。
「バカな」
「バカなのはあなたなのよねぃ…あたしは、ニシの肉体に寄生しているだけよぉん、痛覚は共有していないッ」
「うおおおお」
コイケは思わず次の手を振るった。
しかし、その腕は容易く男に掴まれてしまった。
「単純ね。ぎゅって」
「ぐあぁぁぁああ」
コイケの腕がその握力で潰された。
「あたしは、シャク……んふっ。もう片腕もらったわね」
「俺は…..ソバシ。正義のヲタク」
「……ツバサだ」
ツバサは感じていた。ソバシからあふれでる強大な力を。
「ヲタクを連れずに、どうやってこの中へ…?ああ、そうか、神器か」
「ご明察」
ツバサの剣が鋭く振りきられた。
「…..っと」
「!?」
「危ないな」
ツバサの剣は、ソバシの指2本で挟むように止められていた。
「強さとは、愛の重さだ。君の愛はその程度なのか…?」
「なめた真似をしてくれるな」
次の動きに入ろうとした2人は、何かに気付いて咄嗟に行動を変えて、離れた。
「勘がいい、反応もいい」
「誰だ?」
ツバサが問うと、現れた男は爽やかに笑った。
「愛がどうとか聞こえたからさ。俺が本物の愛ってやつをレクチャーしてやろうかと思ったのさ」
それに対し、ツバサもソバシも答えた。
「悪いが足りている、他を当たってくれ」
「…俺も」
しかし、男は悪びれない。
「つれないなー、最近、活躍の場が少なくて、退屈していたところなんだ。悪いけど、付き合ってもらうよ。でなきゃ、あんたらの大事な女、俺がもらっちゃうけど」
その言葉を聞いて、2人の表情が変わった。
「どこかで聞いた声だと思ったが、そうか、倒すべき敵はまだいたらしい」
「NDKを脅かすもの、全て排除する…」
その様子を見た男はにやりと笑った。
「良かったよ、俺も混ぜてくれるみたいで。恋人のヲタク、ライチ、行くよ」
「コー、見ろ。まだ奴らは気づいていない。あれが走馬灯だ」
上空にうっすらと浮かび上がったそれは、倒れたヲタクのエネルギーを吸収して、少しずつ実体を帯び始めていた。
「にゃにゃにゃんと!」
「最終的にあれを掴めばいい。ヲタクはただの鍵に過ぎない。この戦争そのものが茶番だ。その証拠に…..」
ソウチョウは突如背後から飛んできたナイフを振り向きもせず躱した。
「鼠が紛れ込んでいると思ったが、困るんだよなぁ…参加者以外はここら一帯から立ち退いてもらわなきゃな」
「もう来たか、教会お抱えの騎士さんがよ。立ち退くも何も、元々この辺に住んでいた人たちはどうしたんだか」
「……大義の前に、たかが無能者の命など安い」
「それが答えか。どうせ貴様ら教会の人間は死ぬんだ。早いか遅いか。ああ、そうだったか、大義の前に、たかが無能者の命など安いんだったか」
「貴様!ヲタクを失った召喚者ごときがッ!我々、王の騎士団になめた口をッ!」
飛びかかろうとする若き騎士キーリ。だが、それを後ろにいたヤ・ノが止めた。
「やめな!キーリ」
「どうしてです!姐さん!」
「こいつ…….すぐに離れろ!キーリ」
そのただならぬ様子に、キーリも従った。
ソウチョウはそれを見て不敵に笑った。
「惜しかったな。あと一歩踏み込んでいたら、勝負は決していたのに」
「なんだと!」
いきり立つキーリをヤ・ノが抑える。
「キーリ、はったりかもしれないし、本当にやばいやつかもしれいない。だが、我々にはまだ大義がある、命を無駄遣いするな」
「…..了解しました」
去っていくキーリは振り返ってソウチョウを睨み付けていった。
「良かったにゃ?ご主人」
「いいさ、生かしておいても、たいして問題のない相手だ」
ソウチョウはそっと手に持っていた銃をしまった。
ソバシ達の乱戦の中、NDKとエーケーは退避していた。
「巻き込まれて力を使うこともない。ここはソバシに任せよう。それにお前が巻き込まれると、奴も気になって集中できないだろう」
「そうですね」
「よし、使用した力の回復に努めよう…」
休もうとするエーケーに対し、NDKは辺りを確認した。
エーケーは、戦闘員ではない彼女が、そこまで周囲を確認するものか疑問に思ったが、すぐに心にしまった。
「やっと2人きりになれましたね」
「ん?急にどうした?」
「いえ、ヲタクもだいぶん減ってきましたので」
「あ、ああ。君のソバシの活躍には助けられているよ」
「ありがとうございます。だって走馬灯を手にするのは、ソバシと私ですから」
「何?」
エーケーは81の頭首である。走馬灯を手にするのはエーケーのはずであった。NDKの言葉の意図がわからず、エーケーの心に一瞬の間が空いた。
それが命取りであった。
「ササル」
「がはっ…..き…さま……」
突き刺さった短剣は、エーケーの力をみるみる内に吸い上げた。
「ネネネソードの折れたあんたに、真の輪形彷徨の力を使う私の攻撃は防げない」
「NDK….まさか…..」
「そうよ、ヲタクが戦闘員で、召喚者がサポートなんて誰が決めたの?」
「ぬうう!!」
無理矢理剣を引き抜いたエーケーは、NDKを倒すべく構え直した。
(命はあと2つか…….)
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