プロDD・M ~その478
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。
川へと転落したマルス。スミオとブルーハワイは一瞬顔を見合わせた。
そして、すぐさまスミオは川へと飛び込んだ。
「川を制するものは戦いを制する!川の事なら俺に任せろ!」
一方のブルーハワイは、川の前へと立ち塞がり、ライチ達の追撃を拒んだ。
「この命に代えても!追わせはしない」
しかし、ライチは特に興味を示さなかった。
「あの傷では助かるまい」
「……」
「まぁ…もし奴が生きていたら、大失態だがな…ツムギ」
「確実にとどめを刺したわ。見くびらないで」
ツムギは手を押さえながら震えていた。それを見たライチは、それ以上は何も言わなかった。
(ツムギ、まさか本当にマルスの事を…ふっ…詮索するのは無粋か)
そして、ライチとツムギはその場を去っていった。
その場に残るアルシルがすれ違い様に、ライチに向けて挑戦的に言い放った。
「随分、活躍しているそうシルね。ライチオブラウンヅの噂は、どこにいっても聞こえてくるシル」
「噂の先行は好きではない。敵には目標とされ、味方には実力以上を期待される」
それを受け流す余裕のライチ。
そして去り際に、ライチは振り返りもせずに言った。
「ああ、そうだ、お前ら。そのブルーハワイとか言う雑魚。好きにしていいよ」
「松竹梅天のガリ、知っているさ」
「ほぅ…知っていながら、なめた口を叩くか小僧」
「白鶴丸……」
ハヤシがその言葉を口にした途端に、ガリの表情が変わった。
「お前…どうしてその名を」
「かつて戦場で暴れ、戦場に散った天下五拳が1人白鶴丸…他の五拳以上に危険な男だった」
「まさか…」
「そう俺が白鶴丸のハヤシ…いいや、違う、俺は…さて、殺すとしようか、ガリ」
「……?」
その頃、スギコの部屋には、とある男がやって来ていた。
その男は白の幹部ナオユであった。
「資金の提供助かったよ~」
「ふふ…持ちつ持たれつだ。あなた達の研究、役に立ったぞ」
「あれを実戦投入するとは、なかなかだね」
「人間を暗示や薬物で精神操作、記憶操作し、外科的手術でヲタクにも劣らぬ力を引き出す強化手術。あれによって生み出された強化人間はもともと戦闘用に配備されていた」
「それにマッチしたってことね」
「ええ…似ていたの。あなた達の持ってきた技術、回生…別の人格を、植え付ける、最低な技術……受け手に滔々と自分自身の事を騙らせることによって、語り手の人格を受け手に移植させる転生を目指した洗脳…….」
「たまたま白鶴丸の肉声を保存していたのでね…使ってもらえて嬉しいよ~」
「ハヤシという小僧。ちょうど白鶴丸の人格が適合したよ。傑作の完成だ。今のあいつ、そして、強化人間の最高傑作となったナツハナは、ヲタク並みの力を持っている」
「怖いね~、今後も敵対しないことを祈るよ」
「ふふ..まずはお互い、次の目標を達成することね」
「ふっ」
笑うと、ナオユは姿を消した。
アルシルは目の前の光景を見て驚いていた。
「こいつ…雑魚じゃなかったシル…??」
「はぁ…はぁ…あとはお前だけだぜ…アルシル」
大勢いた女達は、全てブルーハワイによって倒されていた。
アルシルはただならぬ気配を感じ、警戒を強めた。
もうライチもツムギもこの場にはいない。
(ナツハナとハヤシは…何をしているシル!)
「う…うう……」
倒れた女達の呻き声が聞こえる。
「どうした?やらないのか」
いつになく強気なブルーハワイに、アルシルはより警戒を強めた。
「汚い戦い方をするな!女達を生かしておいて、盾にするとは!それでも男シル!」
アルシルが本気で戦ってしまうと、その場に倒れている女達の命は消えてしまう。
「聞いたようなことを言う奴だな」
「ブルーハワイ!この女達を、こいつが1人でやったシル……」
躊躇しているアルシルに、ブルーハワイの拳が入る。
「KAWARA!」
「ぐぅ!堅いものでぶん殴られたような痛みシル!」
「…女か。だから甘い」
冷徹に言い放つブルーハワイ。マスクでその表情は読み取れなかったが、アルシルには、それが侮蔑に見えた。
「このォー!!」
足下の女達をきにしながら戦うアルシルは、ブルーハワイに攻撃を予測されていた。
「女だからさ!」
「ぐっ!!」
倒れこむアルシルにブルーハワイは追撃を行わなかった。
「雑魚だと思って気を抜いたお前が、つまらん兵士だと言うことだ」
「なぜ追撃しないシル!」
「弱いものと女を、俺は殺さない」
そう言い残し、その場を去っていくブルーハワイ。
一方のアルシルは、屈辱に身を震わせていた。
「マルス!しっかりしろ!」
川からマルスを救出したスミオは、傷の具合を確認した。
だが、探しても刺し傷は見つからなかった。
(どういうことだ……)
「スミオ……」
「マルス!気がついたか!」
「ああ、助かったよ」
「ツムギはやはり敵になったのか」
「わからない……あの時、ツムギは俺を庇ってくれた。あのまま囲まれていたら、俺はヤバかっただろう」
「…….」
すると、マルスは目を閉じた。
「寝る!考えもしょうがねぇ!」
「おいおい….」
スミオはマルスの心中を推し量った。そして、やれやれといった表情で周囲の警戒に当たった。
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